>   >  フランス人らしくない 自分だからこそできる、日本のクリエイティブシーンと世界をつなぐ。(ロマン・トマ)シリーズ企画「20人に聞く」<4>
フランス人らしくない 自分だからこそできる、日本のクリエイティブシーンと世界をつなぐ。(ロマン・トマ)シリーズ企画「20人に聞く」<4>

フランス人らしくない 自分だからこそできる、日本のクリエイティブシーンと世界をつなぐ。(ロマン・トマ)シリーズ企画「20人に聞く」<4>

出会いから新しいアイデアを得て作品にする

CGW:今年5月にはStudio No Border株式会社を設立されましたね。何か転機があったのでしょうか?

ロマン:サテライトで11年間デザイナーとして面白い仕事をたくさん経験してきましたが、昨年40歳になったことをきっかけにワークスタイルを見直し、もっと新しいことに挑戦していくにはどうすれば良いかを考えました。NETFLIXが有名ですが、海外のコンテンツ製作会社の日本アニメに対する関心が高まっているし、日本のアニメ制作に携わっているフランス人クリエイターとして自分にできることがあるのではないかと思っていたところ、以前から交流のあったフランスのメディアミックス企業ANKAMA(アンカマ)に出資してもらい、独立することにしたのです。

CGW:これからはプロデューサーとして、マネジメントもこなされるわけですね。

ロマン:マネジメントは嫌いじゃないですよ。2年前にFuransujin Connectionというコミュニティを起ち上げました。ここではフランスの2D/アニメクリエイターたちと日本のアニメ業界との橋渡しをする活動をしています。フランス人は比較的意見をはっきりと口にする傾向があるのですが、私は人当たりもソフトで人の話をしっかりと聞くので「フランス人らしくない」とよく言われます(笑)。この性格は日本社会に馴染みやすいし、誰かの面倒をみるのにも向いているんですよ。




CGW:Studio No Borderをどんなスタジオにしていきたいですか?

ロマン:これまでと同じく日本のスタジオと仕事をしつつ、アンカマからの企画にも取り組んでいければと考えています。実は、制作スタジオをかまえるつもりはありません。小規模で企画とデザインに注力する、そしてアニメだけではなくゲームや書籍、キャラクターグッズなど、様々なかたちでオリジナル企画の実現にもチャレンジしていきたいです。

CGW:SNSへの投稿がきっかけとなり、国内外で注目をあつめる息子さんたちとの創作活動「親子デザイン工房」ですが、日本でも画集が発売されましたね。昔から息子さんたちと一緒に絵を描いていたのですか?

ロマン:いいえ(笑)。昨年、ふと長男のラクガキを見て「いつの間にか、面白い絵が描けるようになったな」と感心したのがきっかけです。シンプルなんだけど、インパクトのある絵柄が気に入って、それをモチーフにしっかりとデザインや世界観を構築してみたくなりました。そうして出来上がったものを息子たちも喜んだので、試しにツイートしてみたら世界中から反響がありました。今回の書籍化は、先にフランスで出版していたものの翻訳版として、玄光社が出版してくれました。来年にはアメリカでの出版も決まっています。

Drawing with my kids - 1 YEAR ANNIVERSARY WATERCOLOR [FULL VERSION]

CGW:様々なクリエイターたちとのコラボレーションが進んでいるようですね。

ロマン:『親子デザイン工房』もそうですが、ANKAMAとの出会い、『バスカッシュ!』で河森正治さんと出会ったことなど、いずれも自分だけの力では実現できなかったと思います。最近ようやく気づいたのですが、自分の創作スタイルは、内なるアイデアを引き出すというよりも誰かとの出会いから新しいアイデアを得て作品にするということなんだって。

  • 『親子デザイン工房 ロマン・トマ&竜之介、樹』
    子どもたちのラクガキを、父であるロマンさんが "ガチンコで再デザイン" するという私的な創作活動。世界的にも注目をあつめる「親子デザイン工房」がついに画集になりました!

    A4変型判 112ページ
    定価:本体2,750円+税
    ISBN978-4-7683-1113-4
    出版社:玄光社
    公式サイト

CGW:本当に好きなことをお仕事にされているんだな、と感じます。一方で、日本のコンテンツ制作現場でも「働き方改革」の意識が高まっていますが、そうした機運についてはどのようにお考えですか?

ロマン:日本は海外の動向をあまり見ようとしない傾向にあると以前から感じています。アニメにも様々な制作スタイルがあるので、海外のスタジオを見学する、外国人クリエイターを招いてコラボレーションするといった取り組みがもっと増えると良いですね。そのためにも海外との橋渡し役として、これからの日本アニメ業界を元気にしていければと思っています。

Profileプロフィール

ロマン・トマ/Thomas Romain

ロマン・トマ/Thomas Romain

1977年生まれ、フランス出身。 アニメ案件を中心に、イラストレーター、アートディレクター、演出家として幅広く活動する。2003年に来日、2007年から2018年4月までサテライトに在籍。今年5月にStudio No Border株式会社を創業。

@Thomasintokyo

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