>   >  磁気の影響を受けない高精度なキャプチャを実現!慣性式モーションキャプチャMVNの新バージョンがリリース開始
磁気の影響を受けない高精度なキャプチャを実現!<br/>慣性式モーションキャプチャMVNの新バージョンがリリース開始

磁気の影響を受けない高精度なキャプチャを実現!
慣性式モーションキャプチャMVNの新バージョンがリリース開始

「MVN 2018」で改善された主要な機能

インタビューの翌日から2日間にわたって、ゼロシーセブン社のセミナールームで製品デモイベント「XSENS ROAD TOUR User meeting Japan 2017」が開催された。2日間に分けられたのは、MVN 2018の主要顧客がエンタメ業界と産業界の双方にわたるため。ここでは初日にエンタメ業界向けに開催された「MVN Animate」の内容をレポートする。セミナーではニック氏と共に、シニアプロダクトスペシャリストのステファン・ベウカー氏も加わり、アクターを用いたデモも行われた。

▲ステファン・ベウカー氏(左)。Xsens シニアプロダクトスペシャリスト

まず動画デモでは、MVN 2018の改良が様々なかたちで示された。前バージョンとの違いが顕著だったのが、「前方宙返り」におけるキャプチャの様子だ。MVN 4.4ではアクターの上下高速移動でキャプチャデータが破綻していたが、MVN 2018では正しく収録されていた。

また、地面を10m程度走ってから、元の位置まで戻ってくる動きの収録でも大きな違いが見られた。MVN 4.4ではスタートとゴール位置がずれてしまっていたが、MVN 2018では両地点がきちんとそろっていたのだ。このように水平面のトラッキングでも改良が行われていた。

続いてアクターを用いたリアルタイムデモでは、ステファン氏によってキャリブレーションのやり方から解説された。はじめにセンサー群が装着された専用スーツを着用したアクターが、Nポーズ(直立)で4秒間制止。続いて5秒間前進し、そこで回転して元の位置に戻り、再びNポーズで制止。これだけでキャリブレーションが終了するという。その後、十数秒間ほど周囲を歩き回るだけで、周囲の磁場耐性が完全にとれるとされた。

その後、屈伸や腕立て伏せ、走りながらジャンプ、ステップを刻みながらシャドーボクシングといった動作と共に、キャプチャが行われた。ここでステファン氏はキャプチャされたデータを再生しながら、「屈伸をした際に足が広がったり、腕立て伏せをしたら手が接地面から浮いていたり、ステップ時に足首のひねりなどが破綻したり、多少のフットスライドが発生する」と指摘した。いずれも従来の慣性式モーションキャプチャで弱点とされてきた部分だ。

ここでステファン氏はリプロセスHDエンジンによる後処理を実施。処理済みのデータを再生すると、こうした問題が一気に解消されていた。ステファン氏は「MVN 4.4でもボーンの構造と動きから、将来どのような動きになるか予測して、データの修正が行われていた。MVN 2018ではこのアルゴリズムが進化し、過去の動きも参照しながら、動きや姿勢がどのようになっていくのか、自動処理するようになった」と説明した。これによりジャンプなどの動きもより綺麗に取得できるようになったという。

▲MVN 4.4(旧バージョン)とMVN 2018の比較動画で、工場の製造ラインで働いている作業者の動きをキャプチャしたもの。MVN 4.4では足や腕にねじれや交差が発生しているが、MVN 2018ではクリアなデータがキャプチャできている。磁場の影響によるものだが、磁場体制が強化されたMVN 2018では、リプロセスHDエンジンによる後処理も併用することで、この問題を解消できた

▲同じく両腕を左右に振っても、旧バージョンのMVN 4.4では両腕の動きに合わせて、両足までもが不自然にスライドしてしまっていることがわかる。MVN 2018では両足が地面に固定されたままになっている。これが従来はモーションデザイナーが手作業で修正していたが、MVN 2018ではリプロセスHDエンジンの活用で修正作業を自動化できる

高さレベルの取得と修正についても実演が行われた。アクターが椅子に座っている状態から立ったり、脚立を昇降したりといったデモだ。脚立の昇降では高さ情報を保持しているため、最初の接地面とずれずに降着する様子が示された。もっとも、実際の収録現場では高さ情報まで求められないことも多いという。データ量が肥大化し、リプロセスHDエンジンによる後処理の時間も超過することから、収録時には高さ情報取得のON/OFFが切り替えられるしくみになっていると補足された。

このほかに強調されたのが、モーションキャプチャにおけるアバターとGUIの刷新だ。アバターではMVN 4.4より、より人体や筋肉の動きがわかりやすくなるように修正された。データの出力形式の設定なども、従来はプリファレンスの設定画面で一括して行われていたものが、MVN Animateでは個々の出力ウインドウからその都度、設定できるようになった。さらにスーツに付けられたセンサーの状態がアバター上のアイコンでわかるようになるなど、より直感的に使用できるように改良されている。

また、周辺ツールとの親和性についても補足された。MVN 4.4と同様に、MVN 2018でも主要ゲームエンジンやDCCツール向けにプラグインやツールが用意されている。Unity、Maya、MotionBuilderなどにはプラグイン経由、Unreal Engine 4ではIKinema経由でキャプチャデータの流し込みがリアルタイムで可能だ。パートナー企業にはBlenderやHoudini、Cinema 4Dなどの大手が名を連ねており、必要に応じてデベロッパーがプラグインなどを自社開発することもできる。

▲MVNシリーズは主要ゲームエンジンやDCCツールと高い連携を誇っている。動画はゲーム『Hellblade』における使用事例だ。フェイシャルキャプチャツールDynamixyzと、ゲームエンジンのUnrea Engine 4をMVN 2018と連携させ、顔と人体の動きを同時にキャプチャしつつ、アバターの動きにリアルタイムで反映させている。Unreal Engine 4とMVN 2018はIKinemaを経由してデータ転送が行われている

このように、慣性センサー式モーションキャプチャの問題点を一気に解決してきた印象が強いMVN 2018。場所を選ばずに手軽にモーション収録ができる強みが、より身近なものになりそうだ。特にライブエンターテインメントの分野で、様々な可能性を広げる製品のように感じられた。また映像・ゲーム分野においても、プロダクションレベルのデータが手軽に収録できるソリューションが、さらに洗練された意味合いは大きい。今後も様々なシーンで活用が期待できそうだ。

▲映画『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム役で知られるアンディ・サーキス氏。彼がロンドンに設立した特殊効果スタジオがThe Imaginarium Studiosだ。MVN 2018では開発段階から同社と協業し、シェークスピア劇を題材にした次世代ライブエンターテインメント『テンペスト』を作り上げた。そこでは、Xsensのモーションセンサーを内蔵した専用スーツを着用した俳優の演技をリアルタイムでCGキャラクターに反映させ、スクリーン上に投影させている






TEXT_小野憲史(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充(INTERVIEW)、蟹 由香(EVENT REPORT)

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XSENS × ゼロシーセブン

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左から、池田隆行氏(ゼロシーセブン 取締役 センシングプロダクツ事業部)、ニック・ホラック氏(Xsens アジアパシフィック部門セールスマネージャー)、ステファン・ベウカー氏(Xsens シニアプロダクトスペシャリスト)、霜田直哉氏(ゼロシーセブン センシングプロダクツ事業部)、高柳功氏(ゼロシーセブン センシングプロダクツ営業部)、カイロン ハウエル氏(ゼロシーセブン センシングプロダクツ営業部)

MVN

MVN

MVNはカメラやスタジオを必要とせず、様々な場所での運用が可能な慣性式モーションキャプチャだ。迅速かつ柔軟なモーションキャプチャを実現できる。撮影データはリアルタイムにキャラクターデータへ流し込んで確認できる。シンプルなモーションキャプチャを可能にする、画期的なシステムとして高い世界シェアを誇る。

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