<2>3DCGによるキャラクター描写とは
CGW:人間ドラマということで説得力のある芝居を求められるとのことですがモーションキャプチャ(以下、MC)の利用は検討されていたりするのでしょうか?
野口:確かに東映アニメーションの作品ではダンス映像にはMCも利用してるよね。
加藤:セル調のルックに適した制作をやっていきたいので、今回は手付けで作業しています。特に本作はハイターゲット向けなので日常芝居ではメリハリは強すぎず、されどヌルヌルしないアニメーションを、さらに止まったときの画にもクオリティが求められるので難しいんです。手の動きや姿勢にもキャラクター性が出るので何気ない芝居ほどリアリティを感じる重要なポイントだと思っています。
村田:MCは演者がキャラクター性を決めるので同じ演者でキャプチャできるなら成立するかも知れないけど、その時々で演者が変わるとキャラクターの一貫性が失われ完成度の高い画はつくれないと思います。結果的にモーションをアレンジする方の力量が問われるんです。そもそも"リアルを目指す"と言ってもデザイン化されたキャラクターなので、その世界特有のリアリティが存在するはずですし。
加藤:作画とCGの良さが一度に味わえるハイブリッド作品は、フルCG作品よりも贅沢なことなのかも知れませんね。
CGW:最後に今後の課題や読者に向けてコメントをお願いします。
加藤:複数の制作ラインを構築した際に一定の質を保ちながら制作できるかが近々の課題です。セル調は作画に近づいて来ていますが、プロ目線では粗が気になる箇所もあるので今後も検証を続けていきます。
村田:本作は政治や人類に対する問いかけがメインなのでSFの知識がなくても楽しめる内容になっています。アニメファン以外の方も受け容れやすい作品だと思うので楽しみにしていてください。
野口:あえて他社が避けているジャンルに挑戦しているので何かと苦労することを覚悟しています(笑)。ですが、本作をやりとげたらアニメの表現幅がさらに広がるはず。エンタミクスさんに2016年の大穴作品と紹介していただいたので(※1)、がんばっていきたいと思います。
※1:エンタミクス誌での紹介
月刊「エンタミクス」(KADOKAWA)2016年2月号における総力特集「2016年はコレにハマる! 200本」内で取り上げられた
<Topic 2>2Dのエッセンスを立体造形として再解釈マケットの試作
▲東映アニメーションから支給されたCGモデルを3ds Maxに読み込んだ状態。緑色でハイライトされた箇所がオープンエッジ、3Dプリンティングのためにオープンエッジが0になるように加工修正を行う
▲立体出力に向けた修正作業の例。(左)髪の毛部分のオープンエッジを閉じていく作業の例、(右)厚みの調整等により衣服の表面のディテールが埋まってしまった箇所の調整例
▲3Dプリンティング用にパーツ分割を施した状態。このデータをProJet 3500 HDで出力する
▲立体出力物。各パーツの嵌合チェックを行なった後、サーフェイサーがけ等の表面加工を施していく
▲完成したヤハクィザシュニナのマケット
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『正解するカド』
総監督:村田和也
脚本:野﨑まど
キャラクターデザイン:有坂あこ
プロダクションデザイン:真庭秀明
CGディレクター:加藤康弘
キャラクター・スーパーバイザー:宮本浩史
グラフィックデザイン:鈴木夏希
プロデューサー:野口光一
アニメーション制作:東映アニメーション
製作:東映アニメーション、木下グループ、東映
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