看護師からCGの世界へ。1,800時間でソウルライクな騎士を完成させた髙橋涼太氏が語る、作品の説得力の高め方と適切なPCの選び方とは?
CGWORLDが主催する学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」2024年第1弾のキャラクター部門では、京都芸術大学在学中の髙橋涼太氏が見事1位に輝いた。つくりこまれた騎士のモデルが高く評価された髙橋氏に、作品制作におけるこだわりと制作活動を支える機材選びのポイント、そしてCG制作のエントリーモデルとしての「DAIV FX-I7G7S」の魅力について語ってもらった。
看護師からCGの世界へ
CGWORLD(以下、CGW):「WHO'S NEXT?」キャラクター部門での受賞、おめでとうございます。まずは髙橋さんのこれまでの経歴について教えてください。
髙橋涼太氏(以下、髙橋):現在29歳で、もともとは看護師として約5年間働いていました。CGを始めたきっかけは、VRChatのモデルをつくっている友人から勧められたことです。もともとゲームが好きで、創作にも興味があったのですが、具体的に何かつくってみたことはありませんでした。実際に手を動かしてみると「こんなに楽しいことがあったのか!」と感じて、京都芸術大学の通信教育部デザイン科に入学し、CGについて勉強しはじめました。その後看護師の仕事を退職し、現在はキャラクターモデラーを目指して就職活動をしているところです。
CGW:看護師の経験が、クリエイターとしての創作活動に繋がっているところはありますか?
髙橋:看護師時代、入院している患者さんとゲームの話でコミュニケーションを取れたり、子供の患者さんがアニメのキャラクターに元気づけられているところを見たりしていた経験から、エンターテインメントは困難な状況に置かれた人々に希望や勇気を与える力があるんだと思えました。そのことも、自分がCGを始めたきっかけの一つになったと思います。
受賞作品『教会の外征騎士』の制作におけるこだわり
CGW:「WHO'S NEXT?」2024年第1弾 受賞作品『教会の外征騎士』についてうかがいます。作品のコンセプトや、どんな点にこだわって制作したのか教えてください。
髙橋:『ソウルライク』の影響を受けて制作したオリジナルの騎士です。主人公を待ち構えるように佇んでいる姿をイメージしています。
騎士のデザインは、シンプルでありながらも不気味さと格好良さを兼ね備えたものを目指しました。全体的に暗い色調と無骨なデザインが特徴で、騎士と教会の神秘的かつ畏怖の念を抱かせる存在感を表現しています。
髙橋:こだわった点としては、説得力を持たせるために、甲冑の構造から歴史を学びながら制作しました。また、質の高いリファレンスの収集には苦労しました。美術館に展示されている武具の写真や、男女の筋肉やポーズの参考写真をメインに参照していました。
CGW:制作に使用したツールと、制作期間を教えてください。
髙橋:Maya、ZBrush、Substance 3D Painter、Photoshop、Unreal Engine5を使いました。また、Marketplaceのアセットを背景に利用しています。制作期間としては約1800時間ほどです。
CGW:どのように3DCGやアートを学んでいますか?
髙橋:目的と用途に合わせた講座や書籍、SNS、チャットツールで学んでいます。特に参考になった書籍は『スカルプターのための美術解剖学』、セミナーはScott Eaton氏のワークショップですね。
CGW:看護師としての医学の知識が、制作に役立った経験はありますか?
髙橋:解剖学の知識が重要であるということは共通しているんですが、美しさを追求するための美術解剖学と、医療のために人体の構造を学ぶ医療解剖学では、どうしても重視しているところがちがうんです。ただ人体の構造を知っていたということは、やはり多少は制作に役立っていたと思います。
CG制作を始める学生にとっての、「DAIV FX-I7G7S」の魅力
CGW:髙橋さんが現在制作活動で使っているPCについて教えてください。
髙橋:2021年に約48万円ほどで購入したデスクトップPCで、CPUはAMD Ryzen 9 5950X、GPUはNVIDIA® GeForce RTX™ 3090、メモリは64GB (32GB×2)です。もともとはCG制作のために購入したものではなく、ハイスペックが要求されるゲームを快適に遊ぶために購入したものでした。
CGW:CG制作を行うようになって、改めて今PCに求める要件としてはどのようなことが挙げられますか?
髙橋:最新のソフトウェアをスムーズに動かすためには、高性能なCPUと大量のRAMが必要です。特にモデリングとレンダリングの工程では、GPUの力が直接作品の品質に影響しますから、グラフィックスカードにはこだわりたいですね。また速度だけではなく、安定性も重視しています。
CGW:今回、髙橋さんにはマウスコンピューターの「DAIV FX-I7G7S」を検証していただきました。まずは率直に感想をお聞かせください。
髙橋:パフォーマンスに非常に満足しています。試しにレンダリングを行なったり、テクスチャを編集してみたりしましたが、驚くほど速く処理してくれました。複数のアプリケーションを同時に動かしても全く問題がなかったですね。特にIntel Core i7-14700KFとRTX4070 SUPERの組み合わせが、複雑なシーンのレンダリングを速く処理してくれたのではないかと考えています。
また、パワーのあるPCでありながら、筐体が熱くなることもありませんでした。以前から「マウスコンピューターのPCはコストパフォーマンスが良い」と聞いていましたが、高いパフォーマンスを発揮した上で安定性も維持されていたことから、評判通りだと実感しました。
CGW:筐体のデザインで、気に入った点はありましたか?
髙橋:コンパクトで圧迫感を感じさせないデザインなので、自宅の作業環境にぴったりだと感じました。それに、持ち運びやすい取っ手が付いているところも良いですね。
CGW:今回お使いいただいた「DAIV FX-I7G7S」は、どのような方におすすめでしょうか?
髙橋:学生やCGを始めたての方が初めて購入するエントリーモデルとして最適だと感じました。Intel Core i7-14700KFとNVIDIA RTX4070 SUPERの組み合わせは、3Dモデリング、高解像度のビデオ編集、シミュレーションといった作業を効率的に処理できるので、CG制作を始める方々にとって非常に高い価値があると思います。価格も踏まえて、高い性能と優れたデザインを求めるユーザーにとってとても優れたモデルだと感じました。
髙橋氏が検証した、「DAIV FX-I7G7S」のポイント
DAIV FX-I7G7Sは第14世代インテル® Core™ i7-14700KF プロセッサーとRTX 4070 SUPERを搭載し、CG制作や動画編集など、高いマシンパワーを必要とする用途におすすめのクリエイター向けデスクトップPCだ。メモリは32GB (16GB×2/デュアルチャネル)、ストレージは2TB (NVMe Gen4×4)、Wi-Fi 6E(最大2.4Gbps)対応の無線LANも搭載するなど、機能性の高い構成となっている。
一方、髙橋氏の現行機は2021年に購入されたもので、CPUはAMD Ryzen 9 5950X、GPUはNVIDIA® GeForce RTX™ 3090、メモリは64GB (32GB×2)と、こちらもなかなかの高スペックマシンだ。
DAIV FX-I7G7S
- 価格
369,800円(税込) ※2024年10月時点
- CPU
インテル® Core™ i7-14700KF プロセッサー
- GPU
NVIDIA® GeForce RTX™ 4070 SUPER
- メモリ
32GB (16GB×2/デュアルチャネル)
- ストレージ
2TB (NVMe Gen4×4)
- OS
Windows 11 Home 64ビット
髙橋氏の現行機
- 価格
約480,000円 ※2021年当時
- CPU
AMD Ryzen 9 5950X
- GPU
NVIDIA® GeForce RTX™ 3090
- メモリ
64GB (32GB×2)
- ストレージ
1TB SSD×2、2TB M.2SSD×2、1TB M.2SSD、1.8TB HDD、3.6TB HDD
- OS
Windows 10 Home
Substance 3D Painterでのレンダリング検証
髙橋氏の現行機と「DAIV FX-I7G7S」で、Substance 3D Painterのレンダリングに要する所要時間の比較検証を行なった。
検証には、髙橋氏がこちらもこだわり抜いて制作した馬のモデルが使用された。
4段階の解像度(1280×720、1920×1080、2560×1440、3840×2160)別にレンダリングを行い、GPUとCPUの組み合わせによるレンダリング時間を計測した。結果は以下のグラフの通りである。
1280×720の解像度でのレンダリングでは、DAIVは25秒で完了したのに対し、現行機は33秒を要した。1920×1080の解像度では、DAIVの所要時間は47秒、現行機の所要時間は51秒。2560×1440の解像度では、DAIVと現行機ともに所要時間は64秒。3840×2160の解像度では、DAIVの所要時間が123秒、現行機の所要時間は124秒という結果となった。
Substance 3D Painterでのレンダリング検証において、「DAIV FX-I7G7S」は低解像度~中解像度におけるレンダリングの所要時間を短縮し、高解像度でも髙橋氏の現行機と同等のパフォーマンスを発揮した。「価格差やレンダリング時の安定性もふまえると、やはりDAIVはコストパフォーマンスが高いなと実感しました」(髙橋氏)
TEXT_オムライス駆
EDIT_Mana Okubo(CGWORLD)