最先端のテクノロジーとアートを融合させ、集団的創造をコンセプトに国内外で革新的な活動を続けるチームラボ。麻布台ヒルズの常設ミュージアム『チームラボボーダレス』は盛況で、海外では6月10日中東のジッダに『teamLab Borderless Jeddah」(チームラボボーダレス ジッダ)』がオープン、世界的な注目を集めており、今後も世界各地での新たな展示が予定されている。
そんなチームラボが、このたび更なる飛躍を期して新たな人材を募集している。
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パリ、上海、サンフランシスコ、ジッダ.....世界に広がるチームラボの空間
ーー本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
迫田吉昭氏(以下、迫田):インタラクティブチームの迫田と申します。チームラボに入るまでは、FlashプログラマーやWEBフロントエンドを経て、ゲームプログラマーをしていました。その頃から、プログラミングを絵の具の様に使ってビジュアル表現をつくる方々に憧れていまして、自分も「ゲームエンジンを活用してアートを作りたい!」という思いから、チームラボに転職しました。
伊藤篤史氏(以下、伊藤):映像チームの伊藤です。前職ではCG制作会社でバラエティ番組のオープニング制作などをしていました。2007年ごろに転職を考えていたときに、アートをやっているということで興味をもち、「面白そう!」と直観的に感じ面接を受けて今に至ります。
松田勇磨氏(以下、松田):インタラクティブチームの松田です。趣味でプログラミングを始めて、地元でカラオケ機器のプログラミングをする仕事をしていたのですが、知人に「ガラケーのゲーム開発をやらないか?」と誘われたことをきっかけに上京しました。その後スマホのゲーム開発を経て、Unityやゲームエンジンの知識を学んだのですが、渋谷でチームラボの作品を観ることがあり、そこで感銘を受けて2016年にチームラボに転職しました。
小林太郎氏(以下、小林):映像チームの小林です。前職ではCGプロダクションで流体表現などを扱っていました。私はお三方に比べると最近、2020年の10月にチームラボに入りました。私もお台場の「エプソン チームラボボーダレス」を観て、お客さんが楽しんでいる様子を目の前で見ることができる仕事はいいなと思い転職を決めました。あとは、映画やCMと違いチームラボの作品は、アップデートを長期間繰り返していけるという点も魅力的でした。
ーーチームラボは近年、積極的に海外展示をされていますね。
迫田:はい、これまでにもパリ、上海、サンフランシスコ、ジッダなどで展示をしてきました。現地に行かないとできない仕事もあるので、海外出張は頻繁にありますね。
小林:海外出張では、普段は触れないような文化に触れられるところがいいですね。
迫田:ジッダに行ったときはちょうどラマダン期間中で、一切食物を食べてはいけないものだと思っていたんですが、日没からは食べていいらしく、むしろお祭り騒ぎのように沢山食べました(笑)。
ーー海外のオーディエンスの反応は、日本と比べて違うところはありますか?
迫田:日本人は軽く触れたり、写真を撮ったりという方が多いんですが、海外の鑑賞者は、作品内に座り込んだり、寝っ転がったりと、その空間の中に自分も入って行って楽しむ方が多かった印象です。
「あまり企画書を見たことがない」独自の制作フローに迫る
ーーそれでは次に、皆さんがどのようなツールを使っているのか教えてください。
迫田:インタラクティブチームはUnityをメインで使っています。内製ツールを使う事もあります。
松田:ただUnityをメインにしつつも、最近は少しUnreal Engineも使い始めています。
伊藤:映像チームとしては、3ds Max、Houdini、Unreal Engineなどを使用しています。
ーーひとつの作品が企画されてから展示されるまでのフローについて教えてください。
伊藤:「teamLab Borderless Jeddah(チームラボボーダレス ジッダ)」で展示中の、《Persistence of Life in the Sandfall》の場合だと、最初の段階では私は関わっておらず、猪子(チームラボ代表)と、カタリストたちがコンセプトを決めていきました。この時点で大まかな方針が決まり、その後、エンジニア達と一緒に、方向性を決めるための会議が開かれました。
我々映像チームはエンジニアとは違ってアセットを作ることが多く、この段階でいくつかのアセットを比較して、「どっちがいいだろうか?」という意見を聞かれたりしていました。あとは、作品は空間ありきという点が重要なので、「どちらが空間にマッチするのか?」という話もしていましたね。
ーーコンセプトが決まったあとは、どのような工程に移るのでしょうか?
伊藤:この作品の場合はコンセプトが決まったのち、イメージボードを作って、猪子に共有し、レビュー会を設けました。そこから、エンジニアやカタリストなどとコミュニケーションを取りながら、細部を詰めてプロトタイプを制作していきました。
ーープロトタイプの制作過程で、空間にテスト投影することはありますか?
伊藤:あります。今回の場合は、倉庫を借りて実際の空間にできる限り近い状態を作りテスト投影していました。そこで作品の動きを実際に見ながら決めて行きました。ただ、チームラボボーダレスの会場と完全に同一の空間を倉庫内で準備することはできなかったので、最終のブラッシュアップは現場で行うことになりました。
松田:ちなみに、会社内には検証室のような場所があり、小規模に投影してレビューすることもあります。
ーーやはり通常の映像作品やゲーム等とはフローが大きく違いますね。
迫田:ゲームだと仕様書とか企画書を予め組み立ててから作りはじめるんですが、チームラボはいわゆるプロトタイプ開発のような進め方が多いというイメージです。アイデアがLINEで来たりして、それをちょっと作って見せてみて、意見をもらって修正して、また作ったものを見せて……という感じですね。
伊藤:お客さんに提案するとかじゃない限り、あまり企画書というものを見たことがないですね。
迫田:実際に作って猪子に見せてフィードバックを貰ってという作業を定例化して、イテレーションを繰り返しながら完成させていく場合が多いですね。
松田:最初にイメージボードを作る作品もありますが、そうでない作品のほうが多いかもしれません。そういった場合は、チームメンバーと話し合いながら、方針を決めて行きます。明文化された企画書や仕様書のようなものはなくて、話し合いながらレビューして、修正していくという流れが多いですね。
「決まりきった企画書を用意すると、みんなその発想に縛られて、そこから発展しないから」という話も聞いたことがあります。
ーー他分野の高い専門性を持つ仲間とプロジェクトを進めていく中で得られた学びを教えてください。
伊藤:僕は映像畑の人間なので、3DCGのソフトウェアであったり、コンポジットソフトウェアのことはよくわかるんですが、Unityのようなゲームエンジン分野のことはよくわかっていなかったんです。その分野に詳しい人と一緒に仕事をするようになって、ここはプリレンダーよりもゲームエンジンの方が早くすぐ変えられるなとか、逆にここはちょっとプリレンダーじゃないと難しいな、といった棲み分けの部分がよく見えるようになって、そこのジャッジをしやすくなりました。
迫田:例えばサウンドチームとのやり取り等では、作品のインタラクションやシミュレーションの中で起きている事象に対して、サウンドのLFOやフィルターからグラニュラーシンセシスのスプレッド幅まで、あらゆるシンセサイズのアルゴリズムを変調させる事が出来たりしますので、そういった専門職とのやり取りというのは常に学びがあります。
松田:リアルタイム作品はプログラミングしながら画作りをしていくのですが、レビューを通して、映像チームのメンバーからもアドバイスをもらったりして、その中で画作りの知識が身に付きました。
「終わりのない旅」人、場所、技術とインタラクションを繰り返す作品群
ーーゲームや映画とは異なるインタラクティブな作品制作の特徴を教えてください。
迫田:インタラクティブアートが何より面白いのが、作品が、鑑賞者の存在やふるまいによって、インタラクティブに変化するということです。チームラボの作品で言えば、鑑賞者の動きで変化するだけでなく、作品と作品が関係し影響を受け合い、境界線がなく混ざり合う、ボーダレスにインタラクティブなところが面白いですね。例えばタッチして反応をするといったインタラクティブもあれば、「チームラボボーダレス」というミュージアム自体がインタラクティブなんです。
ーーミュージアム自体の仕組みもインタラクティブとはどういうことでしょうか?
迫田:「チームラボボーダレス」では、作品同士がインタラクティブにコミュニケーションをして移動し、変化していきます。鑑賞者によって作品がインタラクティブに反応して、さらに作品同士でインタラクティブに変化していますのでミュージアム全体として同じ状態になる事がほぼなく、全体として常に絵がインタラクティブに変化し続けています。
伊藤:私は、インタラクティブ作品は五感全てをフルに使った体験ができるところが強みだと思っています。聴覚と視覚は当たり前ですが、『EN TEA HOUSE』という展示では味覚もそれにプラスされていました。『つながる!積み木のまち』のように、教育的なプロジェクトの作品では触覚も重要です。身体全てを使って作品に没入できるのが面白いところですね。
松田:香りがする作品空間もありますしね。
ーー仕事の進め方において、通常の映像案件のクライアントワークとの違いはありますか?
伊藤:やはり、大きな違いは納期ですね。チームラボでの作品制作は、常にブラッシュアップし続けていくので、明確なゴールがない、つまり納期がないに等しいんです。終わりのない旅をしているような(笑)。
ーー制作はPC画面の中でするわけですよね。それが実際の空間に出てきて視覚以外の感覚と組み合わさるというのはどんな感じですか?
松田:まず、画面の中で作っていたものと、実際の空間に投影した時の大きさの感覚がまったく違いますね。やっぱり大きく映すとそれだけテンションが上がります(笑)。それから、現実の空間で大人数が同時に楽しめるというのはやっぱりゲームなどとは違う感覚ですね。
ーーシミュレーションのゆったりとした時間感覚が浮遊感を伴ってすごく好きなんですが、この時間感覚はどのように決めているのでしょうか?
伊藤:昔からそうなんですが、だいぶゆったりとした動きが多いですね。夢の中を再現しているようなイメージです。
迫田:作品の動きは、PC上と実際の大きな空間とでは全然違うように見えるので、PCモニターではなく実際に会場で調整しています。
ーーチームラボの作品は長期的に展示されていくものが多いと思うのですが、一つの作品を長期間にわたって紡いでいく感覚というのはどういったものなのでしょうか?
伊藤:一番最初の作品は、2010年の『秩序がなくともピースは成り立つ』だったと思うんですが、Unityなどリアルタイムで動かせるゲームエンジンが出てきた時に、制作初期とはガラッと手法が変わったんです。技術の更新に伴って、同じ作品でもその作品が持つ可能性は広がります。時代の変化とともに作品の表現が変化していくことは非常に面白いですね。
ーーチームラボで働く上で、どんなところが楽しいですか?
伊藤:やっぱりお客さんとの距離が近くて、その反応を見られるというのはモチベーションが上がりますね。
小林:自分の得意分野があると、手を挙げてすぐにやれるというところが魅力ですね。たとえば「花の作品がやりたいです」とアピールすると、それに参加することができたり。
迫田:チームでどんどん制作を進めていく過程も楽しいですし、実際にオープンした時にお客さんが楽しんでいる姿を見られるのも楽しいですね。
松田:私は大きな空間に自分の作った絵を投影できるということが一番楽しいです。現場に入って、自分がプログラムを入れて投影した絵が出た時には感動しますね。それから、色んなところに出張できるところも気に入っています(笑)。
迫田:「リレーショナルアート」(専門性の高い複数人のメンバーで作り、その制作過程での関係性を重視するアート)という言葉があるそうです。チームラボはまさに、高いレベルの専門的な技能を持ったチームメンバーが集まっていて、そのメンバーが集まることでしか作らないものが作れているということに楽しさや喜びを感じます。
趣味が仕事に活きる、アイデアの源泉は漫画、アニメ、音楽、演劇から
ーーチーム内の交流はどのような感じですか?
迫田:我々インタラクティブチームの雰囲気は、高校の部活といった感じでワイワイガヤガヤしています(笑)。目指しているチーム像としては、誰かが「わかんないな.....」と躓いてるときに、人が集まってきてアイデアを提供し合えるようなチームが良いなと、そんなフラットなチームの雰囲気を目指しています。普段から昼食だけでなく、夜ご飯も一緒に食べに行くぐらい仲が良いですね。賑やかすぎるぐらいです(笑)。
小林:映像チームは既婚者が多いのと、男女比が半々に近いこともあってか、落ち着いた人が多いかもしれないですね。みんな思いやりがあって穏やかな雰囲気のチームだと思います。
ーー趣味や学生時代の経験が現在の仕事にどのように活きているかを教えてください。
迫田:私は音楽が好きです。昔はレアグルーヴや中南米のレコードを集めていたのですが、最近は年齢のせいか、ビートレスなポストクラシカルやジャズを聴いています。自分でも、モジュラーシンセを楽しんでやっています(笑)。最近、ノードベースのソフトウェアが増えているんですが、それの物理的なものの、はしりのようなものなんです。ひょっとしたら、これがアイデアになって、ノードベースのソフトウェアとかHoudiniができたのかなと。
小林:私は宝塚が好きなんですよ。7年くらい前に、友達に誘われて行ったらハマってしまって(笑)。空間演出を担当したアイススケートショーと舞台を融合した『氷艶』というショーがあるのですがこの案件を担当した際に、演出の観点で宝塚を見て感じたこと、気づいたことが自然と制作に反映されていたと思います。
松田:趣味でVJをやっているのですが、最近はVRChatのクラブシーンに興味を持っています。リアルでもやりたいということで、最近はリアルイベントもやったりとか。ちなみにチームラボのメンバーに、そのクラブイベントを主催してる人がいたりするんです。VRChatは、一時期までユーザーが自由に使えるプログラミング言語がシェーダーしかありませんでした。なので古くからVRChatで活発に動いている人たちは、シェーダーをゴリゴリ使って色んなことをしていくうちにシェーダーに詳しくなっているんですよ。で、シェーダーが強い人というのは我々のインタラクティブチームに欲しい人材なんです。インターンで応募してきてくれる方の作例を見ても、VRChatで技術を磨いてきた人がいたりするんですよ。
ーーそれはまさに趣味が仕事にも活かされる好例ですね。最後に今後の目標について教えてください。
伊藤:今後もアブダビ、ハンブルク、京都など、世界各地で展覧会を予定しています。そのために、どの作品も最高の形で完成させたいと思っています。世界に向けて、私たちと一緒に面白い作品を作りたいと思ってくれる方は、まずは気軽にチームラボに応募してほしいです。
ーー今回はありがとうございました!
求人情報
チームラボは通年採用を行っている。今回のミュージアムを体験し、自分もこんな作品を世界に届けたいと思った方は一度チェックしてみてほしい。
特に以下の職種は、現在採用強化中とのこと。
1, 3DCGアニメーター/VFXアーティスト(3dsMax/Maya/Houdini)
2, 3DCGアニメーター(Unreal Engine)
3, 3DCGアニメーター/アセット制作
4,インタラクティブエンジニア(リアルタイムCG/Unity/UnrealEngine)
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TEXT_オムライス駆
PHOTO_大沼洋平
INTERVIEW_池田大樹(CGWORLD)
EDIT_中川裕介(CGWORLD)