GIGABYTE×岡山情報ビジネス学院 オープンキャンパスにてbestat Rieringo(松井りえ)氏によるイベントを開催―イベントレポート
PCメーカーのGIGABYTEは去る9月21日(土)、岡山情報ビジネス学院(岡山県岡山市)の体験型オープンキャンパスにてスペシャルイベント「クリエイタートーク 私がCGクリエイターになるまで」を開催。bestat株式会社のRieringo(松井りえ)氏(以下、Rieringo氏)を招き、CGデザイン学科/ゲーム・VRクリエイター学科の入学希望者と在校生に対して、現場からの声を届けた。
「クリエイタートーク 私がCGクリエイターになるまで」
本イベントのメインセッションは、Rieringo氏による「クリエイタートーク 私がCGクリエイターになるまで」。静岡県出身のRieringo氏は、2021年に3DCG業界に転身。映像制作会社を経て、現在は東京大学発のAIスタートアップ企業・bestat株式会社に在籍している。3Dコンテンツの提案から制作・監修まで幅広く担当する3DCGデザイナー兼ディレクターとして活躍している。
Rieringo(松井りえ)
bestat株式会社
服飾の専門学校を卒業後自身のブランドを立ち上げ、Web・DTP・製品デザイン・EC運営・コンセプトメイクやブランディングまで幅広いクリエイティブに携わる。2021年に3DCG業界に転身。現在は東京大学発のAIスタートアップ企業の3DCGデザイナー兼ディレクターとして、3Dコンテンツの活用提案から制作まで行うなど幅広く活躍中。
セッションの冒頭で、Rieringo氏は来場者に対して「まずは何がきっかけでCGに出会ったかをちょっと聞いてみたいんです」と投げかけた。
すると、ある来場者は「小さい頃から車がすごく好きで、整備士の道か3DCGデザインの道かで悩んでいたんですが、自分は考えること、デザインすることのほうが好きなので、CGのほうを選びました」と話した。Rieringo氏は「今、製造業での3DCGの活用が広がっていて、カーモデラーのポジションはすごく求められているので、ぜひその夢を大事にしていってください」とエールを贈った。
また、ある来場者は「高校生の時に『シン・仮面ライダー』を観て、特殊メイクだと思ってたものが実は3DCGだと知って、こんな技術があるんだ。自分もこういうのやってみたい、勉強したい、と思ったのがきっかけです」と話した。Rieringo氏は「活躍している日本人のVFXアーティストは多いので、そうした先輩方の仕事を参考に学び続けてほしいです」と返答した。
Rieringo氏は幼少の頃から「シルバニアファミリー」や「リカちゃん」の人形のような小さなミニチュアで遊ぶことに楽しみを見いだし、小学生の頃にはアマチュア用3Dインテリアデザインツール「3Dマイホームデザイナー」でミニチュアを自作するように。そして14歳でミシンに出会って以降、ファッションデザインに傾倒するようになった。
14歳で参加したファッション系イベント会場で、あるファッションデザイナーに「どうしたらファッションデザイナーになれるんですか?」と質問したRieringo氏。そのデザイナーから言われた「あなたがつくったら、もうデザイナーですよ」という言葉を胸に、ファッションデザイナーとしての活動を始めた。
専門学校を卒業してからは就職をせず、うさぎを飼い始めたことをきっかけに個人事業主としてペットブランドを起ち上げた。しかし自分がやりたかったデザインだけでなく、ブランド運営のために様々な知識と労力が必要となったことから、約7年でいったん区切りを付け、3DCGに出会う。
「本来の自分のやりたかったことは何なのかを問い直したんです。その時に、自分がやりたいのはコンセプトのある世界のつくり込みだと気付いて。必要なスキルを逆算すると、3DCGだ! と思ったんです」とRieringo氏。
最初に出会ったのは、初心者向けBlenderチャンネルとして定評のある3D Bibi氏のYouTube動画。幼い頃夢中になったシルバニアファミリーなどのミニチュア世界を3D空間に再現できると知り、引き込まれたという。
「1日10時間、12時間。約1ヶ月間、寝る時間以外ずっとBlenderを触って猛勉強していました」とRieringo氏。
個人事業主からスタートしたRieringo氏だが、3DCGとの出会いからわずか1年で映像制作会社に就職し、さらに翌年には現職であるbestatに転職。コアテクノロジーである3D画像をAIで処理する技術を活かし、写真や動画をアップロードするだけで3Dデータを生成・管理・活用できるワンストップ・クラウドサービス「3D.Core」を提供する企業で、3DCGデザイナー兼ディレクターを務めている。
「実務未経験での転職はハードルが高いと言われがちなCG業界ですが、私はありがたいことにすぐに転職することができました。これまでの個人事業主としての経験を評価いただいた側面もあったと思いますが、“3DCGへの熱意”が伝わったことも大きかったと考えています。その熱意というのも、ただ“好きです!”と伝えるのではなくて、魅せ方が重要になると思っています。私の場合はたくさんの作品をつくって統一感のあるポートフォリオを準備し、誰でも気軽にアクセスできるホームページにまとめました。そのおかげで、自分はこの世界で、その会社で何をしたいのか明確に伝えることができ、採用の評価にも繋がったんだと思っています。自己紹介とか、どんないきさつで3DCGにたどり着いたのかとかも書いたり……。自分の想いをすべて載せることで、スキルや過去の業績がより深く伝わるように工夫しました」(Rieringo氏)。
bestatでRieringo氏が関わった大手卸企業の案件では、企画からイメージビジュアル制作、素材準備とリサーチ、モデリング、Unity実装、ワールド公開とYouTube Liveでの配信まで、約半年間を要している。
bestatは法人向け3Dモデルデータ生成&管理プラットフォーム「3D.Core」も運営しており、今回のプロジェクトでのモデル制作でも活用された。
3D.Coreは、スマートフォンなどで撮影した写真や動画データをクラウド処理し、特許取得済みの自社開発AIアルゴリズムで3Dデータを自動生成し、データ管理・共有、2次活用までワンストップで提供するものだ。
3D.Coreは、メタバースやデジタルツインといった大規模なシーン制作において、AIアルゴリズムの自動生成モデルを上手く活用し取り入れることにより、高品質なモデルを大量かつスピーディに納品できるソリューションとしても期待されている。
「アルゴリズム的にまだ処理が苦手な部分に関しては人の手で補正していきます。このモデルは2~3日で作っていますが、1から自動車をモデリングをするのには3名体制で3~4ヶ月ぐらいかかるという話も聞いたことがあるので、3D.Coreを使うことでかなりの工数削減やオペレーションコストの削減も期待できることがわかります」とRieringo氏は話す。
最後にRieringo氏は「私が異業種から転職してきてクリエイターとして働けているのは、自分の情熱をポートフォリオやホームページ、SNSで表現したからこそだと思っています。だから学生の皆さんもぜひ、今の情熱を大切にしそれを胸に秘めるだけでなく、発信し伝えることを意識してぜひ自分の夢を叶えてください!」と話し、セッションを締めくくった。
CG制作を始めるにあたっての、機材選びの重要性
イベント後半のショートセッションでは、NVIDIAの高橋一則氏から制作活動におけるGPU選びの重要性が解説された。「GeFroce RTX 4000シリーズを搭載したPCを使うことで、3DCG制作や動画編集をスムーズに行うことができます。また、GPUの能力は生成AIの処理においても効力を発揮します」(高橋氏)
本イベントのCG制作体験においては、イベントを主催するGIGABYTEのプロゲーミングノートPC「AORUS」や、クリエイター向けノートPC「AERO」が使用された。全てのPCに、GeFroce RTX 4000シリーズが搭載されている。
セッション終了後には、Unreal Engineのデモデータで簡易的な体験授業が行われた。また、AMD Ryzen 5のCPUを搭載したホワイトのマザーボード「B650M AORUS ELITE AX ICE」と小型マザーボード「B650I AORUS ULTRA」が組み込まれたデスクトップPCも展示された。
ハイスペックPCの動作に、生徒たちからは「普段のPCとちがう!」「ぬるぬる動く!」との声が上がった。
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TEXT__kagaya(ハリんち)harinchi.com
PHOTO_中村昭一(レブフォトワークス)