>   >  SOLA DIGITAL ARTSが描くエヴァンゲリオンの世界
SOLA DIGITAL ARTSが描くエヴァンゲリオンの世界

SOLA DIGITAL ARTSが描くエヴァンゲリオンの世界

SETUP 有柔軟で自由なセットアップ

セットアップを担当したのは小森俊輔氏だ。小森氏がプロジェクトに参加した段階ではすでにモデルがほぼ出来上がった状態だったという。本作のAnother EVAのアニメーションはモーションキャプチャを使用するため、セットアップの作業はまずモーションキャプチャに対応したリグの作成から始まっているが、モーションキャプチャ用のセットアップを含め、セットアップに要した期間は約1ヶ月半。形状としては基本的な人型なのでベーシックな骨組みでセットアップされている。装甲のほか、肘のシリンダ構造などがあるため作業前は少々不安だったというが、清水氏が事前に動きの検証を行なっていたため、作業は比較的順調に進められた。また、完成したモデルも非常に軽くできていたので、リグの作業も快適に動かしながら作業することができたと小森氏は話す。

実際にリグを作成していくと、大変だったのは危惧していた肘のシリンダなどではなく、パーツが連なって構成されている背骨のセットアップで、最後まで試行錯誤が続いたという。「Another EVAは獣のように全身をバネのように動かすので、どうしても背骨のところが問題になることが多い。一箇所で曲げてしまうと急に曲がったような形になってしまうので、全体を少しずつ曲げて動きを表現できるように、全体的に柔らかくセットアップしています」と小森氏。

Another EVAのセットアップでは、このような柔らかい関節部分のバインドとメカ的なハードサーフェス部分を上手くバランスをとりながらセットアップしていくことがポイントになったという。「セットアップの作業では、モデルの構造の不具合などでやりとりが頻繁に起こることも多いのですが、今回はモデルが本当に良くできていて、ちょっと骨を入れてウェイト調整すればきちんと動いたので、ほとんど清水氏とやりとりなしで進めることができました」と語る小森氏。自身にとっても、改めてモデラーの重要性が感じられた貴重な案件だったとのことだ。

ジョイントとコントローラ
全身のジョイントとコントローラを表示した状態。セットアップは、このような全身にジョイントを作成して骨を入れていく作業から始まる。見てわかるように、全身のベースとなるジョイントは一般的な人型の構造でセットアップされている。ボディを構成するパーツにはオフセットをなるべく作成し、コントローラでアニメーターが自 由に動かすことができるように配慮されている

ケージの作成
バインドやセットアップに使用したケージやサーフェスを表示した画像。全身の骨の位置決めが終わったら、モデルの形状に対応したケージが作成される。ケージはウェイトを設定する際に、実際のモデルデータのメッシュに直接ウェイトを設定することはできないため、間接的にウェイトを設定していくためのメッシュだ。ケージに使用するメッシュは、形状に合わせてリトポロジーされたローメッシュで作成していく。可動部分の形状に合わせてケージの形状を作成するため、変形箇所に合わせた適切なリトポロジー作業が必要になってくるが、このケージを作成する際にも、Mayaに搭載されたModeling Tool Kitが非常に役に立ったという

複雑なパーツが付いた腕
シリンダが仕込まれた肘のセットアップ例。今回のセットアップの中では、特に難しいわけではなかったが、手間のかかったセットアップだ。肘のシリンダは肘が曲がったときに三角筋の部分が伸びて、上腕二頭筋が縮んでいくという筋肉的な表現がセットアップされている。「手間がかかったギミックでしたが、作業としては順調に進められました。自分が思うようにセットアップしてOKをもらえた部分なので、作業も楽しかったです」(小森氏)

段階的に曲がる背中
背骨の部分のセットアップ例。背骨のセットアップは最後まで苦労した部分だという。「様々なカットに出てくる部分なので、カットによって動きが上手くいったり、いかなかったりして調整が大変だった部分でした。自分が作業している状態では上手くいっても、実際の本番カットの中で絶妙な絵になるポーズで使用すると上手く動かなかったこともありました」と小森氏。一箇所だけで曲げるのではなく、高い位置と低い位置といった複数箇所で曲げることができるようにセットアップされているため、微妙なひねりを加えたポーズを格好良く決めることができるようになっている


ノーマル状態


高い位置でのひねり


低い位置でのひねり

動きに追従する肩アーマー
通常のセットアップで難しいのが肩周りのセットアップだが、今回は肩にアーマーパーツが被さる構造になっているため、腕を上げたときの破綻などが目立たず、比較的問題なくセットアップできたという。肩のアーマーは腕の状態に応じて追従して動くようになっているが、肩アーマーには円形のパーツやライン形状が多く、動いた時に変形してしまうと目立つため、ウェイト調整は難しい部分だった


ノーマル状態


腕を上げた状態


完全追従した様子

胸パーツの微妙な動き
胸パーツのセットアップ例。胸のパーツは腕を上げたときも腕の動きに追従して動くようになっている。当初のセットアップでは胸のパーツが柔らかに変形するようになっていたが、リテイクとなったため、胸の部分にダミーのサーフェスを作成し、腕を動かしたときにジョイントがこのサーフェス上を動くように設定し、腕を動かしても胸のプレートが腕になどにぶつからないようにセットアップされている。小森氏はロボット系のセットアップを得意としており、このように動きに応じて各パーツが連動して動くようなギミックを考えるのはとてもテンションの上がる作業だったという


ノーマル状態


胸が閉じた状態


胸が開いた状態

靴型の足の動き
足のセットアップ例。足は複数のパーツから構成されるシューズ形状になっており、シリンダの伸縮動作のようなギミックも施されている。「本編であんなに大写しなるとは思わなかったので、結構ざっくりとしたセットアップになっているのですが、幸い格納庫で立っているショットだったので助かりました。クルマを踏みつぶすようなアップショットもあるのですが、パーツの構造に比較的隙間があるので、足を踏み込んだ状態でもパーツの干渉をあまり修正せずにすんでいます」と小森氏。Another EVAのモデルのように筋肉にハードサーフェスのパーツが追従するような構造の場合、わからない程度にパーツを変形させて、全体のしなやかな動きをセットアップしていくのが、上手く見せるコツなのだという



  • 日本アニメ(ーター)見本市

    日本アニメ(ーター)見本市
    第12話『evangelion:Another Impact (Confidential)』
    原作:庵野秀明/監督・脚本・絵コンテ:荒牧伸志/Another
    Evaデザイン:竹内敦志/ 製作プロダクション:SOLA
    DIGITAL ARTS
    animatorexpo.com/evangelionanotherimpact

  • 月刊CGWORLD + digital video vol.213(2016年5月号)
    第1特集「メカCG究極テクニック2016」
    第2特集「デジタル造形アラカルト」ほか

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2016年4月9日
    ASIN:B01BVS06KI

特集