Point02 揺れる草花
一部を3DCG化することで全体をリッチに見せる
このカットでは、柔らかく吹く風に草花がゆったりと揺れる様子が表現されている。手前の草花全体が揺れているため、動いている草花は全て3DCGで制作されているように見えるが、実際に3DCGで制作されているのは紫の矢車草や赤いポピーなど数本のみだ。3DCGで制作した花には、先述のような奥行のある揺れが加えられており、他の草花は美術素材を利用してAEで左右の揺れが入れられている。「草花全てを3DCGでつくって揺らすのではなく、一部をピンポイントで選定して3D的に揺らすことで、画面全部が立体的に動いているように見え、結果として豪華な画となります」と木村氏。特に矢車草やポピーなどの花は奥行きのある揺れを表現しやすいという。その理由としては、茎が細く立体的な揺れに適していることや「花が揺れて花の中心の黒い部分(雄しべや雌しべ)が見え隠れすることで、奥行きのある立体的な揺れを表現しやすいのです」(須貝氏)とのこと。
画面の中の"何"を3DCGにするべきか。そのコツは、「画面の中にある三角の面を意識してピックアップすると良いですね。このカットだと、揺らす矢車草やポピーは三角になるように選定しています」と木村氏。点ではなく面で揺らすことで、揺れにある程度の統一感を出すことができ、奥行きがあることがわかりやすくなる。このように、3DCGにするものを厳選することで、背景美術を活かしたままに、カット内の情報量を多くでき、かつ、作業時間も大幅に削減できるのだ。
美術素材
美術素材の一部。元の素材がまとまりすぎていたため、後のAE作業で扱いやすいようにおおまかに分け、さらに個別に分解していく。レイヤー数は2から32まで増えた
バラバラにした美術素材の一部。画像上段の美術素材からさらに花の素材を3DCG用に分解する。今回は重なる部分がなかったのでまとめて素材分けされた
花の立体化
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モデリング作業画面
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シーン制作の作業画面。3DCGに置き換える花はLightWaveのカメラの角度限定オブジェクトで作成し、縦横&奥行きのあるモーションを付ける。演出上緩やかな揺れという指定があったため、花のバース変化が微妙にわかるくらいの簡素なつくりになっている
奥行きを出す三角形
このカットでは、一部の花を3DCGで立体的に揺らす表現をすることで、全体に奥行き感を与えている。ポイントは、手前で面を感じられる三角形のような並びの花を選ぶことと、前後の動きや細かい揺 れ等の奥行感がある動きを付けること
AEによる揺れ
AEによる作業画面。3DCGで揺らさない花はAEで揺れ(横変化のみ)のモーションを付ける。微妙な揺れはパペットツール(画像中段)やメッシュワープ(画像下段)が使用された