Point03 風そよぐ草原
AEを用いて自然な草を描く
丘陵の草原が揺れるカットはAEを用いて味付けされている。CGチームでも撮影のような作業ができることは、ジェネラリストを擁するサブリメイションの強みでもある。3DCG・撮影という両者の知識があるため、より効率的に意図した表現を描き出すことが可能になっているのだ。
こちらのカットもPhotoshopで描かれた美術素材から動かす草の部分を切り分け、細かくレタッチして増殖させるなどした上で、AEを使って横揺れの動きを付けている。「草のアニメーションは、手前と奥とでいくつかに層を分け、それぞれ異なる動きをさせることで、塊として動かないように気をつけています」と須貝氏。もっとも、草むらごとにまったく別々のアニメーションを付けるのでは効率が悪く、また画面全体のアニメーションとして考えたときにまとまりがなくなりやすい。そこで、かなり長いストロークで揺れる草むらをひとつ作成し、それを背景全体に植え込んで、タイミングをずらして草むらごとに揺らすことで、これらの問題を解決しているとのこと。また、この手法を採ることで、1日ほどという短い作業期間で仕上げることもできたという。
このように、手が加わりながらも1枚の背景として破綻しない理由には、CGスタッフが美術素材を丁寧に取り扱っていることが挙げられる。安易な切り貼りをせず、画全体のまとまりを失わないように配慮されていることがよくわかるカットに仕上がった。
レイアウト
レイアウト。空や雲、草などをどのようにBook分けするか細かく指示がされている。色味も付いているため、イメージも伝わりやすい
美術素材
背景美術の素材の一部。空、雲、遠景から手前の草など、フレア素材も含めて全部で13枚のレイヤーで構成されている
草を増やして揺らす
AEの作業画面。画面中央の草を元の背景に合わせて立体感があるように何層にも重ねて配置していく。揺れも全体が均一の動きにならないように、最初に作成したモーションをずらしながら草むら単位で動かすことで、風にそよぐ自然な草の揺れを表現した レイアウト上に背景を配置したもの。美術素材と見比べても遜色ない仕上がりとなっている