Point04 カメラマップを用いた森の中
1方向の美術素材から大胆なカメラワークをつくる
樹々の間を主人公チセが走り抜けるカットは、当初から3DCGで制作することが決定されていたため、絵コンテ以後、3Dレイアウト、次いでアニマティクスが順に制作されている。作画のガイドとなるキャラクターや犬は、過去作品のモデルを本作用に調整することで、低コストでハイクオリティなアニ マティクスを実現した。「3Dモデルを使用するときは作画の方がモデルに囚われて作業の邪魔にならないように、体格や肉付きなどはあまりつくり込みすぎないように気をつけています」と須貝氏。
このカットは主にカメラマップで美術素材を投影して制作されている。LightWaveは軽く速く動くことが最大のメリットだというが、一方でモデリングとレイアウトが別になっているため、カメラマップは若干苦手とするところだそうだ。そこで3Dモデルを最大限に簡易化し、そこに美術素材を投影することで、カメラマップでの作業負担を大幅に軽減している。例えば、チセと犬の姿のルツが走るこのカットでは、ぐるりと回り込むような動きの大きいカメラワークがある。カメラワークと平行になるように3Dの板ポリゴンを丸め、そこに美術素材を投影しつつ、カメラの動きに合わせて微妙に回転させることで、1方向からの美術素材だけでカメラが回り込んでも見切れることがないように工夫された。
またカメラワークのあるカットということで撮影では難しかったことから、入射光もCGチームが付けている。とはいえ3D上で作成した入射光はあまり綺麗に出なかったため「ライトの位置などの3D上のデータをAEにもっていき、最近3D機能がついたTrapcode ShineとOptical Flaresを連動させてつくりました」(須貝氏)とのこと。
随所にちりばめられた3DCGの工夫によって、美しい背景美術がより豊かな背景映像となっているグランドPV。YouTubeで公開されているので、ぜひチエックしていただきたい。
カメラワークのあるカット制作
【A】
【B】
【C】
【D】
作画によるレイアウト【A】を基に、既存の3Dモデルを使って3Dレイアウト【B】を作成し、さらにブラッシュアップしてアニマティクス【C】を制作する。【D】は完成画の連番。3Dモデルのガイドがあることで、作画で描かれたチセとルツが背景とズレることなく、印象的なカメラワークのあるカットに仕上がった
美術素材の発注
樹の美術素材発注参考画。手前から奥へ、1本1本レイヤーが分けられている。樹の質感や色味は仮のため、美術側で他のカットに合わせてレイヤーを分けた状態で描いていく
奥に見える樹々の美術素材発注参考画。参考用にキャラクターと犬の3Dモデルが置かれている。このサイズの樹は奥や横にランダムに配置することになる美術素材
描かれた美術素材
バラバラにした樹の美術素材の一部。3Dモデルに合わせて描かれている奥の樹の素材は左右にスクロールできるように、横に長く描かれた
カメラマップ
LightWaveの作業画面
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アニマティクス制作の際、3Dモデルを用意してカメラワークを付けたシーン
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アニマティクスがOKとなり、上がってきた美術素材をカメラマップとして投影している様子。1本1本樹のモデルが作成されているのではなく、丸めた板ポリゴンに美術素材を投影していることがわかる。1方向からの美術素材だけで、ぐるりと回り込むようなカメラワークを表現しているのは驚きだ
エフェクト
今回使用されたTrapcode Shine 2では、3D空間におけるコントロールができるようになった。そこで[LWtoAE]でライトの位置をLightWaveからAEに読み込み、それを参照して光の筋を作成した背景をつくる素材
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映画『魔法使いの嫁 星待つひと:前篇』
8月13日(土)より2週間限定イベント上映
原作:ヤマザキコレ(マッグガーデン刊)
監督・シリーズ構成:長沼範裕/美術監督:竹田悠介
CGIディレクター:須貝真也
アニメーション制作:WIT STUDIO
配給:松竹メディア事業部/企画・製作:Production I.G
©ヤマザキコレ/マッグガーデン
magus-bride.jp