<3>中国と韓国のクロスデベロップメント、成功の秘訣とは?
企業主催の会議にもかかわらず、ライバル企業が登壇する......。こうした懐の深さもNDCならではだ。中国大手のNetEase(網易)による講演「韓国のディレクター、中国の開発者:NetEase『Revelation Online』の新規クラス開発」もその1つ。講演者のキム・ドクヨン氏は元ネクソンで『マビノギ英雄伝』を手がけた人物で、「久しぶりにネクソンで講演できて嬉しい」と切り出した。
『Revelation Online』ディレクターのキム・ドクヨン氏
中国名『天諭』で知られる同作はNetEaseのPanguスタジオで開発され、2015年に中国国内でサービスを開始したMMORPGだ。武侠をベースとしたオリエンタルファンタジーで、フィールドを素早く疾走したり、翼を使って空を飛ぶこともできる。ローンチ時のクラスは6種類で、2017年3月からは北米とヨーロッパでもオープンβテストが開始されている(韓国・日本では未サービス)。
講演では7番目のクラス「アサシン(暗殺者)」で、中韓の企業がどのように協業を進めたかについて説明された。追加クラスの開発決定が2015年冬で、開発期間は10ヶ月。この期間内にゲーム内コンテンツとトレイラーを制作する必要があり、通常のやり方では間に合わなかった。そのためトレイラーを韓国のMofac&Alfredに外注し、ゲーム内コンテンツと60%のアセットを共有しつつ、平行作業で進めたという。
サソリをモチーフにデザインされた新クラス「アサシン」のイメージキャラクター。ゲーム内ではフェイスやコスチュームを自分好みにカスタマイズできる
Revelation《天谕》(TianYu) - Assassin lvl 1~45 Gameplay - F2P - CN
トレイラーの制作工程は「コンセプト」、「キャラクターデザイン」、「絵コンテ」、「プリビズ」、「本制作」、「ポストエフェクト」、「レンダリング」という標準的なものだ。しかしゲーム内の仕様(特殊スキル・攻撃方法など)が決まらなければ、絵コンテ以下の作業が進まないのは明らかだ。そこで、まずはキャラクターデザイン先行で制作が進められた。両者のやりとりはSkypeやメールで行われ、必要に応じて対面ミーティングが設けられた。
①キャラクターコンセプト
同プロジェクトは、はじめにプロジェクト管理ツールの選定からスタートした。RedMainやHansoftをはじめ、様々なツールが比較検討され、最終的にDEPULSEが採用された。ブラウザベースで動作し、よりビジュアライズされていて、メニュー画面を自由にカスタマイズできる。中国・韓国の休日も設定でき、モバイルアプリとの連動も可能だ
キャラクターコンセプトの決定。クラスは「アサシン」だが、いわゆる「ニンジャ」ではなく、サソリをモチーフに、より現代的でスマートなイメージが強調されることになった
キャラクターの性格設定。「内向的」で「思慮深い」性格で、周囲から浮いていることを自覚しているという設定がなされた。これには韓国人だが中国のスタジオでディレクションをするという、キム氏自身の作業スタイルにも影響している
②キャラクターデザイン~女性編
最も力が入ったのが女性キャラクターの表情だ。中国側がコンセプトアートとキャラクターデザインを行い、それをもとに韓国側に対して3DCGモデルの発注がなされた。幼児性を強調した表情やツインテールは、モチーフとなったサソリ(サイズは小さいが、尾に危険な毒針をもち、一撃で獲物を仕留める)からの引用で、ゴスロリのファッションもサソリの外骨格のイメージだ。ルックもフォトリアルに寄りすぎないテイストが求められた。
しかし、最初のターンテーブルが完成したところで、うまく意図がつたわってないことがあきらかになった。日本や韓国のアイドル写真を修正用のリファレンスとして送ったが、細かいニュアンスが伝えきれず、思うようにクオリティが上がらなかったという。時間的な問題もあり、途中でフォトリアルなルックに方針を変更。最終的に中国側・韓国側の双方で満足のいく内容になった。
アサシン(女性)のコンセプトアート。ゲーム内で選択可能な衣装もあわせてデザインされている。ゲーム内で用意された、いくつかの基本体型(左端)のうち1つが選択され、それをベースに表情・髪型・衣装などがデザインされている
完成したキャラクターデザイン。「15歳、絶対領域、ツインテール、大きなバックパック」というキャラクター設定がベースになっている。ここまでは中国側のスタジオで設定され、これをもとに韓国側が3DCGにおこしていった
韓国側が作成した最初のターンテーブル。元のキャラクターデザインと微妙に雰囲気が異なり、微妙に可愛くないということもあって、ドクソン氏は頭をかかえることに。「ガイドラインを事前にしっかり提示できなかったことが敗因でした」(ドクソン氏)
修正用にドクソン氏が提示したリファレンスの数々。韓国アイドルのIU(アイユー)や日本の女性アイドルなどが提示された
ターンテーブル版と異なり、フォトリアルにふったテストショット
完成した3DCGモデル。韓国人の少女をイメージする一方で、中国人が苦手とする要素は巧みに排除されている