いわゆる「ゲーム開発の民主化」に伴い、世界各地でゲームが開発されている。ゲーム産業の地域ごとの成熟の目安となるのがゲーム開発者会議で、米サンフランシスコで開催されるGDC(Game Developers Conference)を筆頭に、様々な規模の会議が一年を通して行われている。日本で毎年8月に開催されるCEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)もそのひとつだ。その中でも異彩を放っているのが、韓国で毎年4月に開催されるNDC(Nexon Developers Conference)。業界団体などではなく、PCオンラインゲーム大手のネクソングループが主催する会議で、今年も2017年4月25日から3日間にわたって開催された。ネクソン社員以外も参加が可能で、参加費も無料、それでいて内容も高度という、世界でも珍しいゲーム開発者会議の模様をレポートする。

TEXT & PHOTO_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

<1>韓国で起業し日本に本社を移転、アメリカ人の新代表で世界企業をめざすネクソングループ

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ネクソンコリアのWHAT!STUDIOでディレクターをつとめるイ・ウンソク氏の基調講演。400名強の座席が満席となった

PCオンラインゲーム大国で知られる韓国。2017年の市場予測もPCゲームの7兆7000億ウォン(約7200億円)に対して、モバイルゲームが4兆4000億ウォン(約4,100億円)と倍近い(韓国コンテンツ振興院調べ)。その中でも最古参にして最大手がネクソングループだ。1994年に創業し、1996年にリリースした『風の王国』はMMORPGの草分け的存在として知られている。

2005年には本社を日本に移転し、2011年に東証一部に上場したが、ルーツは韓国だ。ソウル郊外のパンギョエリア(同地区は韓国のICT産業が軒を並べる「パンギョバレー」として知られている)には4棟のビルを構え、グループ全体の社員数は5,525名にのぼる(2016年12月31日時点)。スクウェア・エニックスの連結社員数が3,924名(2016年3月31日時点)なので、規模感がわかるだろう。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ネクソンコリアでパンギョエリアにある4棟のビルの1つ

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

上記ビルには託児所も併設されている

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ネクソングループ(赤枠)が位置するパンギョバレーには韓国ICT企業の本社ビルが軒を連ねる

その一方で、2014年にアメリカ人のオーウェン・マホニー氏が代表取締役社長に就任し、新たな成長のステップを刻み始めた。前日本法人社長の崔 承祐氏は名誉会長に退いている。マホニー氏は元EAで経営企画担当シニア・バイス・プレジデントを務めた後、2010年にネクソングループに移籍。家庭用ゲーム出身という異色の経歴の持ち主だ。

このように同社がベンチャー企業からグローバル企業に成長を続ける過程で、2007年にスタートしたのがNDCだ。初年度の参加者数は1,301名で、年々規模が拡大し、2011年からは社員以外にも開放。2016年は参加者数が20,680名と韓国最大級の会議にまで成長した(うち学生は610名)。2017年は5トラック120セッション以上で開催され、セッションごとに先着順で参加できる()。

参加者数はセッションごとののべ人数で集計

スピーカーも同社社員に加えて米AmazonRiot GamesBlizzard Entertainment、中国NetEase、フィンランドからはSupercell、さらにはインディゲーム開発者と幅広いラインアップだ。日本からもコーエーテクモゲームスクリプトン・フューチャー・メディアが登壇した。市場の成長に伴い、約半数がモバイル関連のセッションだった点も特徴的だった。

2015年からは(新社長就任の翌年だ)クロースドで開催されるNDCP(Nexon Developers Conference for Partners)も開催されている。主に欧米のパートナー企業向けに、同社のサーバエンジニアリングやマネタイズのノウハウを共有することがねらいだ。2017年はNDCに併催する形で10社23名が参加。『アラド戦記』の10年にわたる運営ノウハウや、ライブAPIの知見などが共有された。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

「Nexon Developers Conference for Partners」(NDCP)の模様

NDCP事務局長のチョン・ソクモ氏とファン・ジンファン氏はNDCPの背景に、2013年から始まった欧米の開発会社に対する積極的に投資を挙げた。その過程でコンソールゲームに強い欧米系企業と、PCオンラインゲームで実績のあるネクソンとの間で技術やノウハウに差があることがわかり、開催に至ったという。第2回目は韓国最大級のゲーム展示会「G-STAR」に合わせて開催され、翌年からNDCと併催となった。

もっとも、開催3回目で早くも技術レベルの共有が進みつつあるという。成果のひとつとして挙げられたのが、米Big Huge Gamesが開発し、ネクソングループが配信、全世界2000万ダウンロードを記録したモバイルゲーム『ドミネーションズ-文明創造-』だ。NDCPでも要素技術の解説だけでなく、今後はタイトルに紐付いた事後検証のセッションを増やしていきたいという。

『ドミネーションズ-文明創造-』PV

ただし、NDCの目的は開発者会議だけではない。会場の屋外ステージでは社員有志によるジャズバンドやコーラスなどが披露され、ネクソンコリア社内ロビーではゲームのコンセプトアートやイラストを展示。同社のクリエイティビティが様々なかたちで紹介された。天候にも恵まれ、会場周辺では多くのゲーム開発者が思い思いに楽しむ姿が見られ、ゲーム開発者のお祭りにふさわしい3日間となった。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

屋外特設ステージ「ゲーム音楽ストリート公演」による同社社員のコーラス

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

「NEXON ART EXHIBITON」では同社タイトルのコンセプトアートやイラストを展示

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ゲームのロゴ制作に関する展示

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

Epic Games KoreaによるUnreal Engine 4を用いたVRデモ『Robo Recall』の体験エリアも設けられた

次ページ:
<2>基調講演は「AIの進化がゲーム業界にもたらす影響」

[[SplitPage]]

<2>基調講演は「AIの進化がゲーム業界にもたらす影響」

NDC17は社長のマホニー氏によるオープニングスピーチで開幕した。NDCでは毎年テーマが設定されるが(2016年のテーマは「ダイバーシティ」)、今年はあえてテーマを設定しなかったという。「取り扱うテーマが非常に多岐にわたるため、1つのテーマに集約することが難しかった」(マホニー氏)からだ。そして、その傾向は非常に喜ばしいことだと述べた。

スピーチで強調されたのは挑戦の重要性だ。「『オーバーウォッチ』は確立されたジャンルに革新を起こし、『Pokémon GO』は全く新しいジャンルを形成しました。ゲーム業界にはより多くの挑戦が必要であると考えています」(マホニー氏)。挑戦や革新にはリスクも伴うが、それこそがゲーム業界を前進させ、世界を進歩させる手段だとして、聴講者にエールを送った。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

基調講演をつとめたイ・ウンソク氏

続く基調講演では『マビノギ』『マビノギ英雄伝』、『野生の地:Durango』などを手がけ、ネクソンコリアのWHAT!STUDIOでディレクターをつとめるイ・ウンソク氏が登壇した。イ氏は「第4次産業革命時代におけるゲーム開発」と題して講演し、AIの進化がもたらすゲーム業界への影響と、ゲームクリエイター個人の心がまえについて自説を展開した。

製造業を「インターネット」と「AI」で自動化し、生産効率を改善させる「インダストリー4.0」。もっとも韓国ではこれに「革命」をつけ、「第4次産業革命」として捉える見方が一般的だという(同様の動きは日本でも見られる)。AIの進化が暮らしや社会を根本から揺さぶる可能性があるからだ。特にゲーム業界は「限界費用ゼロ産業」となり、大きな影響を受けるという。

限界費用とは「モノやサービスを追加で生み出すコスト」のことで、これがゼロということは、ゲームがAIによって無料でつくられるようになるということだ。イ氏は「同時に新たな職種が生み出され、雇用はなくならない」という考え方は楽観的すぎると警鐘を鳴らした。イノベーションの速度が非常に速いため、教育レベルが低い層ほど社会の変化に適応することが難しくなるからだ。

「これまでイノベーションがもたらす社会変化は世代単位で吸収されてきました。しかし、今後は1つの世代で何度も社会変化が起き、適応が求められていきます」。もっとも、働き方は人々のアイデンティティにも強く結びついている。AIで仕事を奪われた人々が、AIで生まれた新しい仕事に適応できるか......。なかなか難しいのも事実だろう。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

AIを用いたバランス調整やレベルデザインの自動化はすぐそこまで来ている

イ氏はバランス調整・レベルデザイン・アセット制作などから自動化が進み、開発チームの小規模化は避けられないと分析する。「人間はもっと想像的な仕事をすれば良い」という見方にも悲観的だ。イ氏は「創造性」を「異質な要素の組み合わせで生まれる、新しい価値」だと定義する。価値の測定ができれば、AIによる強化学習が可能になるからだ。

ちなみにイ氏はこうしたAIがAPIを介して無償で提供されるだろう、とした。一方で企業はAIを用いてサービスを開発・運営し、そこで収集されたビッグデータを活用して、差別化と収益化を進めていくと予測する。これはオープンソースの収益モデルと同様であり、すでにゲーム業界もその波を経験済みだ。そのためゲームが無償でつくれる時代になっても、業界がなくなるわけではない。

ただし雇用は劇的に減少することになり、適切な対応を誤れば大手でも倒産は免れない。それでは、この社会変化にどのように対応すれば良いのだろうか。「幸いなことに、世の中の変化にかかわらず、人々はゲームを求めます。AIの普及で人々が労働から解放され、余暇が拡大するほど、ゲームの需要は高まるのです」(イ氏)。その上で企業・個人ともに下記のような指針が求められるとした。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

『Pokémon GO』と『Ingress』はIPの重要性を改めて知らしめた

企業向け対応

  • ・AIを率先してゲーム開発に取り入れる(ユーザーひとりひとりの嗜好にあわせたゲーム開発や、テーブルトークRPGにおけるGMの再現など)
  • ・ゲームの新しい領域に挑戦する
  • ・IPとブランド化を進める

個人向け対応

  • ・データ化できない仕事をする
  • ・生活のためではなく、自己実現のためのゲームづくりにシフトする
  • ・ボランティアとの協業を進める

イ氏が考える「AIがもたらす未来社会」とは、ベーシックインカムが保証された社会だとも言える。人々が労働の鎖から解放されたとき、それがユートピアなのかディストピアなのかは、人々の捉え方次第というわけだ。どうせ避けられない未来なら、それを楽しもうじゃないか......。そのように語るイ氏のメッセージには、ゲーム業界ならではのラジカルな発想が感じられた。

次ページ:
<3>中国と韓国のクロスデベロップメント、成功の秘訣とは?

[[SplitPage]]

<3>中国と韓国のクロスデベロップメント、成功の秘訣とは?

企業主催の会議にもかかわらず、ライバル企業が登壇する......。こうした懐の深さもNDCならではだ。中国大手のNetEase(網易)による講演「韓国のディレクター、中国の開発者:NetEase『Revelation Online』の新規クラス開発」もその1つ。講演者のキム・ドクヨン氏は元ネクソンで『マビノギ英雄伝』を手がけた人物で、「久しぶりにネクソンで講演できて嬉しい」と切り出した。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

『Revelation Online』ディレクターのキム・ドクヨン氏

中国名『天諭』で知られる同作はNetEaseのPanguスタジオで開発され、2015年に中国国内でサービスを開始したMMORPGだ。武侠をベースとしたオリエンタルファンタジーで、フィールドを素早く疾走したり、翼を使って空を飛ぶこともできる。ローンチ時のクラスは6種類で、2017年3月からは北米とヨーロッパでもオープンβテストが開始されている(韓国・日本では未サービス)。

講演では7番目のクラス「アサシン(暗殺者)」で、中韓の企業がどのように協業を進めたかについて説明された。追加クラスの開発決定が2015年冬で、開発期間は10ヶ月。この期間内にゲーム内コンテンツとトレイラーを制作する必要があり、通常のやり方では間に合わなかった。そのためトレイラーを韓国のMofac&Alfredに外注し、ゲーム内コンテンツと60%のアセットを共有しつつ、平行作業で進めたという。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

サソリをモチーフにデザインされた新クラス「アサシン」のイメージキャラクター。ゲーム内ではフェイスやコスチュームを自分好みにカスタマイズできる

Revelation《天谕》(TianYu) - Assassin lvl 1~45 Gameplay - F2P - CN

トレイラーの制作工程は「コンセプト」、「キャラクターデザイン」、「絵コンテ」、「プリビズ」、「本制作」、「ポストエフェクト」、「レンダリング」という標準的なものだ。しかしゲーム内の仕様(特殊スキル・攻撃方法など)が決まらなければ、絵コンテ以下の作業が進まないのは明らかだ。そこで、まずはキャラクターデザイン先行で制作が進められた。両者のやりとりはSkypeやメールで行われ、必要に応じて対面ミーティングが設けられた。

①キャラクターコンセプト

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

同プロジェクトは、はじめにプロジェクト管理ツールの選定からスタートした。RedMainHansoftをはじめ、様々なツールが比較検討され、最終的にDEPULSEが採用された。ブラウザベースで動作し、よりビジュアライズされていて、メニュー画面を自由にカスタマイズできる。中国・韓国の休日も設定でき、モバイルアプリとの連動も可能だ

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

キャラクターコンセプトの決定。クラスは「アサシン」だが、いわゆる「ニンジャ」ではなく、サソリをモチーフに、より現代的でスマートなイメージが強調されることになった

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

キャラクターの性格設定。「内向的」で「思慮深い」性格で、周囲から浮いていることを自覚しているという設定がなされた。これには韓国人だが中国のスタジオでディレクションをするという、キム氏自身の作業スタイルにも影響している

②キャラクターデザイン~女性編

最も力が入ったのが女性キャラクターの表情だ。中国側がコンセプトアートとキャラクターデザインを行い、それをもとに韓国側に対して3DCGモデルの発注がなされた。幼児性を強調した表情やツインテールは、モチーフとなったサソリ(サイズは小さいが、尾に危険な毒針をもち、一撃で獲物を仕留める)からの引用で、ゴスロリのファッションもサソリの外骨格のイメージだ。ルックもフォトリアルに寄りすぎないテイストが求められた。

しかし、最初のターンテーブルが完成したところで、うまく意図がつたわってないことがあきらかになった。日本や韓国のアイドル写真を修正用のリファレンスとして送ったが、細かいニュアンスが伝えきれず、思うようにクオリティが上がらなかったという。時間的な問題もあり、途中でフォトリアルなルックに方針を変更。最終的に中国側・韓国側の双方で満足のいく内容になった。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

アサシン(女性)のコンセプトアート。ゲーム内で選択可能な衣装もあわせてデザインされている。ゲーム内で用意された、いくつかの基本体型(左端)のうち1つが選択され、それをベースに表情・髪型・衣装などがデザインされている

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

完成したキャラクターデザイン。「15歳、絶対領域、ツインテール、大きなバックパック」というキャラクター設定がベースになっている。ここまでは中国側のスタジオで設定され、これをもとに韓国側が3DCGにおこしていった

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

韓国側が作成した最初のターンテーブル。元のキャラクターデザインと微妙に雰囲気が異なり、微妙に可愛くないということもあって、ドクソン氏は頭をかかえることに。「ガイドラインを事前にしっかり提示できなかったことが敗因でした」(ドクソン氏)

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

修正用にドクソン氏が提示したリファレンスの数々。韓国アイドルのIU(アイユー)や日本の女性アイドルなどが提示された

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ターンテーブル版と異なり、フォトリアルにふったテストショット

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

完成した3DCGモデル。韓国人の少女をイメージする一方で、中国人が苦手とする要素は巧みに排除されている

次ページ:
③キャラクターデザイン(男性編)

[[SplitPage]]

③キャラクターデザイン(男性編)

男性のキャラクターデザインでは変形ヘルメットが導入された。「ゲーム内ではキャラクターを後ろからしか見ないのに、わざわざ手間をかけてデザインする必要があるのかという議論もありました。しかし、プレイヤーをグッと鷲掴みにする要素が必要だったんです」(キム氏)。なお、デザインを進めるうえで映画『ロボコップ』や日本のアニメキャラと被らないように注意したという。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ヘルメットのアイディアスケッチ 有機体のイメージが強調された

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

決定したコンセプトアート。顔・マスク・ヘルメット・左右非対称の鎧がポイント

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

完成した頭部の3Dモデル。ヘルメットだけで100パーツに分割されており、それらがアニメーションして頭部を覆い隠すようになっている

④プリビジュアライゼーション

韓国側のキャラクター作成と並行して(トレイラーとインゲームの両方で使えるように、最初からハイクオリティなものが作成された)、中国側ではゲームの具体的な仕様が詰められ、仮モデルで戦闘モーションなどがつくられていった。それにもとづいてトレイラーの絵コンテがつくられ、プリビズが制作された。これにはキム氏自身がアーティスト出身で、動く絵で早期にイメージを固めたいという思いがあった。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

荒野をオートバイで爆走する男性アサシン

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ヘルメットが変形し、頭部を覆い隠したところ

⑤ゲーム内のバトルをモチーフにムービーを作成

トレイラーの大半はアサシンによる激しいバトルシーンで占められている。そのためにはゲーム内の特殊能力をベースに、より詳細なビジュアルで内容を補完するようなアクションが必要だ。そこでゲーム内のバトルに関する仕様が固まると、それにもとづいてプリビズが修正されていった。プリビズが固まると韓国側で実際のムービー制作がスタート。名トルの資料も韓国側に共有され、活用されていった。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

必殺技に関する様々なアイディアスケッチ

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

仮モデルを用いて作られた必殺技のモーション

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

ゲーム内で繰り出される必殺技(左)と、それを元にしたムービー中でのバトルシーン(右)

⑥バイクの変形

『Revelation Online』では、「全ての乗り物が飛行する」という仕様が入っている。アサシンが操るバイクも同様だ。ここでキム氏は「飛行形態に変形させたい」と考えた。「男性(そして自分)の夢をゲーム中で叶えたい」というわけだ。もっとも、他に手空きのアーティストがいなかったため、自分でやらざるを得なくなったという。変形を簡素化させるため、できるだけシンプルなリギングが心がけられている。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

バイクのフォルム(左)が飛行形態(右)に変形する。バイク自体もサソリの外骨格のイメージでデザインされており、飛行形態はカラスをモチーフとしている

バイク形態のフォルム(左)から、翼と角が飛び出し、飛行形態になる(右)

なお、プリビズの段階ではバイクが生き物のようにアクロバティックな動きをしながら敵陣の中に切り込んでいく演出がつけられていた。しかし、実際にムービーの制作を開始してみると、思った以上に時間がかかることに気がついたという。少女のフェイス修正にリソースが割かれたこともあり、このアイディアはとりやめることに。かわりにサソリの尾のような、長くしなやかに曲がる構造物で敵軍を蹴散らすアイディアが採用された。

⑦ポスター

このように中国と韓国のコラボレーションで進んだ「アサシン」クラスの制作。しかし、時には文化の違いが摩擦を生むこともあった。広報用のポスター作成はその好例だったという。トレイラーの1シーンが切り出され、いくつか候補が作成されたが、美の規準が中国と韓国で違ったのだ。最終的に「パッと見たときに女性アサシンが可愛らしく見える」という規準でキム氏が押し切ったのだという。下記はそのうちの1つだ。

韓国最大級のゲーム開発者会議「NDC 17」、日米をはじめ海外クリエイターの講演も実施<br />~「Nexon Developpers Conference 2017」レポート~

女性を抱え起こす男性、斜め上から差し込む白い光、白と黒の甲冑のコントラストといった具合に、ロマンチックなイメージが強調されている

最後にキム氏は「中国と韓国のクロスデベロップメントで、成功の鍵はコミュニケーションだった」と振り返った。重要なことはお互いの文化的な差異をみとめて、そのうえで歩み寄る努力を怠らないことだ。ちなみにキム氏は中国側のチームと個人通訳を介して(中国語=韓国語)コミュニケーションをとり、ディレクションしたという。「過去に学んだやり方を臆せずに貫き通した」(キム氏)と語る、その強靱な精神力に驚かされた。

総括

NDC17は5トラックで行われ、そのうちメイントラックと一部のセッションで日本語・英語・韓国語の同時通訳が行われた。日本語で聴講できたセッション数は計21にのぼり、韓国語や英語がわからなくても、十分に楽しめる内容になっていた。プレスを除けば日本人の参加者は少なかったが、モバイル関連のセッションが約半数にのぼったこともあり、日本からの参加も積極的に検討すべき......。そのように感じられたカンファレンスだった。