>   >  3DCG、フォトバッシュ、から揚げ!? 多彩な手段をミックスして、最短にして最良の結果を得るイラストテクニック
3DCG、フォトバッシュ、から揚げ!? 多彩な手段をミックスして、最短にして最良の結果を得るイラストテクニック

3DCG、フォトバッシュ、から揚げ!? 多彩な手段をミックスして、最短にして最良の結果を得るイラストテクニック

金太郎


©Yoshinobu Saito

(1)モデルの作成

金太郎が酒呑童子と戦う姿をSF風に描いた作品。2体のモデルはZBrushで造形されている。金太郎は筋肉質なベースモデルにスーツを着せる要領で造形。また、背景の酒呑童子は浮世絵の妖怪などの描写を参考にしつつ、鬼瓦の造形からも着想を得た。また、肌についてはアイデア段階で想定した質感を早く得られるという判断からMudboxでテクスチャが描かれている。「Mudboxはステンシルの使いやすさや充実したレイヤー機能があり、Photoshop的な感覚で使えます。今回、ねらった質感は、Mudboxでテクスチャを描いてしまえば終わりかなと算段できたので選択しました」(斉藤氏)

(2)シーンの作成

Softimage上でのレイアウト作業の様子。スカルプトを終えたモデルはZRemesherでポリゴン数を低減してSoftimageにインポート、ポージング用にセットアップしている。「ポージングは思いついたポーズを30フレームおきにキーを打って検討しています。カメラで様々な角度で眺めているうちに、まったく思いがけていなかったカッコいいアングルを見つけることもあり、自分の頭の中や手で描くラフだけでは絶対得られなかったレイアウトにたどり着けるのは、3DCGを活用する利点のひとつです。アングルだけでなくポーズの比較検討も素早く行えるのがいいですね」(斉藤氏)



  • 金太郎がカメラの方を向いている例



  • 構図奥の酒呑童子を睨んでいる例。キャラクターの顔がこちらに見えないのも、完全に酒呑童子に背を向ける状態になるのも違和感があり、首の角度は様々に検討された上で決着している

(3)レンダリング素材



『決戦の刻』の頃とは異なり、『金太郎』ではいくつかの素材をレンダリングし、Photoshop上で重ねている。例えば、金太郎のボディは金・銀・赤の塗りを2パターン出力し、塗り分けはPhotoshopでの仕上げ工程の中で決定。反射やリムライトなどは必要に応じて別にレンダリングしている。下段の画像は酒呑童子の吐き出す呼気を表現するための渦。描いたカーブに沿ってパーティクルを複数種類エミットすることで作成している。これを組み合わせておどろおどろしい雰囲気を描き出した

(4)補助ライトなどをレタッチで描き込む

レタッチ作業の様子。背景は金太郎にちなむ藤の花を県内の著名な藤棚で撮影。さらに、その近くで撮影したという神社の提灯も加えて空間を演出している


レンダリング後の描き込みを開始する前の状態



  • 赤い照明による照り返しを追加



  • そこからさらにアンビエントオクルージョン素材の追加、金太郎のスーツの塗り分けなどの手が加わる。Photoshop上でコンポジットしているといった趣である


【画像2】で用いた照り返し素材

(5)仕上げ

描き込みを加えていく様子

前述の金太郎のスーツ塗り分けのほか、酒呑童子の瞳孔の加筆、腰巻の色味の変更が行われている



  • 酒呑童子の周囲や地面のフォグが追加され、空気感が強調されている。また、金太郎のボディへの傷の加筆や照り返し素材の追加もこの段階だ



  • さらに舞い散る桜吹雪、斧の炎などをはじめとするディテール追加が行われて完成。また、細かいところではあるが酒呑童子の眉根の形状も、より丸みを帯びたものに補正されている

Tips

板ポリゴンを使ったエフェクト~「疾風迅雷」より

『疾風迅雷』は『金太郎』と通底するテーマで描かれているSF童話シリーズの作品で、「桃太郎」を題材にした作品だ。これまで紹介してきた事例同様、3DCGが表現向上に効果的に働いている。「斬撃のエフェクトは、テクスチャを貼った板ポリを曲げて配置したものをレンダリングして使っています。円弧状の軌跡を、構図奥の敵にちゃんと当たって見えるように描き込むのは、精度を出そうと思ったらそれなりに気を遣わねばなりません。3DCG上で組んだものを素材にすることで、そうした負荷を軽減しクオリティアップに注力できます」(斉藤氏)。一方で、ダイナミックに翻るマントはクロスシミュレーションを何度か試行したが、ねらったような結果にはならず、スカルプトに切り替えて造形。また、文様は陰影に合わせて2D的に貼り込んでいる。

唐揚げ万能説!? ~爆発をつくる

SNS上では作品だけでなく、イラスト制作時のテクニックも投稿し人気を博している斉藤氏。特に写真を加工してまったく別のものに転用するメイキングは多くの支持を得ている。今回はその中から「唐揚げ」を使用した例を紹介したい。



  • 美味しそうな唐揚げを用意し、写真を撮影



  • 形のいいものを切り抜く



  • 明るさ・コントラストを調整し、グラデーションマップで白・橙・黒などをマッピングして爆発のようなトーンに



  • グローさせれば爆発素材の完成


同様のテクニックを用いて、爆発だけでなく煙、キャラクターも唐揚げで作成した例


グラデーションマップの応用範囲は広く、横断歩道のヒビ割れに青系のグラデーションをマッピングすることで電撃・ビームなどのエフェクトに応用可能



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.232(2017年12月号)
    第1特集:Houdiniイズム
    第2特集:3DCGポートレート 2017

    定価:1,512円(税込)
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    総ページ数:128
    発売日:2017年11月10日
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