信頼できるプロダクションマネージャーを見つけることが不可欠
Bekmambetova監督は当初自分ひとりで本作を制作しようとしたものの早々にその難しさに気付き、フリーランスのアーティストたちとのコラボレーションを試みたが、プロジェクトはほとんど進行しなかった。そこでロシア最大規模のVFXスタジオであるCGFに本企画をもち込み、協力を依頼した。2004年に設立されたCGFは、前述の『リンカーン/秘密の書』(2012)をはじめとするTimur Bekmambetov監督のいくつかのプロジェクトにおいてVFXを手がけていた。また『The Spacewalker』(2017)や『フライト・クルー』(2016)では、ロシアのGolden Eagle AwardのBest Visual Effectsを受賞している。
「CGFとプロジェクトを共にできたことは、本当にラッキーでした。特にプロダクションマネージャー(以下、PM)のGuslovaの協力がなければ、本作は完成しなかったでしょう。映像作家は、信頼できるPMを見つけることが不可欠だと思います。フリーランスとして活動するのではあれば、締め切りや仕事の進め方を常に見守りリードしてくれるPMの存在は特に重要です。加えて3DCGは非常にコストのかかる技術なので、プロジェクトの一部でも賄ってくれるファンドへの申請も有効です。本作ではTimur Bekmambetov Cultural initiatives foundationから制作資金の一部を調達しました」(Bekmambetova監督)。
Guslova氏はレイアウトアーティスト、エフェクトアーティスト、モーションキャプチャスペシャリストなどを経た後にCGFへ移籍し、現在はプロジェクトのコーディネートやスーパーバイズを担当している。なお、本作のスタッフロールにはリニアプロデューサーと記されている。「私の役割は、プロジェクトの予算配分、プランニング、支出管理、コーディネートなどで、作品の仕上がり具合に目を光らせていました」(Guslova氏)。CGFはロシアでトップクラスの制作力を誇るVFXスタジオだが、CGアニメーションを手がけるのは初めての経験だった。本作のプロジェクトは2016年10月に始まり2017年12月に終了し、約100人のアーティストが関わった。
「プロジェクトにおいて、私は脚本を書き、ストーリーボードも描きました。モデラーのためにキャラクターのデザイン画も描きました。その後は、作品の監督と編集に徹しました。優秀なCGスーパーバイザーのGrigory Obiddenov(本作ではテクニカルディレクターを担当)は、リアリスティックでありながらシュールでもある、本作のルック制作を手伝ってくれました。アニメーションの仕事については、才能あふれるアニメーターのOlga Baulina(本作ではアニメーションのスーパーバイズを担当)に教えてもらいました。Timur Bekmambetovは、クリエイティブ・プロデューサーとして制作の全工程において意見をくれました」(Bekmambetova監督)。
▲コトリのCGモデルに対するBekmambetova監督のコメントと修正指示
▲【左】コトリのワイヤーフレーム/【右】同じくシェーディング
Bekmambetova監督は作品制作に対して非常に情熱的で、制作の全工程において自身の役割を果たそうと努力していたとGuslova氏は語る。「プロジェクトには、コンセプトアーティスト、キャラクターアーティスト、モデラー、テクスチャアーティスト、リガー、アニメーター、エフェクトアーティスト、コンポジターなど、数多くのセクションから才能あふれる素晴らしい面々が参加しました。Bekmambetova監督は各メンバーに声をかけ、彼女が思い描くイメージやアイデアを説明しようと努力していました。ですから、私たちは問題なくゴールを共有することができました」(Guslova氏)。
▲コトリのアニメーションを制作中のMayaの画面
▲完成ショット