>   >  SSFF & ASIAからひもとくショートフィルムの魅力>>No.2『Tweet-Tweet』を成功に導いた、アイデア・マネジメント・スタジオ
SSFF & ASIAからひもとくショートフィルムの魅力>>No.2『Tweet-Tweet』を成功に導いた、アイデア・マネジメント・スタジオ

SSFF & ASIAからひもとくショートフィルムの魅力>>No.2『Tweet-Tweet』を成功に導いた、アイデア・マネジメント・スタジオ

VFXスタジオとしての経験や、バーチャルカメラが役立った

チームメンバー全員に共通する課題は、本作の最も重要なキャラクターとも言えるロープの表現だった。本格的な制作に入る前のリサーチ段階から、アーティストたちは常にロープにフォーカスしていたとGuslova氏はふり返る。「私たちはいくつかの本物のロープを用意し、モデラーはそれらを参考にロープをモデリングしました。プロの綱渡りにそのロープの上を歩いてもらい、アニメーターはその動きを基にアニメーションをつけました。ロープの上に雪を投げ、どんなふうに動くのかを観察したりもしました。エフェクトアーティストは、それを基にリアリスティックな雪を表現することができました」(Guslova氏)。なお、本作のメインツールはMayaで、エフェクト制作にはHoudiniが使われたという。

▲ロープのCGモデル


「コトリや女性といったほかのキャラクターたちを、自然な形でロープとインタラクションさせ、バランスをとらせることは特に難しかったです。この課題を解決するに当たり、長年培ってきたVFXの経験がとても役立ちました。リガーがロープのセットアップを担当し、アニメーターによるブロッキングをベースに、エフェクトアーティストがロープの自然な動きをシュミレーションすることで課題をクリアしていったのです」(Guslova氏)。

▲ロープのアニメーションを制作中のMayaの画面


▲完成ショット


レイアウトやアニメーションでは、ViewGAというCGFの社内ツールが役立った。「ViewGAは、3D空間を撮影できるバーチャルカメラです。本作のカメラワークはViewGAで設定しており、Bekmambetova監督も自らこのカメラを使って自身のイメージを私たちに伝えてくれました」(Guslova氏)。本作では、最初にアニメーターがラフなアニメーション(ブロッキング)をつけ、それをバーチャルセット内のViewGAで撮影することでカメラワークをつけ、そのカメラワークを基にアニメーションをブラッシュアップするというワークフローがとられた。

▲ViewGAを使用中のCGFのアーティストとBekmambetova監督


Bekmambetova監督が最初のアイデアを思いついてから、本作が完成するまでに約5年の年月を要した。その間の全てが素晴らしい経験だったとBekmambetova監督は語った。「このプロジェクトに参加し、たくさんの才能あふれる人たちとコミュニケーションできたことは素晴らしい経験でした。私たちのスタジオは、まるでわが子のようにこのプロジェクトを愛し、大切に育てました。スタジオにとって最初のCGアニメーションだったからこそ、全力を尽くしました」(Guslova氏)。

そしてSSFF & ASIA 2018 CGアニメーション部門での優秀賞も、大きなニュースだったと語る。「私たちの作品がそのように注目されることが信じられず、とても興奮し、チームメンバー全員で喜びを分かち合いました」(Bekmambetova監督)。「授賞式への参加は楽しい経験でした。受賞によってアーティストたちは勇気づけられ、新たなプロジェクトに進むエネルギーやインスピレーションを得ることができました。私たちは現在、『オレンジツリー』という新たなCGアニメーションのショートフィルムのプロジェクトを推進中です。まだ詳細は秘密ですが、たくさんのチャレンジをしています」(Guslova氏)。

▲SSFF & ASIA 2018 CGアニメーション部門の授賞式でスピーチするGuslova氏。なお、授賞式には代表としてGuslova氏のみが参加した


▲【左】審査員の中川翔子氏からトロフィーを受けとるGuslova氏/【右】3名の審査員(杉山知之氏・デジタルハリウッド大学 学長【写真内、左】、中川翔子氏・歌手/女優【写真内、左から2番目】、新城毅彦氏・監督/演出家/デジタルハリウッド大学 客員准教授【写真内、右】)とGuslova氏


Bekmambetova監督のアイデアと数点のスケッチが『コトリのさえずり(Tweet-Tweet)』という11分のショートフィルムへと結実する上で、父であるTimur Bekmambetov監督の助力と助言が大きな役割を果たしたことはまちがいないだろう。しかし、それだけが本作の成功の要因というわけではない。Guslova氏のマネジメントの力と、CGFというスタジオの制作力、そして彼らの力を最大限に引き出したBekmambetova監督の情熱もまた、成功のための不可欠な要因だったと言えるだろう。

ほんの数分のショートフィルムの背景にも、つくり手の様々な挑戦があり、様々な思いが込められている。SSFF & ASIA 2019ではどんなショートフィルムが上映されるのか、心待ちにしてほしい。

info.

  • ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019
    映画祭代表:別所 哲也
    フェスティバルアンバサダー:LiLiCo(映画コメンテーター)
    開催期間:5月29日(水)~6月16日(日)
    上映会場:都内複数の会場にて
    ※開催期間は各会場によって異なります
    料金:無料上映
    ※事前予約は下記Webサイトにて受付中。一部、有料イベントあり。
    お問い合わせ先:03‐5474‐8844  / look@shortshorts.org
    主催:ショートショート実行委員会 / ショートショート アジア実行委員会
    https://www.shortshorts.org/2019

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