こんにちは! ボーンデジタル テクニカルサポートの黒河です。本連載では様々なソフトウェアの深掘りと、クリエイターに役立つテクニカルな情報をお届けしていきます。
FoundryのFlixは、ストーリーボード制作を支援する管理システムで、映像制作全般におけるプリプロダクションや企画段階で活用されているソフトウェアです。いくつかの製品と連携するプラグインやAPIが用意されていますが、今回はPhotoshopとの連携に注目して、その活用方法やTipsを紹介していきます!

黒河 建
ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
X:@BD_SoftwareDiv
※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.323(2025年7月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。

Flix(フリックス)

Foundryが開発したストーリーボード制作向けの管理ソフトウェア。映画、テレビ、ゲームにおけるストーリー開発のためのハブで、クリエイティブなストーリーテリングを促進し、制作チームがプロジェクトを効率的に管理できるように支援する。
www.borndigital.co.jp/product/flix
ストーリーボード管理の負担を減らすFlix
映像作品の土台となるストーリーボード。制作現場のデジタル化が進む一方で、複数の関係者がレビューし、修正の反復作業が続くストーリーボードのデータ管理は煩雑になりがちです。
膨大なファイルの命名規則から保存先の設定、リビジョン管理など、クリエイティブではないタスクが増えると、描くことに専念したいアーティストにとっては大きな負担となります。そうした負担を解消してくれるツールのひとつが、Flixです。

活用方法① Photoshopと連携してボードを管理
PhotoshopにFlixプラグインを入れると、「Flix」パネルが追加されるので、開いているPSDデータのうち、何をFlixに転送するかを簡単に指定できます。

[Image→Send Current Image]で新しいボードを送信でき、取り込んだボードはダブルクリックするとPhotoshopで開かれるので、修正作業もスムーズです。
修正したボードは[Image→Replace Current Image]で簡単に置き換えることができ、ボードは「Revisions」で管理されるので、過去バージョンの確認も行えます。また、FlixにPhotoshopのデータをドラッグ&ドロップで読み込むことも可能です。



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▲Flixでボードをダブルクリック、もしくはSource Filesのデータをクリックすると、Photoshopでボードが開きます。Photoshopで修正作業を行なったボードは、[Image→Replace Current Image]でFlixのデータを置き換え可能 -
▲置き換えたボードは「Revisions」で管理されるので、過去のボードを確認することもできます
活用方法② レイヤーカンプ単位でFlixへ転送
Flixパネルから操作可能な「レイヤーカンプ(Layer Comp)」単位での転送も便利です。レイヤーカンプは、レイヤーの表示非表示設定を保存しワンクリックでその設定を呼び出すことができる機能ですが、ストーリーボードアーティストやアニメーション制作者の中には、この機能を活用して各コマの動きを確認する方もいると思います。
Photoshopからレイヤーカンプ単位での転送は、Flixパネル[Layer Comp→Send Each Layer Comp]または[Layer Comp→Replace Each Layer Comp]で可能です。


Flix内ではバージョン管理はもちろん、ソースデータとしてPhotoshopの構成情報も保持しています。つまり、Flixのソースファイルを指定しPhotoshopで読み込むと、レイヤーカンプの情報も元のまま読み込まれます。作成者とは別のユーザーでも読み込み可能です。
活用方法③ レイヤーカンプの置き換え
「Send Each Layer Comp」は新規に全レイヤーカンプをFlixへ転送し、「Replace Each Layer Comp」はボードを置き換えます。
注意点としては、Flixで選択しているボードを先頭として置き換えるので、置き換え場所を間違えないように確認することです。しかし、もし置き換えたとしても前のデータが消えるわけではなく、新しいバージョンができるかたちなので、そこは安心して作業できます。

活用方法④ 映像編集ソフトとFlixの連携
Flixで作成したシークエンスは、タイミング情報を保持したまま映像編集ソフトPremiere Pro上に再構築できます。そのため、ストーリーボード段階で詰めたタイミングや構成を崩さずシームレスに編集作業へ移行したり、編集内容をFlixに再インポートし新しいリビジョンとして管理したりできます。
編集作業では、よく既存ボードを複数組み合わせて新しいボードを作成すること(ピクチャー・イン・ピクチャー)が行われます。その際、関連するボードが「Related」に管理されるので、作業内容のメモなどは必要なく、簡単にFlixから編集内容を追跡することが可能です。




DevToolsを使用して動作をチェック
Flixを利用していて、もし処理が一向に完了しない状況に遭遇したら、Flixクライアントでは上部のメニュー より[Extensions→Developers→Dev Tools]、または[Ctrl+Shift+I]のショートカットで開発者ツールを開き、Consoleを見てみましょう。エラーが発生していれば、基本的にここで確認できます。
例えば、Premiere ProからFlixにデータをインポートする際、サポートしていない拡張子を含むパスを設定してしまうと、Flix上ではエラーメッセージが表示されずロードボタンがぐるぐる回りますが、Console上ではエラー状況がわかるようになっているんです。


Photoshopユーザーのデータ管理としては便利
ストーリーボードは、日本ではまだ本格的な活用が広まっていない印象ですが、その意義や有用性、さらに管理が容易になるFlixを合わせて考えると、品質と効率の両面で活用の可能性があると感じました。過去データの拾い上げが簡単で、命名規則も管理されているので、アーティストは描くことに集中できるかと思います。Flixという“箱”があることで、ゼロから管理方法を考えなくて済むのも利点です。
今回はPhotoshopとの連携に絞って見ていきましたが、BlenderやMayaなどのツールとの連携も機会があれば検証したいですね。また、現時点では未対応ですが、ほかのペイントソフトとも同様の連携ができると、さらに幅が広がりそうです。
ストーリーボードについてもっと詳しく知りたいという方は、CGWORLD ONLINE ACADEMYに関連講座がありますので、ぜひチェックしてみてください!
※視聴期間:2025/7/14まで
次回予告|Golaem

次回はMayaのプラグインである「Golaem」を取り上げます。近年、シミュレーションソフトウェアの活用が広がっている中、Golaemは群衆シミュレーションに特化したツールとして様々なプロダクションで活用されています。現在はAutodeskのM&E Collectionにも同梱されるようになりました。実際にGolaemを使用し、どのような強みをもっているのかを検証していきたいと思います。お楽しみに!
テクニカルサポートが選ぶ今注目のソフト|ARRIVAL.SPACE

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arrival.space
3D Gaussian Splatting(3DGS)に対応したWebベースのメタバースプラットフォーム、ARRIVAL.SPACE。ブラウザで体験できるためアプリのインストールが不要で、スマートフォンからでもアクセスできるという点が魅力です。3DGSで表現された空間を体感するにはもってこいのサービスだと思います。
3DGSのコンテンツに触れたことがないという方も多いと思うので、まずはARRIVAL.SPACEで様々な空間を歩き回ってみてはいかがでしょうか。
INFORMATION

月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.323(2025年7月号)
特集:『KEMURI』
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2025年6月10日
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TEXT_黒河 建/Takeru Kurokawa、井上将人/Masato Inoue(ボーンデジタル)
取材協力_栗田 唯/Yui Kurita
EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)