>   >  「絶対に(手で)描かない ! 」3DCGでやりきった『ワンパンマン SEASON 2』のムカデカット/No.2 CGカット制作篇
「絶対に(手で)描かない ! 」3DCGでやりきった『ワンパンマン SEASON 2』のムカデカット/No.2 CGカット制作篇

「絶対に(手で)描かない ! 」3DCGでやりきった『ワンパンマン SEASON 2』のムカデカット/No.2 CGカット制作篇

Pencil+ 4 Line for After Effectsによって、数百パターンのラインを表現

▲変化に富んだムカデ長老の表情も全て同じモデルで表現しており、カットごとのモデリングやレタッチは行なっていない。レンダリングしたラインはPLD形式(Pencil+ 4 Line for After Effectsでライン編集を行うための専用データ形式)で出力し、AE上で表示・非表示や、太さの変更、各種加工を行なっている。どれもボタン操作で指定でき、数百パターンのライン表現が可能なので、最初の設計がしっかりしていれば、同じモデルを使っても単調な画にはならない


▲第24話でムカデ長老が脱皮するシーンでは、口が内側からこじ開けられ、新しい顔が出現するという難易度の高いカットがあり、平岡氏自らが担当した。上は脱皮カットを制作中のMayaの作業画面


▲先のカットの完成画像。「監督たちとの打ち合わせの席では、顔の部分だけ作画で表現してもらうという案も出ましたが、作画とCGの切り分けが難しいだろうと思ったので『全部CGでやってみます』と提案しました。当初からやり方はイメージできていましたが、モデルやリグの再調整を必要とする特殊なカットだったので、私の方で担当しました」(平岡氏)

HoudiniやMayaの2D Fluid Textureによるエフェクト表現

▲ムカデに関連するエフェクトの多くもCGで表現している。【上】第16話の「百足大うねり」によるビル破壊や、【下】第24話のムカデ長老登場時の小屋破壊ではHoudiniを使用している。「Houdiniを使えるスタッフは数名在籍しており、彼らが構築したノードは今後もブラッシュアップして、ほかの作品でも再利用する予定です。モデルと同様、エフェクトもワンオフにならないよう留意しています」(平岡氏)


▲炎の表現には、Mayaの2D Fluid Textureを使用している

ワンオフモデルと手描きを撤廃し、全体のクオリティアップに注力

ワンオフのモデル制作や手描きによるディテールの追加を撤廃した結果、本作では新人でも一定クオリティを保ったカット制作ができるようになり、熟練アニメーターは動きのクオリティアップにより多くの時間を使えるようになった。

「サイタマのマジ殴りによる破壊エフェクトをはじめ、難易度の高いカットは私も担当しましたが、今回はディレクションに多くの時間を割くことで、全体のクオリティアップに注力できました。監督からは高評価をいただけましたし、視聴者の反響も良かったように思います。本作では作画と馴染ませることを重視しましたが、常にそういうルックが求められるわけではないので、作品ごとの最適解を探りつつ、CGの利点を活かした画づくりを追及していきたいです」(平岡氏)。

▲第24話のクライマックスを飾ったサイタマのマジ殴りによる破壊エフェクトも、CGで表現されている。上はMayaの作業画面。ムカデ長老の体節部のサーフェスをランダムに分割し、ブレンドシェイプベースで螺旋状に膨張させている。「第24話では、約100カットのCG制作を萌が担当しました。制作期間の都合上、使える時間は限られていたのですが、やりたいことはイメージできていたので、3日ほどで完成しました」(平岡氏)


▲先のカットの完成画像。本カットは破片の表示サイズが大きいため、形状、角度、散りながら溶けていく様子などが手で細かく調整されている


▲先のカットに続く引き画のカットを制作中の作業画面。こちらは体節の数が多く、次のカットでも引き画の破壊エフェクトが続くため、神谷氏がスクリプトを使って破片の動きを制御した


▲先のカットの完成画像。本カットは約1日で完成した


「本作のムカデは、クオリティの面でも、コストパフォーマンスの面でも、CGの方が良い結果を出せるキャラクターでした。それをエフェクトも含めてやりきったことは、萌の新たな実績と、スタッフの自信につながったと思います。今後も向上心を忘れず、制作体制の強化に努めたいです」(平岡氏)。


©ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部

info.

  • 『ワンパンマン SEASON 2』

    原作:ONE・村田雄介『ワンパンマン』(集英社『となりのヤングジャンプ』連載)
    監督:櫻井親良、シリーズ構成:鈴木智尋、キャラクターデザイン:久保田誓、美術監督:池田繁美・丸山由紀子、色彩設計:店橋真弓、撮影監督:大河内喜夫、編集:後藤正浩(REAL-T)、音響監督:岩浪美和、音楽:宮崎誠、アニメーション制作:J.C.STAFF
    onepunchman-anime.net
    ©ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部



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    cgworld.jp/magazine/cgw256.html

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