<3>3DCG作品ながら、ノスタルジックな雰囲気をしのばせる
『オニズシ』は一見すると2D作品にも見えるが、すべて3DCGで制作されている。3DCGをベースとしたエフェクトの効果によってカートゥーンタッチに仕上げ、キャラクターが生き生きと走り回るコミカルな作品世界の演出に見事成功している。「できる限りシミュレーションしてばんばんエフェクトをかけたりと、技術的にはかなり新しいことも取り入れてはいるんです。でも、サッカンさん自身も、僕たちも、昭和的なニュアンスが好きで。あえてフラット気味な仕上がりにして、大人が見るとどこか懐かしさを感じられるような、親しみの持てる雰囲気を残しています」と、横原氏はこだわりをのぞかせた。
▲〈画像左〉は庭月野氏がつくった見せ場のイメージボード。これをサッカン氏にフィードバックし、描き直してもらったものが〈画像右〉だ。キャラクターの表情や動きのニュアンスにサッカン氏らしさがにじみ出ている。「サッカンさんはアニメーションにも造詣が深く、キャラクターの動きを理解した上でポーズを提案してくれるので、どれも動かしやすいものばかり。描いてもらったストーリーボードからさらなるアイデアが生まれることもありました」(横原氏)
実際にアニメーションに落とし込む際、サッカン氏の作風をそのまま生かすために、キャラクターデザインは一切修正せずに進められた。本来ならば三面図のキャラクターデザインから修正を加え、動かしやすいように微調整を重ねていくところだが、横原氏は「もともとサッカンさんのキャラクターありきの作品ですから、修正してしまうと、どんどん当初の『らしさ』が薄まってしまう。特に顔は、少しでもバランスが崩れると全然違う顔になってしまいます。もちろん、3DCGにする時にも同じことが言えますから、苦労したところではありますね」と語る。
▲「第3話まではパイロット版。いわゆる商業ベースからは外れた現場でしたし、制作スタッフも知り合いばかりだったので、楽しみつつも納得いくまで試行錯誤できました」(横原氏)
<4>このクオリティを維持しながら、これからも展開させたい
主演声優には『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』でヒロインを務めた寺崎裕香氏を迎え、「カエデ」と「ブロガー」の二役を熱演。「第1話の『カエデ』に汚い言葉や下ネタをバンバン言わせたり、『マグロ』と『ロリコン』役の髙坂篤志さんには気持ち悪い演技ばかりさせてしまったり、『ワサビ』役の芝崎典子さんにはひたすらリアルに吐く演技をしてもらったり......。声優さんたちには申し訳ないようなオーダーばかりしていたのですが、でも、みんなは楽しんで演じてくれて。僕も楽しくて、収録中はずっと笑ってました」と、庭月野氏。声優陣のいとわぬチャレンジがあったからこそ、より強固なサッカンワールドが生まれたのであろう。
「サッカン氏らしさ」を主軸に据えた『オニズシ』だが、視聴者からは「いつものサッカン」であると、好意的に受け止められているとのこと。「キャラクターだけじゃなくて、ストーリーもアニメーションも、すべてサッカンさんがつくったような印象を与えたかった。ホッとしています」と、庭月野氏は胸をなでおろす。両氏が徹底してコンセプトを貫いた結果であろう。
パイロット版の制作は現在公開中の第3話まででいったん小休止となるが、各所からの反応は上々で、今後の展開も企画中とのこと。「テレビシリーズや劇場版など、夢は広がるばかりなんですが、この作品の濃密さを維持し、いかに世界観を崩さずに表現していくかが課題」と、横原氏。庭月野氏は「たしかに、制作フローは検討すべきところ。でも実は、パイロット版では出しきれなかったエピソードやアイデアがまだまだたくさんあるんです。いつか発表できれば」と、今後の抱負を語ってくれた。
TEXT_菅原 淳子
PHOTO_弘田 充
<INFORMATION>
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『オニズシ』
主演声優:寺崎裕香/髙坂篤志
原案・キャラクターデザイン:サッカン
監督・脚本:庭月野議啓 アニメ監督:横原大和
エクゼクティブ・プロデューサー:片桐孝憲
プロデューサー:稲川亮輔
制作プロダクション:ROBOT
企画・製作:pixiv
©オニズシプロジェクト
配信先:YouTube(オニズシチャンネル)/料金:無料
チャンネルURL:https://www.youtube.com/channel/UC4r8kmChsLogJAtANdZK-pw
公式サイト:http://onizushi.com
twitter:https://twitter.com/onizushi