>   >  『SUSHI POLICE』にみる、"クリエイターがオリジナル作品をつくる"ということ。Vol.2:プリプロダクション
『SUSHI POLICE』にみる、"クリエイターがオリジナル作品をつくる"ということ。Vol.2:プリプロダクション

『SUSHI POLICE』にみる、"クリエイターがオリジナル作品をつくる"ということ。Vol.2:プリプロダクション

<3>ツボを押さえたカット制作

ーー続いては、ワークフローについてお聞かせください。

木綿:本作で最もこだわって取り組んでいるのがカット尺のバランスです。完成したシナリオを13ブロックに切り分けて、それぞれのブロックごとに演出を行なっています。「シナリオライティングの黄金則」を参考に(笑)。

ーー1話3分の尺で13ブロックほどに分けるというのは細かいですね。

木綿:1ブロックが10~15秒くらいになります。すると、普段作業しているCMと同じような感覚で演出できるのでやりやすいんですよ。3DCG側からも長回しよりもカットを割ってほしいという要望があったので好都合でした。そして、その構成案に基づきラフコンテを描きます。1話あたり平均70~80カット、多い回だと90カットくらいあります。制作当初は40~50カットくらいに留めてほしいと現場スタッフたちに言われていたんですけど、『SUSHI POLICE』はテンポの早さが魅力のひとつなので、どうしても増えてしまって(苦笑)。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第2回:プリプロダクション&ワークフロー

© "SUSHI POLICE" Project Partners

ーーラフコンテという発想は、CM制作みたいですね。

木綿:そのとおりです。今までCMやMVの演出もラフコンテで制作してたのでアニメもこのフォーマットで制作できると思っていてたんです。でも、TriFさんから「このコンテじゃ制作できませんよ」と言われてしまって、「えっ、ほかに何がいるの?」って聞いたら「レイアウトが必要ですよ!!」と(苦笑)。

ーー確かに(笑)。

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第2回:プリプロダクション&ワークフロー
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木綿監督が描いた第1話のラフコンテ。ご覧の通り、CM制作における演出コンテの体裁に近い

木綿:アニメ制作の経験がないので絵コンテの重要性やレイアウトという存在自体を知らなかったんですね(苦笑)。CMのように単発の作品であればその場の判断で舵をとれるんですが、シリーズ作品になると勢いだけではつくれないと痛感しました。現在はTriFさんにラフコンテを基に絵コンテやレイアウトを描き起こしてもらっています(※下に載せた『SUSHI POLICE』ワークフロー図を参照)。

ーーレイアウトに着色されていますが、どのような意味があるのですか?

木綿:ひと目で作業分担がわかるように色分けしているんです。それ以外にもPANフレームやエフェクトなどの細かな指示が書き込まれています。3Dでカメラワークを付けることもありますがカメラワークの修正のたびにレンダリングを行うのは無理なので極力3Dのカメラワークを避け、通常のアニメ制作と同様にAEでカメラワークを行なっているんです。

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第2回:プリプロダクション&ワークフロー
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第1話のレイアウトより。(左)3DCG要素が介在しない2Dカットの例(CUT 44)。2D要素は桃色で塗り分けられるため、画面全体が桃色となる/(右)背景も3Dベースのカット例(CUT 45)。キャラクターの芝居に関する演出指示はオレンジ色で、カメラワークに関するものはシアン色で書かれている。そしてカメラワークのフレーミングについても始点は赤色、終点は青色と視覚的にわかりやすい

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第1話のレイアウトより、(左)CUT 68/(右)CUT 69。エフェクト表現は基本的にAEによるコンポジットワークで施されているが、そうした要素はシアンで塗り分けられている

ーーセリフなどの音まわりはどうしていますか?

木綿:セリフの扱いに関してもアニメの流儀がわからないので芝居の演出方法でのりきることにしました。何度か仕事や芝居で付き合いのあった役者さんに集まってもらいプレスコを行なって、最終的に音響スタジオで映像に合わせて再収録しています。ただ、再収録の時にもっと良いアイデアが浮かべばリップを無視してセリフを変えてしまうのでリップシンクに関しては厳密に合わせていません。

ーーー外国語の吹き替え版もつくることを考えれば合理的ですね。

木綿:英語で会話しているものを日本語に吹き替えているというアテレコ(アフレコ)風だとわりきっています。作風的にもその方がマッチしていると思ってますし、少しでも面白くなる可能性があればねばりたいんです。スタッフには嫌がられますけど(苦笑)。

ーー(笑)。

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  • 『SUSHI POLICE』ワークフロー図。ショットワーク(特にアニメーション工程)において、TriFが重責を担っていることが窺える


木綿:音声まわりとしては、劇中曲はinvisible designs lab.の高木公知さんに依頼しました。アナログ音源の深みのある楽曲で作品に重厚感をもたらせしてくれるんです。音響効果はノイジークロークの稲岡 健さんに依頼していますが、スシポリスという虚構の世界にリアリティを与え映像のクオリティを増幅させてくれています。映像にとって音楽はとても重要なファクターですからね。

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第2回:プリプロダクション&ワークフロー
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第1話CUT74のレイアウト。取り締まったレストランMIFUNEが派手に爆発する様を背に、颯爽とスシポリスたちが歩き去るという内容。作画の際に背景をレイヤー別に分けておき、差分で壊れたMIFUNEのパーツを作成したという

第1話CUT74のアニマティクス

第1話CUT74の完成形。After Effectsによるコンポジット作業時に実写素材やParticularにてさらなるエフェクトが施された

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第2回:プリプロダクション&ワークフロー

© "SUSHI POLICE" Project Partners

Information

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第2回:プリプロダクション&ワークフロー

(後列左から)告畑 綾コンポジター、河原幸治プロデューサー、木綿達史監督、中石賢悟プロダクションマネージャー兼コンポジター/(前列左から)山内香里デザイナー、阿部晋之介コンポジター、川越洋輝プロダクションアシスタント、小堤 愛プロダクションアシスタント。以上、KOO-KI

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  • 『SUSHI POLICE』
    TOKYO MXにて毎週水曜日25:00から放送中!
    『SUSHI POLICE』第1話無料視聴キャンペーン実施中
    各種配信サービスでも視聴可能(詳しくは公式サイトへ)

    ホンダ:山下 晶/スズキ:イフマサカ/カワサキ:岡本ヒロミツ/サラ:菊地由美

    監督:木綿達史/脚本:楠野一郎、安藤康太郎
    制作:セディックインターナショナル、KOO-KI
    製作:"SUSHI POLICE" Project Partners
    © "SUSHI POLICE" Project Partners

    sushi-police.com

Profileプロフィール

空気/KOO-KI

空気/KOO-KI

『SUSHI POLICE』中核スタッフ

(後列左から)告畑 綾コンポジター、河原幸治プロデューサー、木綿達史監督、中石賢悟プロダクションマネージャー兼コンポジター
(前列左から)山内香里デザイナー、阿部晋之介コンポジター、川越洋輝プロダクションアシスタント、小堤 愛プロダクションアシスタント

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