<3>ツークン研究所が誇る自作ツール
HMCをはじめ、ツークン研究所では収録機材の自作にも積極的だ。「HMCの開発は私が長年温めていたものを凝縮させています。役者さんがかぶるということ、そしてかぶったときに邪魔にならないようにすることに関しては、ひときわ気を配っています。現行機はver2.2モデル(約230g)になるのですが、まだまだ改良の余地がありますよ」(三鬼氏)。構成は非常にシンプルでカメラとレコーダの2つとなっており、レコーダを体に貼り付けるかたちだ。したがって、動きに合わせてレコーダの場所の調整も容易となっている。また録画や再生等の制御は、無線で即時に行える。なお、一般的なキャプチャ方式では、タイムコードのシンクを合わせるためのレコーダをアクターの腰あたりに巻き付けているが、それでは役者の演技を拘束してしまうことから、ツークン研究所では収録後にTCを敷くという独自のワークフローを導入している。「ツークン研究所の"研究所"という名に恥じぬようR&Dをしていきたいと思っていますが、制作現場ではテクノロジーだけでなく、フットワークの良さも大切です」(三鬼氏)。実際に材料はいずれも壊れた際のメンテナンスのしやすさを重視しており、全て市販で買えるもので構成されている。特に軽さを重視していることから、ネジ1本の重量まで気にかけているそうだ。「安全性、耐久性を保持しつつも、徹底的に『肉抜き』を行うことがポイント。0.25gの重さのネジでも4本使っていたら1gになるので、安全性を保ちながら軽量化を追求しています」。ハードウェアのこだわりは軽さだけではなくフレームにも工夫が考えられている。従来のHMCではフレームがまっすぐになっているため、外側からリファレンス動画を収録した際に口元が映らないという問題が生じていた。これに対してフレームに角度をつけることによって、口元がはっきりと映るようになっている。「そのほかにもHMCのブレを減らしてノイズを軽減するといったハードウェアの開発から、収録時のスタジオワーク、膨大な映像素材の管理、大量のMayaシーンを扱うためのバッチ群。あらゆる面で、Performerのパフォーマンスを高める努力を行なっています」(木下氏)。本取材を通してツークン研究所のこだわりと日々の研究の積み重ねが確かな成果につながっているということ、そしてハイエンド&ハイクオリティへのあくなき追求という姿勢が存分に伝わってきた。
現場ならではの機転を利かせた自作ツール群
ツークン研究所が自社開発したHMC機材一式(上段)と、実際に装着した例(下段左)。最高画質はフルHD(1,920×1,080、60fps)でありながらも、レコーダとバッテリ込みで重量は約230gと非常に軽量化されている。安全性・耐久性を保持しながら徹底的に肉抜きを施したり、タイムコードは収録後に入れるワークフローを採ることでTC用の機材を省くといった創意工夫を凝らし、アクターへの負荷を最小限にとどめている。携帯性にも優れ、他社スタジオ、サウンドブースやオフィスなどへの出張収録も行なっているそうだ
www.zukun-lab.com/facial_capture
(下段右)ワイヤレスによる収録は、通常時で5台(5人)同時収録が行える。HMC映像はリアルタイムでプレビュー可能
リアルな動きに、さらなる磨きを施す
Maya用アニメーションモデル。ボディリグについてもTELYUKAから提供された
MotionBuilder用のセットアップ
MOCAPデータのブラッシュアップ例とFCAPデータのブラッシュアップ例。