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トリガー 福岡スタジオが始動。取締役/アニメーションプロデューサーの舛本和也氏が記念講演を開催

トリガー 福岡スタジオが始動。取締役/アニメーションプロデューサーの舛本和也氏が記念講演を開催

<2>海外マーケットを視野にいれたアニメ制作とは

続けて舛本氏は「世界に向けてつくるということは、人間、文化、国家を構築している宗教を意識してつくることでもある。現地の宗教的なタブーに抵触してしまう作品は放送してもらえない」と語る。誰のためにつくるのかというのは数字の問題ではなく、その人たちが誰なのかをわかった上でつくる、といった戦略を述べた。

「日本でやっている以上、アニメーションを制作している現場スタッフの収入は変わらない。世界に向けていかないとシュリンク(縮小、衰退)してしまう。買ってくれるお客さんが多くなれば、予算が増える可能性も高まる」。これもまたビジネスとして成立するか否かの話なのだ。

トリガーの福岡スタジオが始動 取締役・アニメーションプロデューサーの舛本和也氏が母校で講演 アニメーション制作(左)、ビジネス(中)、視聴者・消費者・お客さん(右)を入れ子構造で解説

舛本氏は制作の側面からでも、アニメ業界は、技術や能力といった才能を換金していると言う。しかし、たとえ良質なアニメをつくっても買ってくれる人がいないと成り立たないし、面白いと思ってもらえないとお金にならないのだ。

その後、話題は作画崩壊へ。「お客さんが作画崩壊と言えば作画崩壊。演出的に崩してるんだというのをわかってもらえればいいけど、その答えを出すのはお客さんです。意図していないものを作画崩壊と言われたとしても、作画崩壊なのだと受け止めるしかない」と、あくまでもアウトプット先の視点だ。

作画崩壊はスケジュール管理の崩壊とも言えるが、作画崩壊と言われてる箇所は演出が弱いところが多い。
「絵に頼ってる部分があるのはわかるけど、色んな要素で作品が成り立ってるわけだから、絵が気になってるということはお客さんが物語に入りきれていない」といった分析も行なっているそうだ。

トリガーの福岡スタジオが始動 取締役・アニメーションプロデューサーの舛本和也氏が母校で講演 「第5回 アニメーション講習会 In 八耐」の様子

トリガーは『キルラキル』『リトルウィッチアカデミア』など、スタジオ設立から基本的に自社オリジナル作品を展開してきている。この4月からも『キズナイーバー』『宇宙パトロールルル子』の展開が始まる。

「オリジナルにこだわっているのは、つくったものをマネタイズしていくため」と舛本氏。自分たちでブランドをつくって、自分たちが持っている原作権から得られる原作料を会社で働いてるスタッフやクリエイターに還元していく、といった理念を掲げている。

それから会社を10年単位に分け、成長期・安定期・改革期の30年で見通しをつけている話にも触れた。「2011年にスタートして5年目。あと5年は自分たちが原作権を持つものを作り続ける」というのが成長期の計画。その後は「2021年からの10年はつくったコンテンツのノウハウや、育った人材の回転率が上手くいって、豊かな人材育成と作品制作が行えるようになりたい。そして2032年からは、現在のスタッフではなく、次世代のスタッフがトリガーの最前線に立って作品を生み出してもらえるようになってほしいと、安定期と改革期の展望を語った。

トリガーの福岡スタジオが始動 取締役・アニメーションプロデューサーの舛本和也氏が母校で講演 トリガー福岡スタジオの様子(トリガー提供)

なお、トリガー 福岡スタジオは今年の1月19日(火)より始動。制作事務、作画監督、原画兼演出の3名が在籍している。将来的には8名以上のチームとして、独自に制作を請け負えるようにしたいとのこと。2016年4月より福岡スタジオとしても人材募集を行なっていく予定だという。

TEXT & PHOTO_真狩祐志
EDIT_UNIKO





  • トリガーの福岡スタジオが始動 取締役・アニメーションプロデューサーの舛本和也氏が母校で講演
  • アニメーション講習会 In 八耐
    【Information】
    日時:2016年2月21日(日)13:00〜16:30
    場所:福岡工業大学短期大学部 5F 演習室(MACルーム)
    主催:福岡工業大学短期大学部 弘中研究室
    www.zusaar.com/event/7257004

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