<2>2D/3D変換後もディテール保持する
「クライアントのS3Dキャメラマン(Stereographer)であるギャレス・デイリー/Greth Daley氏はS3D撮影の専門家であり、非常にディテールに気を配る人でした」と、ベイカー氏はふりかえる。
「ギャレスと私たちのチームは同作の撮影中、ネイティブのS3Dルックを現場で作成し、作品の大部分をS3Dで撮影しました。ヘリコプターから高角度で撮影した風景の航空ショットなどはS3Dステレオリグでの撮影が不可能だったため、2Dで撮影してS3Dに変換する必要があったのですが、参照にするS3D映像がすでに存在していたので、それらのルックとマッチするように変換しました」。
Aidan Monaghan
Courtesy Twentieth Century Fox
リドリー・スコット監督のネイティブルックとマッチするよう、PFWチームはリニアフォールオフを強化し、ショットに大幅な奥行きを持たせた。「結果として、火星上の丘陵など10マイルほど離れた想定の背景でも、わずかに奥行きをつけたルックを作成できました」とベイカー氏。
さらに「また私たちは、主人公が火星にたった一人で取り残されているという感覚を表現したいと考えていました。そのため、奥行きを調整して、主人公が広大な世界に残された小さな存在であることを強調しました」と続ける。
Courtesy Twentieth Century Fox
背景に奥行きをもたせる処理の例
<3>俳優のサイバースキャンから奥行き調整用の3Dジオメトリを作成
『ゼロ・グラビティ』と同様に、PFWのS3Dアーティストたちは宇宙服のヘルメットに映った反射と屈折を考慮する必要があった。これらのエレメントから奥行きを抽出することは非常に困難が伴う。ロンドンのPFWチームは実際の人物の顔とヘルメットをサイバースキャンして3Dジオメトリを作成。そしてスキャンしたデータをプレート上の人物にトレースし、S3D用のView-Dパイプラインへとまわす前に、作成したロトスコープと組み合わせる奥行きマップを作成した。
Courtesy Twentieth Century Fox
アクターをサイバースキャンして作成した3Dジオメトリを用いた奥行きマップの作業例
『オデッセイ』のS3D映像を作成する際のワークフロー上の問題は、FUSION STUDIOを使用してView-DパイプラインツールをPFWのショット専用にスクリプトすることで解決した。
「リドリー監督は、同作のビジュアルスタイルとして、デジタル中間ファイルでフッテージを極端にシャープニングしました」。さらに、ベイカー氏は続ける。「これにより、通常のプレート上では気づかない繊細なエッジの問題が、シャープニングしたプレートでは目立つようになり、変換パイプラインに影響を及ぼしました」。
「この問題に対処するため、アーティストからOpenEXRとして送られてきたショットをFUSIONスクリプトに通して、新たなカラーグレーディングと大幅なシャープニングを適用しました。つまり、クライアントから提供されたプレート版を確認できるだけでなく、グレーディングしてシャープになったバージョンを確認できたので、これらのエッジを簡単に特定できたのです。私たちが作成した映像は、まさにクライアントの希望に沿ったものでした」と、ベイカー氏。
最後にベイカー氏は、「リドリー監督の次回作に向けて、私たちの準備は万端です!」と力強く語ってくれた。
Peter Mountain
Courtesy Twentieth Century Fox
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