不動産・建設業界という巨大市場で、3DCGとWeb技術を武器に「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」というミッションを掲げるスタイルポート。不動産分野での没入型XR体験の進化を進める同社は今、ゲームや映像などのエンタメ業界で培われた「演出力」を持つ人材を強く求めている。今回は同社の主力Webサービス「ROOV」立ち上げメンバーであり、事業を牽引する中村幸弘氏、吉田 巧氏、そしてエンタメ業界出身の三浦成人氏の3名に、建築CGの魅力と募集の背景を聞いた。
マンション購入後の後悔をなくすために生まれた「ROOV」
CGWORLD(以下、CGW): まずは、スタイルポートが展開している事業についてお聞かせください。
中村幸弘氏(以下、中村):事業としては3本柱です。1つ目は「CXプラットフォーム」。販売の顧客体験をクラウドで一元管理し、営業効率の改善や顧客体験の向上を目指すものです。
2つ目が「3Dコンテンツ」。 独自のWebサービスのROOVに加え、静止画パースやLEDパネルを使った映像投映サービスなど、様々な形態があります。XRは今、この3Dコンテンツの領域で最も熱いカテゴリーです。
3つ目が「共創開発」で、お客様と共同で開発を行い、業界や企業固有の課題を解決していくものです。ここで生まれたものが、汎用プロダクト化されて他のお客様にも展開されていく、という循環になっています。
CGW:ROOVとは具体的にどのようなサービスなのでしょうか?
吉田 巧氏(以下、吉田): お客様に建物や部屋のことを深く理解し、納得したうえで後悔がないような形で購入していただきたい、というミッションを叶えるためにつくられたのがROOVです。
ROOVの主力プロダクトは2つあります。1つは、図面から高精度なデジタルツインを生成し、Webブラウザだけで室内空間から都市空間までを再現・体験できる「ROOV walk・ROOV.space」。もう1つは、販売に必要なあらゆる資料やコンテンツをクラウドで一元管理し、顧客の閲覧ログを可視化することで営業効率を最大化する住宅販売支援プラットフォームの「ROOV compass」です。
中村:現在、実際に世の中で販売されている分譲マンションの約45%でROOVが使われています。
CGW: 近年はApple Vision Proを使ったXR体験にも取り組んでいますね。
吉田: 弊社は野村不動産様などと共に、2024年からXR体験システムの共創開発を進めています。まだ建っていないマンションをApple Vision ProなどのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を通じて、原寸大の没入体験として提供するものです。
プレゼンの反応は「100発100中」
CGW: ROOVは大手デベロッパーへの導入が進んでいるとのことですが、評価されているポイントは何だと思われますか?
中村: プレゼンでは、ほぼ100発100中で良いリアクションをいただいています。お客様自身、今ないものに対して「本質的に何を求めているか」をうまく言語化できないことも多いんです。そこを私たちが会話の中で深掘りし、開発と制作の両方を通じてアウトプットすることで、お客様が潜在的に思っていたことを超える結果を出せている。それが評価につながっていると思います。
吉田:お客様から「こういうCGをつくってほしい」というご要望をいただいても、その裏にはもっと本質的に困っていることが隠れていることが多いんです。そこを意識して開発側も制作側も、営業も含めて話を聞いているからこそ、出てくるものを評価していただけているのだと思います。
なぜ今、エンタメ業界の才能が必要なのか?
CGW:今回、スタイルポートではXRクリエイターやテクニカルアーティストの採用を強化されていますが、どのような背景があるのでしょうか?
中村: 今回はキャリアアップやシフトチェンジで、より没入体験のコンテンツ制作に携わっていただくイメージで採用活動を行なっています。建築系のCG・VRクリエイターがメインターゲットではありますが、新しい挑戦なので、エンタメ系出身の方も大歓迎です。ただ、1つ重要なところとして、建築が好きな方に来てほしいですね。
吉田: 建築CGはこれまで、図面を正確に再現する左脳的な段階にありました。しかし、没入型XRにおいては、水面のきらめき、照明の温かさ、風に揺れる木々……こうした演出力が不可欠だと思っています。これらはまさに、ゲームや映画といった「エンターテインメントの世界」で磨き抜かれてきたスキルそのものだと思います。
三浦成人氏(以下、三浦):モデリンググループのうち、エンタメ業界出身者は雇用形態を問わず含めると、クリエイター全体のおよそ4割程度にのぼります。建築業界出身かどうかより、実在するものをつくることに興味を持てるかどうかが大事だと思っています。今回求めているポジションは、とにかく画づくりができる方、画づくりが好きで夢中になれる人を探しています。映像制作や空間演出のスキルを持つ方も、ぜひご応募ください。
CGW:それでは後半で、制作部門の中核を担う三浦さんにさらに詳しく現場が求める人物像についてお話を伺いたいと思います。
エンタメ業界からUnityを経てスタイルポートへ
CGW: 三浦さんは、元々エンタメ業界のCGクリエイターだったそうですね。
三浦: はい。北海道の専門学校を卒業後、札幌市内のCGプロダクションで約3年、テレビCMやプロジェクションマッピングなど、CGに関わる仕事を幅広くやっていました。その後一度退職し、フリーランスとして数年遊技機のエフェクト制作なども手がけていました。
ゲーム制作に関わるようになったのはフリーランス時代、たまたまゲームのイベントに参加し、そこでUnityというエンジンの存在を知ったことがきっかけです。これなら自分でもゲームがつくれそうだと思い、独学で触り始めました。
その流れでゲーム開発サークルでの縁を通じて、スタイルポートの前身にあたる会社でROOVの最初のプロトタイプ制作に関わることになりました。「気づいたらつくっていて、気づいたら入社していた」という感じで、2017年に正式に入社しています(笑)。
建築CGの世界で活かされるエンタメでの経験
CGW: エンタメと建築、実際に働いてみて感じた違いはどこにありますか?
三浦: 一番大きかったのは、初期の頃からプログラム開発にも関わらせてもらったことです。Unityを使ったアプリのプロトタイプづくりから始めて、CGとプログラムを組み合わせてマンションのウォークスルーの仕組みをつくりました。
もう1つ大きな違いが、実在するものをつくらなければいけないという点です。建築の世界は数mmのズレも許されない、実際のスケールに基づく厳しさがあります。一方で、その制約の中でどうすればいいものをつくれるかを考えるプロセスは、映像やゲーム制作に近い面白さもあると感じています。
CGW: エンタメ業界での経験が、どのように活きていますか?
三浦: 一般的な建築CGパースの会社は、図面を見てモデリング、レンダリング、レタッチ、納品という一連の流れは高速で回せる一方で、それ以外のことになると対応できない、というケースをよく見かけます。
しかし、映像業界の経験があれば映像のつくり方が分かりますし、ゲームエンジンを使ったCG制作の経験があれば、XR向けのデータ制作にも直結します。今の業務には、そうした経験を十分に活かせると思っています。
XRクリエイターの業務とは?
CGW: XRクリエイターの具体的な業務を教えてください。
三浦: 業務としては、すでに何らかの形でつくられた3Dデータを受け取り、それを調整・変換していく作業が中心です。使用するツールは主にUnity、データ調整には3ds Max、Photoshopなどです。
ステップとしては、まず受け取ったデータを確認し、通常のROOV制作とは異なる要件を洗い出します。例えば街路樹やマンション共用部の植栽など、細部のディテールです。ブラウザ越しに見る解像度と、XRで没入して見た時の距離感はまったく違うので、そのまま持ってくると粗く見えてしまいます。どこをつくり込み、どこを削るかを自分で考え、必要なデータの最適化と、Unity環境向けのチューニングを繰り返していく。この作業が業務の多くを占めています。
スタイルポートが求める人物像
CGW: スタイルポートではどのような人が活躍していますか?
中村: プロダクトグループもモデリンググループも基本的にフルリモートです。だからこそ、必要な情報を自分からキャッチアップし、疑問があれば自分から質問しに行けるような、主体的なコミュニケーションが取れる方が向いていると思います。あとは、お客様の声を直接聞いてそれに応えたい、というモチベーションのある方だとありがたいですね。
「つくって終わり」ではない仕事のやりがい
CGW: 仕事のやりがいについても聞かせてください。
三浦: 一貫して感じているのは、言われたことをやるだけでなく、業界やお客様の潜在的な課題を自分たちで見つけて提案していくスタンスです。クリエイターというと「綺麗なものをつくればOK」となりがちで、それ自体は否定しません。ただ、このニッチな建築・マンション領域で働く魅力は、お客様への感動体験を自分たちで考えて生み出し、それを直接届けられる立場になれることだと思います。
実際に納品したデベロッパー様からのお声が届くこともあり、それがモチベーションにつながっています。
パフォーマンスを最大化できるフルリモート体制
CGW: 働き方についても教えてください。
中村: モデリンググループは約30名で、全員フルリモートで働いています。実はコロナ禍以前から、三浦や吉田は北海道、私は名古屋にいて、すでに半分ほどのメンバーがリモートでした。コロナで全員リモートに切り替わり、その後もフルリモートを継続しています。
CGW:三浦さんのチームの雰囲気はどのような感じですか?
三浦:意見を言いやすく、風通しがいいと思います。「もう少しこうした方がいいのでは」という声も、上層部に直接届けることがよくあります。機材も、申請すれば基本的に自由に割り当ててもらえます。残業は業界の中では多い方ではなく、休みも基本的にカレンダー通りです。
挑戦を迷っているクリエイターへ
CGW:最後にみなさんから、挑戦を考えているクリエイターへメッセージをお願いします。
三浦: 建築CGの業界は、AIの進化も含めて世界的に厳しい状況にあります。言われたことをやるだけでは、この先も厳しいと思います。逆に言えば、建築や不動産のためになぜCGを使うのか、そこを俯瞰して考え直せる方にとっては、自分を再定義するチャンスにもなり得ます。建築業界の方も、エンタメ業界の方も歓迎です。
吉田: リアルに存在する空間、しかもまだ建っていない空間を再現するという特殊性は、面白さでもあり難しさでもあります。それをプログラムをつくるメンバーと一緒に楽しんでもらえるといいなと思います。
中村: 10年前、「Webでマンションを見る」なんて誰も信じていませんでした。でも、今ではROOVが新築マンションの約45%で使われる、いわば当たり前の存在になっています。XRはまだそこまでの「当たり前」ではありませんが、どこに行ってもROOVのXRが見られる、そんな世界をつくりたいですね。一緒に挑戦したい方をお待ちしています。
株式会社スタイルポート
2017年10月設立。「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」をミッションに、3Dコミュニケーション・プラットフォーム「ROOV」を開発・提供。WebGLを用いたブラウザ型VR「ROOV walk」から、Apple Vision Proを活用した最新XR体験まで、不動産業界のDXを牽引する。
TEXT & EDIT_永田睦子 / Mutsuko Nagata
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota