STEP007 修正
ZBrushでの調整と書き出しっ!素体の内部構造以外に『冬制服Ver.』のパーツを共有しながら『ソレイユVer.』ならではの調整が必要となるパーツには、ZBrushを使用した。例えば星宮いちごの『冬制服Ver.』の髪の毛には象徴的なリボンが存在するが、『ソレイユVer.』では装飾の着いたカチューシャとなり、嵌合個所やデザインが異なる。同じパーツをそのまま利用しながら凹凸の形状を変更しなければならないこのような部分では、粘土のように形状をブラシで変更できるスカルプトツールが非常に有効だ。スカルプト以外でもZBrushはSTLパーツの書き出し作業で役立った。『冬制服Ver.』の素体と齟齬が発生しないよう確認を兼ねていたこともあるが、書き出し時に必要なパーツのみSTLファイルに一気に書き出すことができることもZBrushを使用した理由である。書き出したSTLファイルは「MiniMagics 3.0」と「MoNoGon」両方のソフトを使用してエラーチェックとスケール確認を行い、問題がなければ完了とした。
「今回のように横のつながりで制作会社が連携して制作することは珍しい経験となりました。それぞれの良きところで仕事ができたと思います」と長汐氏。「今回のようなケースは非常に重要だと考えています。デジタルとアナログのやり取りは、われわれ企画側がハンドリングするよりチームとして直接やり取りした方がスムーズに上手く良いものが出来上がると実感しました」と木村氏。筆者としては、すでに素晴らしいモデルのベースができていたところからデータを引き継がせていただけたので、後はいかに華やかなステージ衣装をフィギュアとして再現するかに注力できた。今回の『アイカツ!』プロジェクトではそれぞれのアーティストが得意とする部分が十分に活かせるチーム環境があり、そこに参加させていただけたことが何より良い経験となった。なお、『ソレイユVer.』に関しては鋭意企画が進行中であるので、続報を楽しみにお待ちいただきたい。
AIKATSU 007-1:ZBrushでのモデリング
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『冬制服Ver.』は大きなリボンが頭のてっぺんで結ばれているため、後ろ髪パーツにリボンをはめ込んでいるが、『ソレイユVer.』ではカチューシャとなり、前髪パーツに飾りを移す必要があった。そこで前後の髪パーツを読み込み、後ろ髪パーツのリボン部分を平らにならしてリボン穴を埋め、前髪パーツにカチューシャのバンド部分を新たに作成した。その後飾りを別パーツではめ込むことができるように嵌合部を作成するが、前髪パーツの厚みはそれほど大きくないため、飾りを差し込む部分は強度を考えて無理のないギリギリの調整を行なっている
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『冬制服Ver.』の上腕パーツは制服のシワの凹凸が表現されているが、『ソレイユVer.』では肌が露出されている上、二の腕部分に衣装のフリルが入るデザインとなっていた。そこで肩や肘の嵌合部分をそのまま使用できるように、上腕パーツを読み込んで制服のシワをいったん均等にならし、形状を整えてベースパーツを作成する。そこから制服の厚み分をなくして女性らしい肩に見えるように形状を細めに調整、最後に衣装のフリルを追加し凹凸をブラシで整える。このフリルは脇で胴体と繋がっているデザインのため、脇の付け根まで一体感が出るよう調整するのがポイントだ
AIKATSU 007-2:完成と比較
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『冬制服Ver.』と『ソレイユVer.』を並べた比較画面。衣装デザインが異なってもシリーズとしの統一感、同じキャラクターであることがしっかり認識できるように各部位の長さやニュンアスを整えている。また『ソレイユVer.』はステージ上でより華やかな印象となるように、衣装のボリューム感を常に意識した
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『ソレイユVer.』の完成イメージ。
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モデルの完成後、全てのパーツをZBrushに読み込み、最終確認とZpluginの3D PrintExporterを使用して全てのパーツをSTLフォーマットで書き出す
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3-ExportのSTLボタンで表示されているパーツを一気に別々のSTLファイルとして書き出すことが可能だ。その際、SubToolパネルのパーツ名がそのまま反映されるので、defaultのままになっているパーツがあれば画像のように名前を書き替えておくといいだろう
『ソレイユVer.』のパーツ展開図。『冬制服Ver.』と共通して使用する緑のパーツ数は52パーツ。『ソレイユVer.』のみで使用するピンクのパーツ数は33パーツとなる
EVENT「TAMASHII NATION 2015 舞台」
こだわりのステージもデジタルですっ!昨年10月30日(金)から11月1日(日)にかけて、秋葉原UDXおよびベルサール秋葉原の2会場で「TAMASHII NATION 2015」が開催された。"TAMASHII NATION"とは、多数のフィギュアが発表・展示されるバンダイ コレクターズ事業部主催の非常に大きなイベントである。その中のヒロインフィギュアコーナー正面にはスターライト学園を再現したジオラマが用意され、『星宮いちご』、『霧矢あおい』、『紫吹 蘭』の『冬制服Ver.』の3人と、初お披露目となる『ソレイユVer.』の3人の参考出品がそれぞれ展示された。背景には劇中のライブで歌われた『ダイヤモンドハッピー』のステージも再現されていた。実はこのジオラマも、ほとんどデジタルによって制作が進められている。
「いつもだと手でプラスチックを切るなどしてイチからセットをつくっていますが、今回はCG上でモデリングして3Dプリンタで出力しています。3Dプリンタは所有しているObjet Edenを使用し、仮出力と同じ状態の無垢で出力してそれに塗装を施しました。骨組みも簡単なもので、つくりとしてはシンプルにできていますが、"愛"ゆえに観覧車も動きますし"コーヒーカップは回らないんですか?"、"メリーゴーランドは?"、"モニタは?"と様々なものを作り上げていきました。ある程度時間はかかっていますが、デジタルを使ったことでイチから手でつくるより早く作成できましたね」と木村氏は話す。
現在も絶賛進行中であるS.H.Figuarts『アイカツ!』シリーズについて木村氏に感想を聞くと「個人的に『アイカツ!』のキャラクターをずっとやりたいと思っていて、別途新素体もつくりながら、美少女をバンダイらしいやり方でかわいくできないか試行錯誤しながら取り組ませていただきました。今作は新素体の機構でつくる初のS.H.Figuartsシリーズの美少女フィギュアとなります。今までの素体とは考え方が異なるフィギュアになっていると思いますので、ぜひ手に取っていただければと思います。企画的にわがままを言って、そのわがままを実現してくれるアーティストたちに頭が上がらない状態ですね」と話してくれた。
AIKATSU:CGモデル(小物)
『ダイヤモンドハッピー』のステージがそのまま再現されたこだわりのステージは、イベント会場で多くのファンの注目を浴びていた。各アイテムにはモーターが組み込まれており、全て可動するしくみだ
ステージ後ろのメリーゴーランドも観覧車ももちろん可動する
AIKATSU:ステージ
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展示全体のレイアウトを検討しながらモーターの組み込みを前提としたステージ全体の設計を行う。外形のモデリングにはRhinocerosとSOLIDWORKSを使用し、全体で約2週間の制作時間を要した。劇中ではかなり大きなストラクチャーとして描かれているため、窮屈にならないようにできる限り大きく、そのバランス感を大事にしたこだわりのステージとなっている
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実際に会場で展示されたときの写真。使用した塗料はアクセル塗料で、着彩にかかった期間はステージ全体で4日間。原作やキャラクターの雰囲気に合わせた色味を再現するように「できるだけポップで賑やかに」をテーマとして作成されている
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S.H.Figuarts
『星宮いちご』(中)
『霧矢あおい』(左)
『紫吹 蘭』(右)
※各、冬制服Ver.
シリーズ:S.H.Figuarts
原作:『アイカツ!』
発売予定日:
2016年5月27日(金)『星宮いちご(冬制服ver.)』
2016年6月 『霧矢あおい(冬制服ver.)』
2016年7月 『紫吹 蘭(冬制服ver.)』)
価格:5,400円
対象年齢:15歳以上
全高:約130mm(『星宮いちご』&『霧矢あおい』)、約135mm(『紫吹 蘭』)
材質:ABS、PVC製
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製品名:『ボディくん』、『ボディちゃん』
シリーズ:S.H.Figuarts/発売:2016年4月
価格:4,320円(『ボディくん』&『ボディちゃん』、それぞれPale orange ColorVer.)、6,480円(『ボディくん DX SET』&『ボディちゃん DX SET』、それぞれGray Color Ver.)
全高:約150mm(『ボディくん』)、 約135mm(『ボディちゃん』)
材質:ABS、PVC製
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