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進化した可動美少女フィギュア『S.H.Figuarts 星宮いちご(冬制服ver.)』

進化した可動美少女フィギュア『S.H.Figuarts 星宮いちご(冬制服ver.)』

より広い可動域、より美しいシルエットを実現した美少女フィギュアが誕生した。今回は企画から新素体の開発、そしてシリーズ最新情報やイベントのバックグラウンドなど、様々な視点からデジタル造形の活用術を紹介する。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 213(2016年5月号)からの転載となります

TEXT_永岡 聡(lunaworks
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

『アイカツ!』フィギュア始まりますっ!

S.H.Figuarts『アイカツ!』シリーズは、原作ファン待望となる初の可動フィギュアだ。企画の起ち上げから商品化まで約3年の月日を費やしている。その経緯をバンダイコレクターズ事業部・木村覚志氏は「『アイカツ!』という作品に目をつけ、企画をかなり以前から進めていました。また、これとは別に新しい可動フィギュアの素体をつくるプロジェクトも進行しており、この『アイカツ!』シリーズでは、その素体を使用しての商品化となっています」と語る。

新素体を作成するまでにいたったというシリーズ第一弾が、『星宮いちご 冬制服Ver.(以下、いちご 冬制服ver.)』である。原型のディレクションを担当したのは、GB2の長汐 響氏だ。「基本的に僕はアナログ原型師ですが、アナログもデジタルも使いながら原型制作をしてきましたので、そこを見込まれたのではないかと思います。本作のようにアナログ、デジタル両方からの制作は珍しいですね」と長汐氏。「人間っぽさがあり、ロボットみたいに硬いものではないので、キャラクターをCADでモデリングすることは難しいです。ある程度柔らかい抑揚が必要なので、デジタルのみではなくアナログもしっかりわかる長汐さんにディレクションしていただきました。原作もCGのキャラクターが活躍するアニメですから、CGもアナログも精通してディレクションしてもらえることが大事と判断しました」と木村氏。

今作は、新しい関節構造をもつ進化した美少女可動フィギュアを実現するために様々なアーティストが携わり、英知を結集していることは特記すべきだろう。『アイカツ!』シリーズのディレクションを担当した長汐氏を筆頭に、新素体の可動機構をデジタル・アナログの併用で作り上げた原型師の宮下憲一氏、『いちご冬制服ver.』の原型をZBrushで作成したT氏、関節機構を本作用に調整したデジタルファクトリーの三橋豊彦氏が加わった。このチームが従来の可動フィギュアとは一線を画した新しいフォーマットのフィギュアを生み出したのである。

STEP001 美少女可動フィギュアの企画

フィギュアとしてのプロポーションを考えるっ!

本企画最初の作業は、目指すフィギュアの体型バランスをいかに落とし込むかを探し出すことであった。「アニメのキャラクターデザインをそのまま商品化するわけにはいきません。フィギュアなりのプロポーションというものがあって、劇中の印象と、手に取ったときの印象は全然ちがうものになります。手に取ったときに、このキャラクターがどれくらいのプロポーションであると気持ち良いかというところを最初に画像で探し始めました。頭の大きさだったり、目の大きさだったり、体全体と足の長さだったり、そういったプロポーションを画像上で割り出して調整をしていくのです。そこが決定してからようやく原型制作に取りかかります。特に『アイカツ!』のキャラクターは足が長いため、それをそのままつくると足が長すぎるフィギュアになってしまい、可動フィギュアとしても遊びづらいものとなってしまいます。線も細すぎるところがありますので、感覚論にはなりますが、そのあたりのバランスを上手くとるために、このような作業が最初に必要となるのです。こうしてできた画像が最終的なフィギュアのゴールとなるのでそこをしっかり共有しておき、フィギュアができてから"やっぱりちがう"ということにならないように最初に固めておくことが大切ですね」と木村氏は語る。

AIKATSU 001-1:フィギュアのバランス

プロポーションの参考に作成していた資料の一部。アニメのキャラクターデザインや劇中に登場する作画はもちろんのこと、現在発売されている他の作品のフィギュア写真も交え、様々なものを参考にしながら画面上で伸ばしたり縮めたり加工を行い、求めるバランスに近づけていく。情報量が多いドレス衣装の画像もキープしておきながら、今回の商品に最も合ったバランスを導き出すのだ


STEP002 キャラクターモデリング①

アナログの目の重要性とデジタルの強みを活かすことっ!

『いちご 冬制服ver.』のプロポーションを決定する間に、裏では新素体の開発が別途行われていた。そこで今作は、モデリング初期では簡易的に関節が入ることを想定しながら、各部位のパーツの形状出しを進めていた。『いちご 冬制服ver.』の原型を担当したT氏もデジタルとアナログの両方を担当できる原型師だ。そのため、髪の毛などニュアンスの難しい部分は数回出力をくり返し、出力のたびに「ここを削った方が良いのではないか」と手で調整したものを3Dスキャンしてデジタルに戻し、トライ&エラーをくり返しながら造形の精度が高められた。「手にもったときの感覚は非常に大事です。ここはアナログ原型師さん的な感覚が必要ですね」と木村氏。「最終的に立体物が完成形の場合は、アナログの原型師でなくてもアナログを見なれている目というのは必ず必要になると思います」と長汐氏も語る。

新素体の関節機構が完成すると、デジタル化した関節を読み込み、その造形を各パーツに当て込みながらさらに調整を加える。このようなやり方ができるのは、正にデジタルの強みと言えよう。例えば、1mm軸を移動することは可動フィギュアにとって大変重要な意味をもち、デジタルでは0.1mm単位でも正確に動かすことができる。手で持った際に味わえるアナログの気持ち良さとデジタルの正確さ、その両方を持ち合わせた今作の精度は非常に高い。

AIKATSU 002-1:ボディ

ZBrushの作業画面


目標となるバランス資料を配置し、画面を透かしながらプリミティブ形状などを配置してパーツの形を調整していく。横には出力サイズの目安となる定規を出している



  • 可動フィギュアのため、Transpボタンを押してSubToolの不透明表示を調整しながら、flip機能などを使ってパーツの厚みと可動域を確保する



  • 片側をある程度完成させたら実際のジョイントを合わせて調整を行う。それぞれのジョイントを色分けしてSubTool上で視認しやすくし、鏡面コピーで反対側も進めていく

AIKATSU 002-2:監修と修正



  • ジョイントを入れ込んで嵌合部の調整を終え、いったんの完成となる。この時点で画像監修に持ち込まれた。監修では腰の幅を狭く、胸の起伏を小さく等のコメントが入り、それに基づいて修正作業を進めていく



  • 各所の修正を終え、仮出力しながらアナログとデジタルのデータ調整を行い、完成となった画像がこれだ。監修を終えたモデルはメリハリが整い、よりシャープな印象となっている

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