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進化した可動美少女フィギュア『S.H.Figuarts 星宮いちご(冬制服ver.)』

進化した可動美少女フィギュア『S.H.Figuarts 星宮いちご(冬制服ver.)』

STEP005 仕上げ

『アイカツ!』好きによる『アイカツ!』好きのためのフィギュアっ!

出来上がった新素体の関節機構をいよいよ『アイカツ!』のフィギュアに移植する。「アナログの新素体をスキャンした後、関節をGeomagic Freeformに読みこんで表面を綺麗にしていきます。スキャンも一度では終わりません。まず新素体を組み立ててマスキングテープで固定した状態でスキャンします。その後、パーツを全てバラバラにして再度スキャンします。スキャンすると位置情報がデータ上と微妙にズレてしまいますので、マスキングテープで固定して撮ったスキャンデータをアタリとして、これが正位置だというところを決めてから個別に撮ったパーツをデジタル上で組み立てていきました。後はデータをいじりつつ、どのくらい曲がるかを感じながら調整して仕上げます」と三橋氏。

関節は新素体からの流用となるが、本作のキャラクターに合わせて肩幅を狭くし、強度と渋みを確保するために胸部のボールジョイントの形状を変更し、膝の角度や足首のジョイント軸の位置と形状を調整して足を綺麗に閉じられるようにするなど、『アイカツ!』シリーズに転用するための変更点は多く存在する。新素体の基本的なコンセプトは変えないように、使用する関節機構をキャラクターに合わせて再調整していくのだ。「デジタルによってつくり方は変わり進化していますが、調整に関するこのようなアイデアは、実際に手でカシャカシャと触りながらでないと出ないと思います。そういった意味でもアナログの経験なり視点なりは必要です。デジタルフィギュアといえど手で触ることは大事なのです」(木村氏)。また「今作は『アイカツ!』好きによる『アイカツ!』好きのためのフィギュアです。『アイカツ!』好きじゃなくても動かしてみるとどの角度からもかわいくて、こんなに動くのかと、触れば触るほど良さを感じられると思います。ぜひ手に取って楽しんでいただきたいですね」とバンダイコレクターズ事業部の大木美寿紀氏も語ってくれた。

AIKATSU 005-1:関節の移植



  • 読み込んだパーツは作業の都合上、中央の関節を基点に正面方向から垂直になるよう移動と回転を行い、左足中心に進められた。灰色はオリジナルデータをそのままインポートしたもので、緑色は作業上移動したもの



  • その後、太ももとすねのパーツの移動と回転を行い、太ももとの干渉部分の削りを平均的にした



  • 2軸の機構をもつ関節は3パーツで構成されており、その全てにおいて変更を加えていく。変更点は以下の通り。①もも側の回転軸の抑制②もも側に刺さっている部分を中心から回転できるように加工③すね側の回転軸の変更④受けパーツとすねの関節パーツの形状の変更



  • すね側の軸を中心に0~125度回転できるように関節を調整した。足を曲げたときのみすね側の膝頭が入っていた部分にスペースができることにより、もも側の軸を中心に0~-10度回転することで膝のつながりを良くしている

AIKATSU 005-2:工場修正と出力品チェック


修正指示が書かれたメモ書き。肩の接着面積を増やすための構造変更と、各関節に使用するジョイントの形状や角度に関して、見た目と遊び方両方の視点から細かい指示が入っている



  • 胸部の関節機構の変遷。手順は①胸部上面の肉厚を増加し、接合を変更②胸部内部の関節機構を3軸構成から2軸構成に変更し、ボール受けをドーナツ型から半球に変更③ボールジョイントの拡大と胸部前面の接合部分を変更



  • 腕を曲げたときに関節と上腕が接触する部分がゆるいため、関節が抜けやすくなっていた。そこで腕を曲げたときに発生する干渉の軽減を行うため、上腕を削り、腕がより曲がるように変更している


首関節のボールジョイントを差し込みタイプに変更した。それに伴い、後頭部の接合部とあごを曲げるためのクリアランスも調整している

AIKATSU 005-3:出力品と完成モデル



  • 途中経過の仮出力品。簡易的な出力でも実際に出力をしてみなければ正解が見えない。実際に手で触れることは非常に大切だ。「チェック時には画像も送りますが、基本的には出力したもので長汐氏とやりとりしていました。仮出力に使用した3DプリンタはObjet Edenです。精度は高いですよ」(三橋氏)。「特にバランスをみるときは使いますね。頭をちょっと大きくしてとか、髪の毛を小さくしてとか、手を少し大きくしてなどは可動する必要がないので、無垢の状態で出して確認します」(木村氏)



  • 『いちご 冬制服ver.』の完成組み立て図。手の差し替えパーツや付属パーツも表示されている


『いちご 冬制服ver.』のパーツの展開図。3Dプリンタでの出力時には、総点数と各パーツの形状確認に使用することもできる。今回作成した『いちご 冬制服ver.』の原型パーツ数は全部で83パーツとなる

STEP006 制服からドレスへ

『冬制服Ver.』から『ソレイユVer.』へドレスアップっ!

『冬制服Ver.』の制作が進む中、次のアイテムとして3人の『ソレイユVer.』の企画がもち上がり、イベントでの参考出展を目的とした原型制作を筆者、永岡 聡が担当することになった。『ソレイユVer.』を選んだ理由は「劇中においてみんなが大好きなユニットであり、ライブでも楽曲『ダイヤモンドハッピー』は盛り上がります。何より一番パワーが強く、商品としても次の展開が想定しやすいことから選びました」と木村氏。

『ソレイユVer.』を制作する前に商品仕様の資料と共に長汐氏より『冬制服Ver.』のSTLデータを全て提供していただき、素体の骨組みは流用する方向で進めた。使用したソフトは主に3ds MaxとZBrush。同じ素体を寸分の差もなく、そのままデータ共有できることはデジタルならではの強みと言えるだろう。3ds Maxは全体のモデリングとパーツ分割や嵌合部の制作に使用し、ZBrushは『冬制服Ver.』のパーツから形状変更できる部分での作業とSTLへの書き出しに使用している。

2つの衣装デザインは大きく異なるが、シリーズとして統一性をもたせられるように頭身のバランスは変更せず、しかしステージで登場する華やかな衣装であることからボリューム感や装飾はできるだけ再現するように意識した。『ソレイユVer.』の衣装は形状もデザイン柄もフィギュア化するには複雑であったことから、あらかじめ可動箇所を見越し、どのようなパーツ形状にするか検討も重ねている。特に首まわりでは、『冬制服Ver.』の制服分の厚みが『ソレイユVer.』では素肌となるため、制服の厚み分を薄くする必要があった。しかし可動部位で内部構造もあるため、女性らしい肩幅と柔らかさを表現することと強度を維持する厚みを確保することの両立は困難であった。そこで、素体を共有していることから構造上同じにしなければならない個所やパーツを繋ぎ合わせるピン形状の太さや角度を『冬制服Ver.』に合わせて作成し、強度が足りず折れてしまわないように配慮している。そして『冬制服Ver.』へ簡易的にローポリゴンでモデルを乗せて、可動が入る部分を分割していきながら、調整を進めた。

AIKATSU 006-1:初期のメモ

初期段階で参考用にいただいた資料を基に、デザインや可動に合わせ、どこでパーツ分けをするか、『冬制服Ver.』からの変更点はどこかなど、あらかじめチェック事項を書いたメモ書きのひとつ。デザインに合わせてモールドを掘るか、印刷やデカールでの対応とするかなど、できるだけ具体的に記した。バンダイ側のメモへの回答を受け、分割ラインを決めた後、仕様に合わせてモデリングを開始する


AIKATSU 006-2:モデリングの準備

『冬制服Ver.』のSTLデータを全て3ds Maxに読み込む。軸はすでに揃っていたため、組み立てはスムーズであった。使用するパーツや参考用のアタリパーツを必要に応じて表示/非表示できるようにレイヤー分けを行う。必要なパーツにはキーフレームを打っておき、次のフレームで形状確認やモデリングがしやすくなるよう、位置や角度を調整して準備を整える


AIKATSU 006-3:素体を共有するための調整

本作は素体を共有しているため、新作パーツもできるだけ同じ組み立てができるように配慮する必要がある。衣装デザインは大きく異なる部分が多いため、全て同じとはいかないが、構造上で同じにしなければならない箇所を優先的に作成した後、『冬制服Ver.』のパーツを参考に必要なピンの太さ、長さ、角度を調整して配置した。後は必要に応じてオリジナルの嵌合部分も作成していく


AIKATSU 006-4:3ds Maxでのモデリング


モデリング時は必要な素体の骨組みのみを表示し、骨組みに干渉しないようスペースを確保しながら作業する。スカートは裾の厚みを薄くしながら腰部分の厚みを確保できるように調整を行なった。フリルは量産を見越し、タンポ印刷が可能になるよう柔らかい印象を損なうことなく凹凸が出すぎないように形状を整えている



  • 前腕部のパーツはほぼ『冬制服Ver.』と同じだが、『ソレイユVer.』では肌が露出するため、強度が必要な関節部分の太さは変更せずに、腕の印象が少し細くなるよう調整している。また袖部分が共に別パーツとなるため、ストッパーの形状に合わせで抜型を作成し、袖パーツをモデリングした後、その抜型をProBooleanで抜き出して嵌合部を作成した



  • ブーツでは、すねの長さや形状の雰囲気が『冬制服Ver.』と同じになるようにおおまかなベースモデルを作成した後ディテールを整えていく。膝の嵌合部は『冬制服Ver.』がそのまま使用できるように、必要な部分を切り出して『ソレイユVer.』のブーツと合わせる。足首の嵌合部はブーツらしい太さで足首が見えすぎないよう長くなっているため、『冬制服Ver.』をアタリにして抜型をつくり嵌合パーツを作成した

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