
CG・映像クリエイターにとって、モニタは必須ツール。色の表示や解像度には目がいきがちだが、用途によって適切なモニタも変わってくる。その観点で言うと、アニメーション作業にとって最適なモニタとは?
今回は、セガでモーションデザイナーとして活躍する野澤 紬氏にBenQのデザイナー向けモニタ最新モデル「PD3226G」を試してもらった。正確な色再現性に加え、最高リフレッシュレート144Hzや応答速度1ms(GtG)などを備えた本モデルは、アニメーション作業にも適している。
CGアニメーションの中でも、キャラクターモーションを極めたい

野澤 紬/Tsumugi Nozawa
株式会社セガ
第3オンライン研究開発デザイン1部 第1デザインセクション
デザイナー
『PSO2 ニュージェネシス』(以下、PSO2:NGS)などの制作を手がけたセガの第3オンライン研究開発デザイン1部 第1デザインセクションにて、開発中の新規タイトルなどのモーションデザインを担当している。映像系のCGプロダクションでの勤務を経て、2018年にセガに入社。
CGWORLD(以下、CGW):
野澤さんの現在のお仕事内容を教えてください。
野澤 紬氏(以下、野澤):
モーションデザイナーとして、バトルモーションの制作を中心に担当しています。モーションキャプチャデータをベースに動きを付けることが多いです。
出来上がったモーションを他部署へパブリッシュするためのデータ整理や、ゲームへ組み込むためのチェック作業なども担当しています。
CGW:
モーションデザイナーというお仕事の魅力は、どんなところですか?
野澤:
学生時代からCG制作でアニメーションが一番好きでした。最初に入社した会社でもCGアニメーターとして活動していて、カメラワークも含めたカット全体の動きを付ける作業を担当していました。絵コンテから動きを付けるといった演出に近いお仕事も担当できてそれはそれで楽しかったのですが、ゲームのお仕事を通じてキャラクターモーションを極めたいと思いました。
今は、ひとつひとつのモーションにしっかりと取り組めるので、とてもやりがいがあります。
モーション作業では、ゲーム機でのチェックも必須
CGW:
モーション作業に使われているツールを教えてください。
野澤:
モーション作業は、基本的にMayaで行なっています。最近は、iPhoneをカメラとして利用できるマーカレスモーションキャプチャシステムもよく利用しています。あとは、ゲームへ組み込む作業などにUnreal Engineも使っています。
CGW:
普段はどのようなモニタをお使いですか?
野澤:
24.1インチのカラーマネジメントモニタをデュアルで使っています。解像度は1,920×1,200で、内蔵ではありませんが、外付けでハードウェアキャリブレーションにも対応しているモニタです。

CGW:
今回試していただいた、BenQのデザイナー向けモニタ「PD3226G」の第一印象を教えてください。
野澤:
見た目がすごくスタイリッシュですよね。高リフレッシュレートだから、MayaやUnreal Engineの作業画面もすごく鮮明でした。
Mayaで動きを付けるときは60fpsで固定しているので、それよりも速いfpsは必要ありません。ですが、ゲームの制作においてデータROMを使って実機で見え方をプレイしながら確認することは日常的に行なっています。
ゲームでは60fps以上の速さで表示されることはよくありますが、普段使っているモニタでは確認することができません。今はゲームプレイができる別スペースでチェックしているのですが、移動する手間があるし、他の人が使っていて確認できないこともあります。
PD3226Gが自席にあれば、作業をしながらゲームプレイのチェックができるのでとても便利だなと思いました。

広色域と高リフレッシュレートを両立。ゲーム開発にもオススメ
CGW:
PD3226Gは、Display P3/DCI-P3 カバー率95%、sRGB/Rec.709 カバー率100%と、広色域。表示色は約10億7,000万色であることも特長です。色の表示については、いかがでしたか?
野澤:
モーション作業に限れば、正確な色味はそれほど重視しません。ですが、先ほどお話したように最終的なゲームグラフィックとして確認することが不可欠です。
Mayaで動きを付けていたときは良いと思っても、色々な装備を付けたゲームプレイの動きでは印象が変わる場合があります。「剣をかまえたときの姿勢をこっちに変えた方が良いかも?」と思って修正することはよくあります。
ほかにも背景アセットのルックが完成形になったり、エフェクトが加わったことでモーションの調整が必要になることもあります。正しいグラフィックで表示できるPD3226Gは、理想的なモニタだと思いました。
一般的なゲーミングモニタはグレア(光沢)仕様が主流ですが、そうしたモニタはギラギラし過ぎていて、長時間作業を継続することも多い3DCG制作の作業には向いていません。
今回使わせていただいたPD3226Gはノングレアで長時間使っても目が疲れにくいと思ったので、ゲームデザイナー向きだと思います。

www.benq.com/ja-jp/campaign/aqcolor.html
ケーブルの抜き差しがストレスなくできた
野澤:
それから、今回試用したモニタはケーブルの抜き差しがやりやすかったのもよかったです。
実はモニタやPCにケーブルをつなげることに苦手意識があるんです。特に一度設置した後だと、窮屈な姿勢で埃まみれになるので(苦笑)。
PD3226Gは、背面のHDMI端子にケーブルを挿すときもスペースに余裕があるので、ストレスがありませんでした。


専用ソフトウェアを使えば、簡単にカラーマネジメントやディスプレイ設定ができる
CGW:
普段お使いのカラーマネジメントモニタにおいて、キャリブレーションはどれくらいの頻度で行われていますか?
野澤:
年に1度のペースで、私が所属している部署のデザイナー全員がキャリブレーターを使って順番に行なっています。
全員が同じ色で作業することは大事なので、カラーマネジメントがとても重要なことは理解しているのですが、専門的な印象があってちょっと構えてしまいます。
CGW:
BenQのキャリブレーションソフト「Palette Master Ultimate」を使っていただいた印象はいかがでしたか?
野澤:
UIがシンプルで分かりやすかったです。少ない手順でカラーマネジメントができるのは、専門的な知識のない私にはとてもありがたいです。
あとは、モードの切り替えが簡単なのもいいですね。例えば、ゲームのオープニングなどのリアルタイムデモなどのモーションを制作しながら、カメラやライトも操作するカットシーンデザイナーなどの演出に関わる職種の方々は、正しい色でモーションを追い込みたいのですが、正しい色を見続けてモーション作業をすると目が疲れてしまうので、作業中は暗くして、チェックの時は正しい色で見るといった使い方ができそうです。

CGW:
PD3226Gには、ワイヤレスのホットキーパックが同梱されています。使ってみていかがでしたか?
野澤:
シンプルな操作で簡単に設定できました。モニタ制御用のソフト(Display Pilot 2)もUIが見やすくて、迷わずに設定することができました。アートディレクターの方など、様々な仕様のデータを扱うクリエイターさんは特に重宝すると思います。


www.benq.com/ja-jp/monitor/software/display-pilot-2.html
CGW:
最後に、PD3226Gの全体的な印象を教えてください。
野澤:
3DCGなどのクリエイティブワークに適した仕様であると同時に、高リフレッシュレートなどゲームグラフィックにも適したモニタなので、私のようなゲームデザイナーには特にオススメだと思いました。
あとは4K対応で、物理的なサイズも31.5インチと大型なところも魅力です。ゲームもこれからさらに高解像度になっていくと思うので、こんなモニタが常時使えるようになるととても嬉しいですね。

BenQ「PD3226G」

- サイズ/パネル/バックライト
31.5インチワイド/IPS/LED
- 筐体色
ホワイト
- 解像度
4K(3,840×2,160)
- 表示色
約10億7,000万色
- アスペクト比
16:9
- コントラスト比
1,200:1
- 応答速度
1ms(GtG)
- リフレッシュレート(垂直走査周波数)
24〜144Hz
- 本体サイズ
約W714.3×H486.3〜636.3×D242.0(mm)
お問い合わせ
ベンキュージャパン株式会社
テクニカルサポートセンター
TEL:0570-015-533
※月曜から金曜 9:30~17:00(土日祝日・ベンキュージャパン指定日を除く)
e-mail:support@benq.jp
TEXT & EDIT_NUMAKURA Arihito
PHOTO_弘田 充