<2>観た人が「行ってみたい」と思える作品世界を目指して〜瀬下寛之監督インタビュー〜
※本記事は、月刊「CGWORLD + digital video」vol. 226(2017年6月号)からの転載となります
INTERVIEW_岸本ひろゆき
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)
© 弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
ーー劇場アニメ『BLAME!』について、まずはどのようにスタートしたのかお聞かせください。
瀬下寛之監督(以下、瀬下):『シドニアの騎士』の中で登場人物がテレビを見ているシーンがあるのですが、そこに映す番組について当社エグゼクティブプロデューサーの守屋(※)が「『BLAME!』が良いんじゃないか」と。そこで『シドニアの騎士』の合間を縫って脚本・コンテを仕上げて、勢いでロゴまで作って......完全にパロディのノリでしたね(笑)。そうして『BLAME! 端末遺構都市』が完成したのですが、スタッフに恵まれてふりきれた仕上がりになり、関係各所からの好評を得て映画化へと動き出したのです。企画の段階から弐瓶先生には積極的にご協力をいただいています。毎週のようにアイデア出しや脚本会議にご出席いただき、劇場映画版としての『BLAME!』の世界を一緒に構築していきました。この映画はまちがいなく弐瓶先生の作品だと言えます。
※:本作でエグゼクティブプロデューサーを務めた守屋秀樹氏(ポリゴン・ピクチュアズ取締役)のこと
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PHOTO_弘田充 / Mitsuru Hirota
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瀬下寛之/Hiroyuki Seshita
1967年生。1989年リンクス入社。映画『河童』、『パラサイトイブ』、やTVCM、ゲーム映像など、様々な分野のCG/VFX制作に従事。1997年渡米、スクウェアUSAの映画『ファイナル・ファンタジー』(2001)にてアートディレクター。2000年帰国、スクウェア(現スクウェア・エニックス)にて、『ファイナルファンタジーX』(2001)、『ファイナルファンタジーXI』(2002)、『キングダムハーツ』(2002)、『ファイナルファンタジーX-2』(2003)などのゲームムービー制作のデザイナー/VFXスーパーバイザー。2004年、カシオエンターテイメント株式会社設立に参画し、エグゼクティブ・ディレクターを務める。松本人志監督作品『大日本人』(2007)、『しんぼる』(2009)にてVFX監督を担当。2010年、ポリゴン・ピクチュアズに入社。『シドニアの騎士』(2014)副監督、『シドニアの騎士 第九惑星戦役』(2015)監督、『亜人』(2015~2016)総監督、『BLAME!』(2017)監督。次回監督作として、アニメーション映画『GODIZILLA』がひかえている。
@HSeshita
ーー『シドニアの騎士』劇中劇からの劇場アニメ化ですが、今回新たに挑戦したことはありますか?
瀬下:われわれは自分たちの画材である3DCGに長所・短所含めてこだわりをもっています。ケレン味や感情表現については手描きアニメと比べて追いついていない面も多々ありますが、空間表現はこの画材が得意とするものです。観客の没入感や臨場感を高めるため、場面となる空間の説得力は3DCGならではの手法でつくり込んでいます。また、ライティングは特にこだわっていて、背景美術やキャラクターのトゥーン表現においても、これまでになくマニアックにライティングを追求できました。背景は美術監督・滝口(比呂志)さんとそのチームが超絶的に素晴らしい仕事をしてくれています。また、レンダリングについては新開発の「Maneki」も大きく貢献しています。ですから、挑戦というよりは、これまでの継続的な追求の結果としての進化という感じですね。
image courtesy of Polygon Pictures
ーーPPIの持ち味である3DCGという画材について、もう少し詳しくお聞かせください。
瀬下:われわれの取り組んでいるアニメは、いわゆる日本の作画アニメをCGに置き換えて制作するという方向性とは異なります。作画アニメ作品は大好きで、強くリスペクトしていますし、かつCGスタジオという立場で、トゥーンシェーダという技術、トゥーンルックという表現手段に長年一貫して取り組んでいますが、数年ほど前からCGアニメ作品が増える中で、「セル調のCGをつくるスタジオ」と括られるのには、少し違和感があります。むしろ、将来的には、アメコミやグラフィック・ノベル、バンド・デシネをそのまま映像化し、実際に行ってみたくなるような空間をつくりたいのです。物語の時空のなかで起こっていることをその場にいて覗き見る、そういった「体験」をつくっていきたいと思っています。
image courtesy of Polygon Pictures
ーー劇場アニメ『BLAME!』をご覧になるファンにメッセージをお願いします。
瀬下:この映画で、もう少し広く『BLAME!』の壮大で魅力的な世界観を知ってもらえたらと思います。ハードな世界観やアクションの中に、誰もが共感できる人間ドラマがありますし、弐瓶先生と共に、行ってみたいと思ってもらえるような世界をつくることができたと思いますので、ぜひ劇場に"体験"しに行ってほしいですね。
© 弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
info.
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劇場アニメ『BLAME!』
5月20日(土)より2週間限定で全国公開!
原作:弐瓶 勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修:弐瓶 勉
監督:瀬下寛之
副監督・CGスーパーバイザー:吉平"Tady"直弘
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:クロックワークス
製作:東亜重工動画制作局
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