Topic 2 3DCG&ポストプロダクション
目指す表現とデータ仕様に応じたDCCツールの使い分け
東京上空・遊覧シーンの制作にあたってはCAD CENTERの協力により、同社が開発する3D都市データ「REAL 3DMAP TOKYO」(以下、R3DMT)全域のデータが提供された。「R3DMTは、東京23区全ての建物を3次元化し、外観のテクスチャや窓ガラスの反射など全ての建造物にマテリアルをアサイン、3ds MaxとV-Rayの組み合わせに最適化させています」とは、R3DMTプロジェクトをリードするCAD CENTERの松本 学TD。都市データはテクスチャを含め30GB程度と大容量だが、区画ごとに作成されているため扱いやすく、広範囲なデータでもVRayEnvironmentFogを用いることでレンダリングコストも抑えることができたという。「社内のメモリ環境では23区全体を一度にレンダリングすることができなかったので、カメラの距離に応じてシーンファイルを分けて近景と遠景で分割してレンダリングを行い、最終的にデプス素材を使って合成することにしました」(平嶋氏)。8Kのレンダリングには1フレームあたり平均1時間半、アップショットでは最大6時間ほど要したという。ライティングにはVRaySun、空はVRaySkyを使用。さらにMayaから出力した雲素材を合成することで空に表情を生み出している。また、冒頭の首都高トンネルシーンは、1964年(東京オリンピック開催の年)から70年代、80年代、90年代、2000年代へとタイムワープするという演出になっており、映像もモノクロのHDから8Kへと高解像度化しながら現在の首都高トンネル(実写パート)へと切り替わっている。「当初は車載カメラで撮影した実写プレートに対して各年代のクルマのCGアニメーションを合成するかたちで考えていたのですが、8Kのトラッキングに手間がかかりすぎること、さらにタイムラプス処理を加えたいという意向から、実写素材をリファレンスに首都高トンネルのモデリングを行いました」(DGI・池本壮志CGIデザイナー)。
オンライン編集にはFlame 2017 Extension1を採用。本バージョンでHELIUM 8K(RED RAWデータ)の読み込みに対応したことが大きかったという。4Kプロキシデータで作業を行い、作業終了後に8Kコンバートするといった手法が採られた。オンライン編集で最も苦労したのがグレーディングの作業だったとか。「半球状スクリーンには反対側の側面に映像が内部反射してしまうという特性があったため、最終的なグレーディングで輝度やコントラストなど微妙なバランス調整が必要でした」(MT・近藤貴弓氏)。
首都高のタイムワープ
冒頭の首都高トンネル内のシーンは、東京オリンピックが開催された1964年から始まり、現代へと徐々にタイムワープするという演出が施されている。「年代のカウントアップに伴い、画の解像度も徐々に上がっていくようなエフェクトを加えました。同じくレンダリング解像度もHD、4K、そして8Kと現代に近づくにつれて解像度を上げています」(平嶋氏)
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トンネルのモデル。高速移動のため自ずと長さが求められたが、実写のリファレンス動画を基にしっかりとモデリング、ライティングが施された
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クルマのモデル。「各年代ごとに特徴的な形状の車種を数種類用意しました」(池本氏)
完成した映像
フルCGによる東京上空遊覧シーン
東京上空遊覧シーンのプリビズ。1月18日(水)の「Sphere 5.2」実機テスト向けに作成された最初のプリビズ
レンズ10mm
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3ds Maxシーンファイル。CAD CENTERから提供されたR3DMTデータは、シーンを開くときとレンダリング時は相応に高負荷だったそうだが、プリビズやその後のカメラワーク調整時は、シェーディング表示でもスムーズに動かせたという
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R3DMTデータは、区画ごとに綺麗に分かれているので扱いやすかったそうだ
後述する、ロゴアニメーション用に背景シーンから書き出したHDRI
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「東京VICTORY」ロゴの元データ。これを3DCGモデル化させた上でアニメーションを作成する
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ロゴのアニメーションはMayaで作成された。「ツールの使い分けは単純に担当デザイナーが使い慣れていることに起因します。ただし、馴染みが悪くならないようレンダラはV-Rayで統一しました」(平嶋氏)
完成形。「ロゴを3Dモデル化する上では、カメラストロークの中で見せ尺を決めておき、そのタイミングで綺麗に見えるよう、なおかつ手前でアナモルフィック演出がネタバレしないように意識しました」(DGI・藤木秀作CGIデザイナー)
花火のVFX
クライマックスの花火エフェクトの作業データ
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3ds Maxで作成したプリビズ。パスコンストレインでカメラをパスアニメーションで作成、球体オブジェクトは花火のアタリである
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花火はParticularで10種類ほど作成。「カメラはOpen Compositor Linkを使い、3ds Maxから読み込んでいます」(藤木氏)
花火とロゴを別素材で書き出し、コンポジット。花火の素材をブラーでぼかし、加算で数枚重ねることでグローを表現(単純にグローエフェクトをかけるよりも仕上がりが綺麗になるとのこと)
Flame 2017によるオンライン編集
Autodesk Flame 2017全体の8Kタイムライン編集UI
同Batch作業UI。タイムラプス撮影した渋谷街頭の実写素材に対して、バレ消し、看板合成、画面合成、グレーディング処理などが施された