>   >  再生回数200万回以上! 実写とアニメーションをミックスしたNulbarich『NEW ERA』の人気MVメイキング
再生回数200万回以上! 実写とアニメーションをミックスしたNulbarich『NEW ERA』の人気MVメイキング

再生回数200万回以上! 実写とアニメーションをミックスしたNulbarich『NEW ERA』の人気MVメイキング

Topic 2 デジタルワーク

社内スタッフで完結できる強み

撮影後、イアリン ジャパン社内での作業は、素材のスタビライズ、トラッキング、アニメーション・CG制作、コンポジットと進む。撮影素材は予算の都合で手持ちカメラになったので、スタビライズが必要になった。どのテイクを使うか選び、粗く繋いだものをスタビライズしてからAfter Effectsでトラッキングしていったという。「AEにmochaの簡易版がバンドルされていたので、時間短縮になりました。ただしジャケットがフレームアウトするところは、データが割れてしまったため、手動で直しています」(渡邊氏)。「普通の実写撮影をしたので、グリーンを抜くときにジャケット部分以外にも瓶などの緑色が抜かれることもあり、マスクを切ったり色の調整をしたりして大変でしたね」(Kevin氏)。

渡邊氏がスタビライズ&トラッキングを行なっている間に、Kevin氏がMV用のジャケットデザインとアニメーションをつくっていく。何十枚ものジャケットは全てKevin氏がデザインしており、アニメーションはKevin氏の頭の中にある動きを1枚ずつ描いている。「完全に手描きで、ありえないくらいの量の線画をPhotoshopで描きました」(Kevin氏)。

着色されたアニメーションはトラッキングをとり終わった実写素材に合成し、エフェクトなども乗せて完成となる。MVは巨大なジャケットが置かれた海のカットからはじまり、カフェや海岸などを経て海のカットに戻り、フレームインした手がジャケットを持ち上げて終わるのだが「絵コンテ上はこんな想定ではなかったのですが、最後1日という頃になってKevinが、手が出てジャケットを持ったらサイズ感がわからなくなって面白くなる、と言ってきたので演出を変えました。手の素材が足りないとなればすぐに社内で撮影できるのは、社内にディレクターを立てているメリットですね」と渡邊氏は語る。

JQ氏がビシッとカッコつけるのが好きではないことから、MVは全体的に自然なゆるさを出している。スッと音楽に入りこめ、しかも負荷がかからない。「出演者が持っているジャケットのデザインやアニメーションは全部ちがいます。例えばレディオを押すとか、海の中を泳いで探す動きは観ていて面白いので、何回MVを観ても新しい発見があると思います」(Kevin氏)。

トラッキング&スタビライズ

mochaの作業画面。MVではアニメーションされるデザインのジャケットを持った出演者が、歌詞に合わせてスッと動いている。実際の撮影では出演者はグリーンの紙を手に持ち、撮影素材をAE上でmochaを使ってトラッキングおよびスタビライズしていった。後の馴染みを考え、キーイング時に表面のシワや汚れなどの質感は残している

アニメーション

アニメーションはPhotoshopのタイムライン上に描かれた

「タイムラインでレイヤーを分けているのでAEと変わりませんね」とKevin氏。タイムラインの中にひとつずつフレームをつくるのは大変なため、アクションを登録して活用することで効率化したとのこと

描かれたジャケットの数々

MVに登場するジャケットデザインは1枚ずつ異なっており、それぞれ歌詞と音楽に合わせてアニメーションが描かれている。「アニメはアニメ、実写は実写と分かれているものが多いですが、このMVでは実写とアニメの違和感がない合成をしています。ミックスメディアというテーマが個人的にすごく面白いですね」(Kevin氏)

音とシンクロするエフェクト



  • MVに登場するカットの一部(完成画)



  • ドラムの音を可視化したエフェクト



  • 同、ピアノの音のエフェクト



  • 同、リズムのエフェクト。「エフェクトは見ていて気持ち良さを感じるように、ボーカルの声や楽器のリズムに合わせて動きを付けています」(Kevin氏)。歌詞と音、そして映像のシンクロはこだわりのひとつだ

ロトスコープアニメーション

MVはナルバリくんが中心になって歌っているようにしてほしいとJQ氏から要望があったため、ロトスコープアニメーションの手法が採られた。撮影ではグリーンバックを敷いて、JQ氏を撮っている。体はそのままロトスコープできるが、顔はガイド用のお面を付けてもらって撮影したものをロトスコープした。お面の部分は特に難しかったという



  • 基の素材



  • ロトスコープ作業中

ロトスコープアニメーション完成版

3DCGによるポイントカット



  • 最初に3ds Maxでジャケットの3Dモデルと水面をつくり、Phoenix FDでジャケットを水の中に置いて水飛沫をシミュレーションした



  • 海面に反射するジャケット部分【画像】は「反射部分だけ白黒で出して実写素材の海の上に乗せています」と渡邊氏。海に置かれたジャケットは非常に海面に馴染んでいる



  • 完成画



  • レンダーパスはジャケットのディフューズ



  • ジャケットのリフレクション



  • ジャケットのスペキュラ



  • 海面のリフレクション



  • 水飛沫

コンポジットによるカラーコレクション



  • コンポジット前



  • 完成画



  • コンポジット前



  • 完成画

トラッキングされた撮影素材は、AE上でアニメーション素材(ジャケットやエフェクト)とコンポジットする。実写素材にジャケットを乗せると、そのままの色では合わなかったため、カラーコレクションで色が抑えられた。またシワや汚れ、文字のような質感が残っていることで、馴染みも良く仕上がっている



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