>   >  海外のゲームスタジオはデザイナーをどのように募集するのか? 課題サンプルも大公開〜GDC 2018レポート(2)〜
海外のゲームスタジオはデザイナーをどのように募集するのか? 課題サンプルも大公開〜GDC 2018レポート(2)〜

海外のゲームスタジオはデザイナーをどのように募集するのか? 課題サンプルも大公開〜GDC 2018レポート(2)〜

<3>レベル&ミッションデザイナー/スクリプター

こちらはMMORPGやオープンワールドのゲームでイベントを制作する仕事になる。課題もシンプルで、特定のゲームに対して新規のイベントを制作するというもの。ゲーム内の特定ミッション2つの間に挟まる内容で、イベントクリアに20分程度を要し、場所や地形などもある程度指定されている。その上で、そのイベントの内容を説明するのに必要な資料を作成し、その資料をもとにプレゼンテーションを行うという内容だ。



また、この会社では他に応募者の経歴を問うものもあったという。過去に手がけたゲームの中で自信作のミッションかレベルを選び、「選択の理由」と「あと2週間あればどのような改善を行うか」を記すというものだ。他に最近のAAAアクションゲームで応募者が優れていると思うミッションかレベルを3点選び、その理由を簡潔に論述するという課題も含まれている。

Buchardt氏はこの課題に対して、テキスト・画像・図表などで30ページほどの回答を作成し、提出したとコメントした。そしてここでも「本当にそれだけの分量が必要なのか」、「その内容はデザインプロセスをしっかりと反映しているのか」という思いに囚われたという。

<4>RPGデザイナー

続いての課題はRPGデザイナーに応募した際のもの。RPGデザイナーとは聞き慣れない職種だが、課題の内容的にはRPGにつきものの成長ツリーやスキルツリーをデザインする職種だといえるだろう。課題は「SF-RPGにおけるアイテム生成システムをデザインし、UnityのGUIツールでモックをつくれ」というもの。デザインするシステムは1つのジャンルで良いが、50時間のプレイに耐えうるボリュームが求められる。さらに、ボタンをクリックすると実際にアイテム生成が進行するといった具合に、どのような体験が得られるのかがわかるようなモック生成が求められる。


さすがに、ここまで過大な内容が課せられたことは他になかったとのことで、Buchardt氏も「自分に合わないと思ったら潔く撤退するのも手」だとコメントしたほどだ。裏を返せば、ここまでの課題を課さなければ絞り込めないほど、多数の応募が集まるスタジオが存在するということになる(またはピンポイントで、そうした職種が早急に必要だったということかもしれない)。いずれにせよBuchardt氏がこのスタジオで働くことはなかったようだ。

<5>マルチプレイゲームにおけるゲームデザイナー

今や欧米圏の大作ゲームでは必須となったマルチプレイ機能。マルチプレイゲーム専門のゲームデザイナーに関する募集課題のサンプルも紹介された。ここでは特定のゲームに関して、銃の反動やカメラシステムについて考えさせる課題や、異なるスキルをもつ10人のプレイヤーを対象に、バランスの取れた2チームをつくるためのチームマッチング機能、特定のゲームにおける新しい対戦モードなどの提示が求められている。また、新たな銃やガジェット、コンバットスキルなどを考えさせ、なぜそれが優れているのか、どういったパラメータが求められるのかといった課題も見られる。


他にスライドでは紹介されなかったが、シングルプレイヤーモード専門のゲームデザイナー職に関する募集課題も紹介された。こちらでは最近遊んだゲームで優れたゲームシステムをあげ、その理由を論述させたり、反対に駄目なゲームシステムの例をあげ、その改善案を示させたりといった内容が見られる。また、単純にパラメータを増やす以外で、武器を強化する/強化したように感じさせるためのアイディアを述べさせるといった課題もある。詳細は公開されている講演資料を参照して欲しい。

<6>お祈りメールの実例


最後にBuchardt氏は企業からのフィードバック例についても紹介した。もっとも個々の応募書類に対してレビューが行われることはほとんどなく、大半は「お祈りメール」が来て終わりか、逆に面接に進むかの二者択一とのこと。「責任者クラスにレビューさせたが、残念ながら面接に進むことは難しいと判断された」などの定型文が一般的で、中には「アメリカで働くためのビザ提供が難しい」などの理由もあったという。心が折れそうになることもあるが、道を信じて精進して欲しいと締めくくられた。

これまで見てきたように、欧米圏ではゲームデザイナーの職種内容によって応募課題もさまざまだ。しかし、共通しているのは「どのような課題を」、「どのような手段で」解決するのか、具体的なアイディアを出して説明させるという点にある。日本の開発現場においても、参考になる事例が多く含まれているのではないだろうか。

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