>   >  進化を続けるSubstance製品の今後と、その特性を活かすアプローチとは~Substance Day Tokyo 2018レポート
進化を続けるSubstance製品の今後と、その特性を活かすアプローチとは~Substance Day Tokyo 2018レポート

進化を続けるSubstance製品の今後と、その特性を活かすアプローチとは~Substance Day Tokyo 2018レポート

<2>Substance Painter マスタークラス

Glauco Longhi/グラウコ・ロンギ氏(シニアスタッフキャラクターアーティスト/SIE Santa Monica Studio)

基調講演の後は、「Substance Painterマスタークラス」と題してGlauco Longhi/グラウコ・ロンギ氏によるクリーチャーのペイント手法が紹介された。ロンギ氏は、Substance Painterを使い始めて4年半、SIEワールドワイドスタジオの拠点のひとつであるサンタモニカ・スタジオでシニアスタッフキャラクターアーティストを務めている。キャリアのスタートは広告代理店で、その頃はCGとは関係なく、エアブラシやシリコン素材を使ったスカルプティングを担当していたという。

ロンギ氏の広告代理店当時の作品

その後、ゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)の制作について、芸術的な側面から解説が行われた。Substance Painterで制作した内容は実際のゲームエンジン内で見られる質感とは若干異なることを把握した上で、作業を進めているとのこと。ロンギ氏にとって、エアブラシ時代と同じような使い心地で扱えるSubstance Painterは、とてもスムーズに作業できると評価も高い。

『ゴッド・オブ・ウォー』日本版トレーラー

ここでのクリーチャー制作の工夫は、皮膚表面が濡れた感じ、ヒゲ、触覚、頭頂部も全て左右対称ではなく左右で異なるUVマップを使っていることだという。制作フローとしてはゼロから組み上げていくのではなく、既存のものを壊して色を変えたり、粗くしたり、強調したりしていく。ジェネレータを使って自動的に生成できる部分にも、必ず自分の手作業によるペイントを加える。そうすることでSubstance Painterならではの良さを引き出すことができるとのこと。


  • 『ゴッド・オブ・ウォー』に登場するクリーチャー「ワールド・サーペント」制作の様子。各所、左右対称ではないことがみてとれる


  • 目を拡大した様子

<3>Substance Designerマスタークラス

Joshua Lynch/ジョシュア・リンチ氏(シニアエンバイロメントアーティスト/Red Storm Entertainment)

続いて登壇したRed Storm Entertainmentのシニアエンバイロメントアーティスト、Joshua Lynch/ジョシュア・リンチ氏。現在は2019年発売予定の『THE DIVISION 2』の制作に関わりつつ、Substance Designerの自作チュートリアルを有料で公開している。今回はSubstance Designerを使った屋根材の制作について、考え方、手順、テクニックなどが解説された。

マテリアルを作成するときのアプローチとして、まずそのマテリアルはどのような特性をもっているのか、どのくらい年月が経っているのか、どういう自然の影響を受けているのか、人間からどのような影響を受けるのかをみながら考えていく。より良いマテリアル制作には日常の経験を活かすことが大切で、日常生活で様々な素材を体験しておき、一般のゲームプレイヤーの目と、自分が考える感覚とが異ならないように気をつけることが重要だとロンギ氏は語った。

「さらにスケール感を大切にします。現実世界における、石畳の石の大きさ、ガラスの破片の大きさ、地面の小石の大きさなどです。これらの手順を進めるために重要なのは、リファレンスとなる画像です。制作のインスピレーションが得られる写真、この写真をみたら制作が頑張れる! というような写真です」。リンチ氏は、リファレンスであってもありふれた画像ではなく、ちょっとヒネリが効いた画像を好むという。また、中心となるリファレンス画像の他に、その写真をサポートする周辺の写真も重要だ。例えば、同じ場所の異なる時間帯を捉えた写真、同じ時間帯でも異なるアングル、異なる天候といったもの。オンラインで写真を探したり、ストックフォトも便利だが、実際に外に出て写真を撮影することを勧めているとのこと。

リファレンス写真の例。左:ハワイの黒い砂、中:サンタモニカのビーチ、右:ワシントンのビーチ。「これらの写真から、波打った感じに見える砂の共通項と、色のちがいなど、共通点と異なる点が発見できます。そしてそこからストーリーを読み取ります。雪が降るようなところなのか、生命の兆しがあるのか、動物の足跡があるのかなど」(リンチ氏)。


  • 同じ場所でも季節が異なる写真の例


  • 同じレンガでも、劣化の程度が異なる写真の例

さらに大切なのは「フィンガーネイルテスト」とよばれる、そのマテリアルを触るとどれくらい表面が粗いのか、それとも滑らかなのか、また「重力感」と呼ばれるシミや苔(コケ)などが下に向かって落ちていくような感覚も重要なポイントだ。

Substance Designer で作成した石畳

手順としてバランスが取れた結果を導くには、マクロからマイクロへ大きな視点で捉えるところから、徐々に小さな視点、詳細へ目を向ける。どこから手をつけて良いのか迷ったときにも、このルールは役立つという。さらにもうひとつ大切なのは「リーダビリティ(読み取りやすさ)」。遠いところからも構造やパターンなどが読み取れるとともに、拡大したり近づいたりした際には、細かなテクスチャや細かな表面の様子、遠くからは見えなかった質感などが見えるといった、全てのスケールにおいて、気を配る必要があるとのこと。


  • リファレンスとして使った屋根材の写真


  • 実際に Substance Designer で作り上げた屋根材の様子

「残念ながらツールの標準機能だけを使っていると表現はユニークになりません。ユーザーの皆さんも、いろいろ自分なりに工夫して表現していってほしい」とリンチ氏は語り、講演をしめくくった。




  • 「Substance Day Tokyo 2018」
    日程:2018年5月9日(水)10:00~18:15
    会場:〒101-0022 東京都千代田区神田練塀町3 富士ソフトアキバプラザ アキバホール
    料金:16,200円
    campaign.borndigital.jp/substancedays_tokyo2018

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