>   >  起業から約10年。CGプロダクション3社の経営者が、これまでと、これからの道のりを語る(後編)
起業から約10年。CGプロダクション3社の経営者が、これまでと、これからの道のりを語る(後編)

起業から約10年。CGプロダクション3社の経営者が、これまでと、これからの道のりを語る(後編)

ひとりでがんばり過ぎないって大事ですよ

C:お話いただき、有難うございます。そんな経験をなさっていたとは、まったく予想していませんでした。

永岡:すごく苦しい時期を味わったことで、任せられる仕事はスタッフたちに任せて、僕は少し長い目で会社を維持することを考えなきゃいけないと思うようになりました。皆のがんばりに応えるため、働きやすい環境をつくってあげたいとも思っています。自分の立ち位置を見直したことで、ようやくここ1〜2年で会社が元の状態に戻ってきて、こうしてお話もできるようになりました。2年前にこの座談会の連絡を受けていたら、参加できなかったと思います(笑)。

この場でこの話をするかどうか直前まで迷っていましたが、当社のスタッフは全て承知していますし「今後の5年間に向けて、もう1回がんばります」という意味を込めてお話した方がいいだろうと思いました。取引先の会社様、スタッフ、友人など、人の縁に助けられた結果、会社を維持してこられたので、その感謝も伝えたいですね。

谷口:いっとき、永岡さんと連絡がとれない期間があったので、お忙しいのかなと思っていました。ひとりでがんばり過ぎないって大事ですよ。僕もその傾向があるから、社内のほかのスタッフに以前指摘されました(苦笑)。僕が全てを背負ってしまい、僕がボトルネックになっているから「引っぺがしましょう」と言ってくれたのです。

普通だったら言ってくれないと思うんですよ。あるいは言わずに辞めていく。言ってくれたことには今でも感謝しています。それを機に、草間博之というスタッフを取締役にして、僕が背負っていた責任の一部を担ってもらうようにしました。今は草間がハブになって動いてくれているので、以前より会社がうまく機能していると思います。


箱崎:草間さんは、谷口さんがCGの学校で非常勤講師をなさっていたときの教え子ですよね。その過程がすごいなと感心しています。つくる人を育てることはある程度できると思うのですが、取締役にまで育てるのは並大抵の指導力ではないと思います。何かノウハウだったり、ポイントだったりはあるのでしょうか?

谷口:特にないです(笑)。草間は僕にできないことができるので、当社に絶対必要だと思い、取締役に昇格してもらいました。僕は今40代なのですが、20代の若手スタッフから見ると年齢が離れ過ぎており、意見を言いづらいことがあるようです。そこに30代の草間が入ることで、仕事がうまく回るようになりました。しかも彼は話を聞き出すのが上手いんですよ。

永岡:「自分が立ち上げた会社だから、自分が一番がんばらなきゃ」と考えている経営者の方は大勢いると思いますし、そういう思いがないと会社を引っ張れない気もしますが、やり過ぎるとどこかにひずみが出てしまいますね。信頼のおけるスタッフに責任を分担してもらうことは、すごく大切だと思います。

箱崎:つくることが楽しくて会社を起こしたわけなので「思わずやっちゃいそうになる」ということは僕自身よくありますね。でも会社を経営する上では、つくり手とはちがう視点、ちがう考え方が必要になります。どう変わっていかなきゃいけないのか、今も模索しています。

永岡:つくり手と経営者とでは考え方のベクトルがちがいますから難しいですね。

箱崎:「つくり手としては納得いかないけれど、経営者としては納得できる」というジレンマはよく感じますね。そういうとき、現場のスタッフはさらに「納得いかない」という思いが強いはずなので、彼らの気持ちを汲み取ったバランスのいいかじ取りをしていきたいと思っています。

今後の抱負を聞かせていただけますか?

C:座談会の締めくくりとして、今後の抱負を聞かせていただけますか?

谷口:『刻刻』でアニメのCG元請けはできたので、つぎはアニメ全体の元請けをやりたいと考えています。そのためには人数が必要なので、当面は50人を目標にスタッフを段階的に増やしていきます。「50人の組織にしたければ、誰がどういう役割なのか、責任の所在をより明確にする必要がある。そうしないと『50人の壁』は越えられない」というアドバイスを先輩の会社経営者からいただいているので、50人を視野に入れた組織づくり、役割分担が目下の課題です。加えて、キャラクターのデザインから、モデリング、アニメーションまで、一貫して質の高い仕事を提供できる会社になるべく、さらに力を付けていくことも課題としています。

箱崎:当社もさらに人数を増やしたいという気持ちはありますが、一気に増やすのではなく、新卒を中心に、いい人を少しずつ入れていく予定です。経験者も歓迎しますが、なかなかいい人が見つからないのが現実なので、新卒採用が中心になると思います。加えて今いるスタッフには、つくるだけではなく、リーダーシップや経営などにも視野を広げてもらい、地道に会社組織を大きくしていきたいです。


永岡:当社に入ってよかったと思ってもらえるような、当社ならではの働きやすい環境を整えていきたいです。スタッフが年齢を重ね、結婚して子供が生まれたりすれば、必要とする環境は変わってくると思います。それに対応し、スタッフと共に成長していける会社にしたいです。実際、この5年間でスタッフの人数に変化はありませんが、各自の実力は上がっているため、会社ができることは増えているのです。今後も各スタッフが長く働き、成長を続けられる環境を維持していきたいです。

C:お集まりいただき、本当にありがとうございました。3社のこれからの5年間にも、引き続き期待しています。

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