実写、作画、3Dの3要素を馴染ませ独自の作風を確立
本作のVFXスーパーバイザーを務めた藤原源人氏(NEWPOT PICTURES)は、森本監督の頭の中にあるイメージをどうやればCGで再現できるのか、その試行錯誤に一番頭を悩ませたと語った。「制作の前半は当社、後半はグリオグルーヴ内に作業場を設け、森本監督の作画机も用意しました。各々の作業を進めつつ、要所要所で監督に仕上がりを見ていただき、イメージに近づけていきました」(藤原氏)。藤原氏と共にVFXやコンポジットを手がけた高橋良幸氏は、実写、作画、3Dという3つの要素を馴染ませ、独自の作風を確立させることが今までにないチャレンジだったとふり返った。
▲森本監督が描いたイメージボード
▲実写素材
▲先の実写素材を基に森本監督が描いた作画素材
▲コンポジットの試行錯誤の過程。「実写素材の生々しい色味や質感をどこまで残すのか、さじ加減の見極めが難しかったです」(高橋氏)
▲完成画像。肌の質感を消す一方で、服の質感はある程度残している。本作の作画素材は全て森本監督が描いており、3コマ打ちをベースにしている。そのため作画素材を使うカットでは、実写素材と3D素材の情報量も3コマまで落としている
西村氏の編み込みをHoudiniで再現し、より芸術性の高い動きを提示
▲森本監督が描いたイメージボード。地面いっぱいに広がる髪の毛が中央の人物に集まり、足をつたって上昇していくシーンが描かれている▲一連のシーンの髪の毛の動きはHoudiniで表現された。「このシーンの制作は、過去に当社で働いた経験があり、今は北米でハリウッド映画の制作に携わっているアーティストに手伝ってもらいました。西村さんが編み込みをする様子を撮影したリファレンス動画を基に、より芸術性の高い動きを提示してくれました」(坂本氏)
▲髪の毛の表現のテスト動画
▲足の素材。本カットでは足も3Dで表現されている
▲髪の毛の素材
▲完成画像
▲森本監督が描いたイメージボード。躍動する編み込みが描かれている
▲編み込みの表現のテスト動画
▲完成画像
完成した映像は、シンプソン氏だけでなく、ポスプロを担当したアメリカのスタッフにも絶賛された。「おそらく、彼らの頭の中にない新鮮なイメージを提示できたことが評価につながったのでしょう。同じ土俵ではなく、日本人らしいわびさびのセンスで勝負するという方針が功を奏したのだと思います」(坂本氏)。
MV『SOUND & FURY』No.3は以上です。No.4では、松本 勝監督が手がけたMV『Ronin』の制作の舞台裏を紹介します。ぜひお付き合いください。
・MV『SOUND & FURY』No.1/20代ディレクターとベテランの競演で神風動画カラーを大放出
・MV『SOUND & FURY』No.2/バラエティ豊かなカラーを引き出す神風動画の制作体制
・MV『SOUND & FURY』No.4 /松本 勝監督が旧知のスタッフと共にディストピア世界を表現
©2019 High Top Mountain Films, LLC / Elektra Records.
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