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『Ark』プロジェクト<br />フィギュアデジタル原型メイキング

『Ark』プロジェクト
フィギュアデジタル原型メイキング

4. 出力機の紹介

今回利用させて頂いたのが「DMM 3Dプリントセンター」の「3Dプリントサービス」です。プリンタは、耐久性もあり、微細で高品質なパーツ出力が出来る点で、現状一番フィギュアの原型制作に適していると思われる「ProJet 3500 HDMax」を使用しました。 約A4サイズのテーブル内に各パーツを配置しまとめてプリントでき、サポート形状もソフト側で自動生成してくれるので、面倒な前処理なども不要です。自動生成されたサポート材は、オーブンなどで簡単に除去できるため、ゲート処理なども不要です。もちろんこのような処理もサービス側で全て行ってくれますし、すぐに完成品に近い状態で確認する事が出来るのもメリットといえると思います。 サービス利用も非常に簡単であり、十分なサポート体制も整っていますので、非常にお勧めです。

5. 3Dプリント後の処理について

フィギュアの原型制作を目的とした場合、3Dプリントサービスにより出来上がってきたパーツそのままでは完成しません。出来上がったパーツ一つ一つに対して必要な処理が大きく2つ残されています。一つ目は磨き処理です。かなり微細で高品質なパーツが出来上がってくると言っても、商品として考えた場合、まだ表面にはプリント時に出来た微妙な積層段差跡が残ります。このような部分を丁寧に紙やすり等を使用して出来るだけ滑らかに磨いていく必要があるのです。 もうひとつはサーフェイサー処理です。いわゆるサフ吹きと言われるものです。これはパテを塗料並に薄めたような物を吹き付ける事によって微細な傷を消す効果があります。また表面の質感と色を均一にする事が出来る為、さらに大きな傷やヒケなども見つけ易くなります。そこで見つかった傷などは更に磨き処理をかけるなど不備がなくなるまでこの2つの工程を繰り返します。しかしあまりやりすぎると、繊細なモールドが消してしまったり、エッジが甘くなるなど、大事なニュアンスを消しかねませんので、出来るだけ丁寧に行う必要があります。ご自分で行うか、専門の業者様もいらっしゃいますので、サービスを探してプロにお任せしてみるのも良いと思います。

5.1 3Dプリント後の処理について 脱脂

出力品そのままの状態ではまだサポート材が付着している場合があります。余計な油分はそのままにしておくと塗料を弾き上手く定着しなくなります。各パーツを離型剤(シンナー)に20分ほど漬けて、出力品に残っているサポート材を除去していきます。白く見える部分がサポート材のついていた部分となり、表面がまだ荒れた状態になっています。

5.2 3Dプリント後の処理について 磨き(1回目)

白くなった部分を中心に、240~400番位のペーパーで磨きます。他細かい傷や微妙な積層段差跡もありますので、注意しながら白い部分がある程度なくなるまで磨き続けます。

5.3. 3Dプリント後の処理について サフ吹き(1回目)

全体にサフを薄く吹いた状態です。一度に噴こうとすると厚塗りになりすぎてしまうので、軽く数回に分けて薄く重ね噴きするようにすると良いでしょう。磨き残しなどが見えた部分は再度磨いていきます。

5.4 3Dプリント後の処理について 磨き(2回目)

見えてきた磨き残しや積層面が残る部分を240~400番くらいのペーパーで再度磨き直していきます。その後、全体的に600番~800番のペーパーで表面を均一に磨き、より滑らかになるよう表面処理していきます。

5.5 3Dプリント後の処理について サフ吹き(2回目)

すべての磨き処理が終了したら、仕上げのサフを吹いて再度パーツの確認をします。この時まだ磨き足りない部分などがあれば、もう一度磨き直しを行います。最後に組立可能にするため、嵌合部分のピンを削るなどして調整をしていきます。本来3D上で予め嵌合部にクリアランスをつけてから出力も出来るのですが、今回は最後の仕上げ時に嵌合部の調整を行う予定としていたので、出力時にはクリアランスは付けずに出力しました。

6. 組立完成!

フィギュアの寸法はフィギュアのみ高さ:158mm
フィギュアプラス台座高さ:185mm
台座のみ(横幅×高さ×奥行):120mm×160mm×120mm
なお今回のフィギュア全24パーツの3Dプリント(アクリル樹脂)にかかった費用は¥65,604(税込)。詳細はDMM 3Dプリントサービスのサイトを参照してもらいたいが、本格的なフィギュアの原型出力でもこの価格で収まることの意義は大きいだろう。

このような工程を全て経て、各パーツを組みあげた原型完成品がこちらです。パーツ数は全部で24パーツです。複製も視野に入れていましたので、パーツ毎の形状もそれに対応出来るよう配慮しています。可動はしない為、嵌合部分にはすべて異なる角がついており、ポージングは決め打ちとなります。モールド幅の目安は0.2mmとする事で出力時に無理なく再現が可能です。デザイン的に足裏が小さいこともあり、自立は出来ない為、この専用台座に取り付ける事を前提としていますが、「luna」本体の背骨パーツの一部を脱着可能とし、そこに出来た穴を利用して台座への取り付けを可能とした事で、市販の台座を利用した際にも背中に穴跡を残さないようしています。台座にボリュームを持たせた事で、1/10フィギュアとしては迫力もあり、組みあがった様もイメージ通りの仕上がりで満足の行くものとなりました。

TEXT_永岡 聡(lunaworks
PHOTO_弘田 充
フィギュア出力協力_DMM 3Dプリントサービス
仕上げ協力:株式会社ケーツーブレインズ

▼ About Company

株式会社lunaworks
アニメ―ション・ゲーム・遊技機・CM・TV・映画などの各種映像制作から、フィギュアのデジタル造型、オリジナルアプリ、グラフィックデザインなどあらゆるエンターテインメント領域において企画・デザイン・制作を手掛けるCGプロダクション。
現在同社では、スタッフを募集中!
詳しくはこちらhttp://cgworld.jp/jobs/10112.html

▼ About Service

DMM3Dプリントサービス
DMM 3Dプリントサービスの最大の特長は多彩な素材を低価格で出力可能であること。 「luna」の原型を出力した米3D Systemsの「ProJet HD3500 Max」を4台、Stratasyの「Objet Connex500」が1台稼動中。(2014年4月現在)カラー出力にも対応する「Objet Connex5003」も近く本格稼働する予定。 対応素材もアクリル樹脂・ホワイトアクリル・石膏・ナイロン(ポリアミド)・ABSライク・ゴムライク・チタン・ステンレス・シルバー・ゴールド・プラチナから選択可能だ。
詳しくはこちらhttp://make.dmm.com/

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