KASSENが「いざという時に頼りになる」と語るクラウド・レンダーファーム Fox Renderfarmとは?決め手は"サポート体制の柔軟性"

案件が重なり、レンダリングリソースが足りない。しかし、新たにPCを購入する時間もない――。そんな状況で頼れる選択肢の一つが、クラウド・レンダーファームサービスだ。
本記事では、数あるサービスの中からFox Renderfarmに焦点を当てる。実際にFox Renderfarmを導入しているVFXスタジオ KASSENのクリエイターたちが導入の最大の決め手として挙げたのは、「サポート体制の柔軟性」。数々のハイクオリティな映像を手がけるKASSENのクリエイターたちは、なぜFox Renderfarmを選んだのか? その真意に迫る。

Fox Renderfarmとは?

www.foxrenderfarm.com/
レンダリングリソースの悩みが解消「いざという時に頼りになる」
――Fox Renderfarmの導入によってレンダリングに要する時間はどのように変化しましたか?
金谷健太郎氏(以下、金谷氏):あくまで体感ですが、確実に速くなっています。少なくともこれまでにないスピードでレンダリングが完了できていることは間違いありません。

松本哲明氏(以下、松本):社内のマシンもハイスペックな機材に適宜更新するようにしているので、マシン自体の性能に大差はないと思うんですが、Fox Renderfarmで処理してもらうと、レンダリングに割り当てられるマシンの頭数が圧倒的に違うなという感じですね。
――予算やスケジュールへの影響はどうでしょう?
城戸久倫氏 (以下、城戸):短納期の案件では特にFox Renderfarmを使わないと終わらないということが多々あったので、影響というよりは「なかったらどうなったんだろう」と思うと怖いですね。これまで無理だと思われたようなFB対応ができるようになったケースが増えました。

金谷:タイトなスケジュールの案件でも、試行回数を確保できるようになりましたよね。
松本:スケジュールの問題で、本来は断るはずだった仕事も受けられるようになりました。
河島健太氏(以下、河島):レンダリングリソースの確保に頭を悩ませることがなくなり、スケジュールの調整も柔軟にできるようになりました。スケジュールに余裕のない案件、スケジュールに余裕がない上、物量が多いという案件が重なっても、Fox Renderfarmで一気にレンダリングするという手がとれるので、制作進行としてはそこが1番大きいです。

城戸:予算面も、後述するサポート体制などのサービスも含めて考えると良心的に相談に乗っていただけて助かりました。
――社内のマシンも可能な限り最新の機材に適宜更新されているそうですが、Fox Renderfarmをなぜ導入したのでしょうか?
城戸:3年ほど前、KASSENが創立から1年ほど経ったタイミングで、大変ありがたいことに大規模な作品を担当する機会が急激に増加し、社内レンダーだけでは処理が追いつかなくなりそうな状況でした。
会社全体で常時、30件以上の案件が動いているような状況で、レンダリング用マシンのリソースも、納期やデータ量によって割り振りが必要になってきたのです。
金谷:チームごとに使用できる台数も決まっています。1つのレンダリングに膨大な時間を要するシーンを回すと、他案件のレンダリングができず制作がストップする恐れを感じ始めたタイミングで、複数のクラウドレンダーファームの試用を開始しました。その中で、最も使い勝手が良かったのがFox Renderfarmでした。
導入の決め手は“柔軟なサポート体制”
――他のレンダーファームも試されたとのことでしたが、Fox Renderfarmを選んだ理由を教えてください。
城戸:1番の決め手は、Fox Renderfarmの対応力です。費用やレンダリング効率の向上はもちろんですが、我々が求める用途、ツールに非常にフレキシブルに対応していただけたというのが大きかったです。
「このぐらいの重いシーンがあって、このぐらいの期間でやりたい」とか「こういうソフトとプラグインを使っているんだけど、対応してもらえないか」みたいなことを伝えると、柔軟に対応していただけたのが非常に印象に残っています。最初は窓口対応ですが、技術的な話が絡んでくるときちんとテクニカル担当の方を呼んでくれて細かい部分を確認してくれました。
――そういったサポートはどのような形で提供されているのでしょう?
城戸:緊急性の低い要件はメールでコミュニケーションを取りつつ、リアルタイムで話す必要が生じたらSkypeですね。ちょうどいまもこの取材の裏で弊社の人間にSkypeで対応してもらってますよ(笑)。もちろん、日本語対応で。
金谷:Slackでやりとりすることもありますね。案件によっては、事前にNDAを結んだ上でエラーに関して詳細に状況を共有しながらSlackで対応していただくこともあります。エラー原因って具体的に詳細を共有しながらでないと解決できないものも多いので、そこをやりとりできるのはいいですよね。
――その他、気になった機能やサービスがあれば教えてください。
松本:シーンデータをほぼそのままアップロードできる点もよかったです。従来のようにリファレンス設定やシーン整理を細かく調整する必要がなく、作業負担が軽減されました。また、エラー判定機能があるため、「レンダリング結果が出てこないのにコストがかかる」といった無駄なトラブルを防げる点もありがたいですね。

金谷:ツールやそのバージョン、プラグインに至るまでかなりの範囲をカバーしてくれていますし、そうしたツールごとの設定を複数保持しておいて、ワンクリックで切り替えられたりする。非常に使いやすいUIなので、初めて使用する際や、複数案件を進行している際に、迷わず操作できるので助かってます。
――それでは、具体的にFox Renderfarmを制作に導入した作品を教えてください。
金谷:ディズニープラスの『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』の制作時に活用しました。異世界ファンタジー作品で、巨大なドラゴンのシーンなどは社内レンダーだけでは処理が追いつかなかったため、Fox Renderfarmを導入する大きなきっかけとなりました。レンダラーはArnoldを使用しています。

■監督:萩原健太郎
■アニメーション監督:大塚隆史
■脚本:藤本匡太、大江崇允、川原杏奈
■原案:solo、日月舎
■キャラクター原案・コンセプトアート:出水ぽすか
■プロデューサー:山本晃久、伊藤整、涌田秀幸
■制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
■アニメーション制作:Production I.G
■キャスト:中島セナ、奥平大兼、エマニエル由人、SUMIRE、津田健次郎、武内駿輔、嶋村侑、三宅健太、福山潤、土屋神葉、潘めぐみ、宮寺智子、大塚芳忠、田中麗奈、三浦誠己、成海璃子/新田真剣佑(友情出演)、森田剛
■クレジット:© 2023 Disney
金谷:中でも一番使用したのは、作品終盤のバトルシーンですね。ピュトンピュトという体長数キロメートルにも及ぶ巨大なドラゴンが出てくるんですけど、全身が引きで映るシーンもあれば、その身体の上で戦うような寄りのシーンもあるので、膨大なディティールと巨大なテクスチャーが必要で。シーンによっては社内のレンダーをフル稼働しても時間のかかる重いデータだったので、かなりFox Renderfarmが活躍していた印象があります。
松本:そして、こういった長編作品を制作しつつ、CMやMVも同時に制作しています。BUMP OF CHICKEN『邂逅』のMVの制作時にも使用しました。こちらもレンダラーはArnoldを使用しています。

www.youtube.com/watch?v=H6bjIChUx2k
松本:レンダリングに長時間かかるような処理負荷の重いものを投げてもいいし、逆に、10秒で終わるような軽いものを投げてもいいんです。社内で重いシーンが回っているせいで、10秒で終わる処理のために1時間待つ必要がある、みたいな事態を避けられます。
金谷:軽いレンダリングならコストもそれ相応の安さで済みますしね。
――こういった複数案件を同時進行する中で、Fox Renderfarmの対応力が生きてくると。
城戸:そうですね。本当にスケジュールに余裕がない中で担当者が不在で数日連絡が取れないという話になると、業務を完遂できないということになってしまうので……。社内で回しているようなスピード感で対応してもらえているからこそ、厳しいスケジュールの中でも試行回数を確保できていると思っています。
使用ツールも納期もアサインしているスタッフも違う中、複数作品を同時に制作していると、手厚いサポートに助けられる場面は多々あります。今後も、より高品質な映像制作を目指していく上で、Fox Renderfarmの存在は心強いですね。
TEXT_稲庭淳
PHOTO_弘田 充
INTERVIEW&EDIT_中川裕介(CGWORLD)