こんにちは! ボーンデジタル テクニカルサポートの黒河です。昨年9月にiPad版がリリースされたことで、ZBrushユーザーがさらに増えた印象がありますが、皆さんはZBrushの機能をどこまで使いこなせていますか?

実はZBrushには、ブラシによるスカルプトだけでなく、モデリングを効率化する機能も数多く備わっています。今回は、ZBrushトレーナーの成川大輔さんに、4つのテクニックを紹介していただきました。

記事の目次

    黒河 建

    ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
    X:@BD_SoftwareDiv

    ※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.321(2025年5月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。

    ZBrush

    Maxonが提供するデジタルスカルプト、モデリング、ペイントソフトウェア。スカルプトするような感覚で直感的に3DCGモデルの形状を制作できる。映画やゲーム用キャラクターのモデリング、ノーマルマップ制作などで広く使われている。
    www.borndigital.co.jp/product/zbrush

    ZBrushトレーナー・成川さんがテクニックを伝授

    ゲスト:成川大輔さん

    Maxon所属ZBrushトレーナー。印刷会社勤務時に3Dスキャンデータの修正ソリューションを探す中でZBrushと出会う。現在は情報発信やイベント登壇など精力的に活動中。

    こんにちは、MaxonのZBrushトレーナーの成川です。

    今回は、ライトボックスから読み込めるデフォルトの素体「Male.ZPR」をベースに、アメリカンフットボールの装備を作成していきます。その過程でオススメの4つのテクニックをご紹介しますので、日々の創作に役立てていただければと思います。

    テクニック① MicroPolyで細かな網目をつくる

    ヘルメットの切り込み部分に金属の網目を作成したいときに便利なのが、「MicroPoly」という機能です。これはダイナミックサブディビジョンの中の機能で、それぞれのポリゴンを指定したモデルに差し替えることができる特徴があります。

    ▲まずは[マスク→抽出]でメッシュを抜き出し、Zリメッシャー(ZRemesher)でメッシュのながれを整えます
    ▲メッシュのながれを整えた後、ダイナミックサブディビジョンを有効にし、MicroPolyもONにします。メッシュ選択欄から「Wooven04」を選ぶと、各ポリゴンが網目状に置き換わり、ディテール表現として活用できます
    • ▲網目はスケールも調整可能です

    テクニック② スナップショット3D+MatchMakerブラシで形状をフィットさせる

    参考画像をモデルの横に並べて作業したり、画像の凹凸情報をブラシでモデルに適用したりできる「スポットライト(SpotLight)」には、白黒のアルファを基に3Dモデルを作成できる「スナップショット3D(Snapshot3D)」という機能があります。

    ▲[ライトボックス→スポットライト]から「Spotlight_Primitives」をダブルクリックすると、ZBrushのZManロゴが読み込まれます。ZManを選択し、スポットライト内のスナップショット3Dのカメラアイコンをクリック
    • ▲アクティブなメッシュの厚み分押し出されたZManロゴが作成できます

    「MatchMaker」ブラシは、後ろにあるメッシュの奥行きを読みとり、ブラシ対象をその形状に押し付けることができる機能です。例えば、シワのある服や曲面のあるヘルメットに、ロゴやテキストをメッシュとして付けたい場合などに活用できます。

    • ▲ZManロゴのように、ある程度頂点数のある薄いメッシュを作成して配置したい位置までもっていき、MatchMakerブラシに切り替えます
    • ▲ブラシサイズを大きくしてZManロゴをドラッグすると、全体が波紋で揺れたかのように表示が変わります
    ▲面から見ると、ロゴが表面の凹凸に沿うように変形していることがわかります。あとはギズモ3Dで配置を調整するだけで、服装やヘルメットに合わせることが可能です。さらに、厚みをコントロールしている部分は別ポリグループとして分かれており、エッジの追加なども容易に行えます

    テクニック③ UV展開+サーフェスノイズでシワを付ける

    • ▲「抽出」を活用して靴下の土台を作成した後、ポリグループを割り当てて縦模様のシワを付けられるようにします
    • ▲この際、UVは円柱形状を平たく展開し、UVの縦軸に合わせてあげることで、より綺麗な結果が得られます。UVマスターでUVを展開する方法や、UVを展開した後のモデルをZBrushにインポートする方法の両方が利用可能です
    ▲サーフェスノイズのNoise PlugからStripesを指定すると縦縞がパターンとして適用されます。この際、サーフェスノイズの"UV"オプションを有効にする必要があります
    ▲靴下の縦ジワの完成

    テクニック④ ギズモ3Dのベンドカーブで靴紐を作成

    ギズモ3Dのデフォーマである「ベンドカーブ」は、薄くて長いものをコントロールする際に非常に便利です。例えば、キャラモデルでは髪の毛やベルト、靴紐などをつくるときに役立ちます。

    ▲長めの直方体を用意します
    ▲ギズモ3Dの歯車からベンドカーブを有効化
    ▲モデルに点が描かれます。これらの点は、解像度のコーンを掴むことで増やしたり減らしたりもできます。必要に応じて点を追加していくことを意識すると、コントロールがしやすくなります
    ▲サブツールの複製をすると、その時点のベンドカーブの設定も維持されるので便利です
    ▲結び目も付けたら靴紐完成

    ZBrush for iPadの使用感を検証!

    成川さんのテクニック紹介、いかがでしたか? 紹介された4つの機能は、全てZBrush for iPadの有料版でも利用可能です。PC版のサブスクリプションをもっている方であれば、iPad版を無料で利用できます。

    私(黒河)もさっそくインストールして、iPad版の使用感を検証してみました。個人的には、もともとiPadユーザーということもあり、指でのジェスチャーが使いやすくてありがたかったです。今回の検証に使用したiPad Proは、第4世代とM4の2台です。

    ▲検証に使用したiPad Proのスペック

    iPad版でも2,500万頂点程度までは快適に動かせる印象でした。第4世代は、3,500万頂点を超えるとアプリが落ちやすくなりましたが、M4は9,000万頂点くらいまでアプリが落ちずに動作しました。

    今回使用したM4は8GBメモリのものですが、M4の16GBモデルでは約1億4,700万頂点で作成されたスカルプトの例がZBrush公式から上がっていますね。ZBrushはメモリが重要というのがよくわかります。

    とはいえ、どちらも「携帯性に優れ、アイデアが湧いたらすぐ作業できる」という公式コンセプトの通り、どこでも気軽に作業できるというのは強かったです。スケッチでiPad版を使用し、ディテールの仕上げ作業はPCで行う、というワークフローが想定されていると実感しました。しかしPC版と変わらず使用できる機能も多いので、ZBrushを触ったことがない方も、まずはiPad版を使ってみるというのはアリだと思います!

    GoZ to iPad

    • ▲GoZ to iPadは同じLANの中にいれば使用可能です。PC版では「GoZ to iPad」から操作できます
    • ▲iPad版の方で[インポート→ GoZ]を開いていないとPC版が認識できないので注意。頂点数が多いものはインポートエラーが起こる可能性があります。また、ネットワーク環境もできるだけ簡易的な方が良いです。GoZでデータを送った場合、アンドゥ履歴などの情報は削減されます

    次回予告|D5 Render

    次回はD5 Render(以下、D5)を取り上げます。リアルタイムレンダラとして、主に建築業界で活用されることが多いD5ですが、実は海外ではアニメや漫画などの背景制作として利用されるケースも増えています。D5内のAI機能を活用することで、短時間で高品質なアウトプットが見込めるんです。次回もお楽しみに!

    掲載号はこちら

    テクニカルサポートが選ぶ今注目のソフト|TouchDesigner

    カナダのDerivativeが開発した、ノードベースのビジュアルプログラミングによる映像制作ソフトウェア。
    derivative.ca
    ※ボーンデジタルではお取り扱いしておりません(2025年5月現在)

    登場からしばらく経ち、日本語の情報も徐々に増えてきたTouchDesigner。幾何学的な映像表現のイメージをもつ方も多いかもしれませんが、本質はリアルタイムでのデータ処理で、デバイスやソフトの連携にひと役買います。そのためVJやバーチャルプロダクションに用いられることが多いのです。

    しかし、活用範囲はさらに広く、個人でも様々な試みができるソフトウェアなので、いつか本連載でも面白い活用方法をご紹介できればと考えています。「そもそも初めて聞いた!」という方は、ぜひ一度チェックしてみてください!

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.321(2025年5月号)


    特集:セガのゲームで学ぶ3DCGの基礎
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2025年4月10日

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    TEXT_黒河 建/Takeru Kurokawa(ボーンデジタル
    EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)