3D Gaussian Splattingや生成AIなどを武器に、斬新な表現を創り出すフコウエアラタがGeForce RTX 5090を搭載の「iiyama SOLUTION∞ Workstation」をレビュー

先行き不透明な時代と言われているが、逆に言えば意欲があって実行さえすれば何でもありの時代でもある。実写とCGなどのデジタル技術を駆使した斬新なコンテンツに定評あるフコウエアラタ氏は、まさにそうしたクリエイターの代表格。今回、最新テクノロジーの真価を存分に引き出すためには作業マシンにも相応のスペックを求めるというフコウエ氏に、GeForce RTX 5090を搭載した「iiyama SOLUTION∞ WORKSTATION」を試してもらった。
フコウエ氏が4D Gaussian splatting撮影を担当した事例。4Dモデルは、GoPro 37台で撮影されたバレーボール日本代表選手達の4D Gaussian Splatting撮影を担当しました#SVリーグ #3DGS #4DGS pic.twitter.com/IxgrAa4zTq
— Arata Fukoe (@Arata_Fukoe) October 11, 2024
普通とはちがう映像表現を求めて、常に最新テクノロジーを意識している
——フコウエさんは、GoProなどを活用した実写映像から3DCGまで、様々な技法を使われていらっしゃいます。最近は、どのような表現を主に手がけていますか?
フコウエアラタ(以下、フコウエ):
ここ数年はAI関連のテクノロジーが急成長中ということもあり、CG寄りですかね。ですが、今もGoProで撮った映像を素材にしてGaussian Splattingで3Dや4Dシーンに仕上げるといったこともよくやっているので、CGと実写を分け隔てなく使っています。
僕は自分が作ったもので多くの人を驚かせたい、感動させたいということに大きなモチベーションがあるので、新しいテクノロジーを積極的に取り入れていくのが基本的なスタイルになっています。

1992年生まれ、gradationマネジメント 映像クリエイター。
2015年京都造形芸術大学と京都芸術デザイン専門学校のダブルスクールを卒業。卒業制作では学内最優秀賞を受賞、その後はNAKED Inc. に就職し、インタラクティブやプロジェクションマッピングを始めとする時代の最先端を行く映像制作に携わる。2017年、日本人としては数少ないアクションカメラ「GoPro」のアンバサダーに選ばれる。2018年、世界最大のGIFサイト「GIPHY」公認のアーティストを務め、自身が制作したInstagramのGIFステッカーが大ヒットし、世界一の再生数を記録。BTSやFORTNITEなどと並び「Instagram Year in Review 2018」に選ばれる。2021年、「Adobeクリエイティブコンテスト2021」にて最優秀賞を受賞。
——フコウエさんがクリエイターとして活動する上で大切にされていることを教えてください。
フコウエ:
ポリシーと言うほど大げさなものではありませんが、常に最新の技術を映像などの媒体(アウトプット)に組み込むことは意識してますね。
同じことを続けるよりも、新しくて面白そうな技術が出てきたら、それを使ってどんな表現ができるのか試してみるということを当たり前に続けているかもしれません。
3D Gaussian Splatting と360度カメラを組み合わせて、通常の撮影では難しいカメラワークを実現しました
— Arata Fukoe (@Arata_Fukoe) June 9, 2024
Dir @Howardfuruta
https://t.co/Fo9qtG6JEI#3DGS pic.twitter.com/FO0l5ojs6G
——最新テクノロジーを取り入れていくという意味では、自ずとマシンパワーが求められる表現になると思います。作業マシンはどのようなタイミングで買い換えていますか?
フコウエ:
そこはシンプルに今の作業環境だと頭打ちになってしまったときは、新しいものが欲しいですね。マシンごと新調するときもあれば、CPUやGPUなどのパーツを買い替える場合もあります。
今は、生成AIを利用した3D表現をよく利用しているため、GPUパワーが一番必要になります。その中でもビデオメモリ(VRAM)です。このGPUスペックだと、このサイズまでしか画像生成できないとか、扱える教師データのサイズなどにも影響してくるので、いつも気にしています。
——現在は、どれくらいのGPUを使われていますか?
フコウエ:
メインは、GeForce RTX 4090を搭載した自作マシンです。4090のビデオメモリは24GBです。一般的な映像やCG制作用途であれば十分だと思いますが、僕の場合は4Kとか8Kサイズの3Dシーンを扱いたいので限界を感じることがあります。
8Kサイズの場合、生成AIのトレーニングに40ギガ以上必要だったりすることもあるので、H100(NVIDIA H100 Tensor コア GPU )を使わないと学習すらできないといったことがあります。
——エンタープライズ向けのGPUですね。
フコウエ:
H100はさすがに手が出ませんが(苦笑)、RTX 6000(NVIDIA RTX 6000 Ada世代)ぐらいまでならがんばって買ってみようかなと思うときがありますよ。
現状最新の生成AIを使いまくってMV的なものを作ってみました(内容はめちゃくちゃ)
— Arata Fukoe (@Arata_Fukoe) July 7, 2024
Tools Utilized ↓
Music : ChatGPT,Sunoai
Video : DreamMachine,Gen-3,Kling
Image :MJ,SD
Edit : Ps,Ae
特に人物とかは大きい画面で見ると粗が目立ちますが、使い方次第でなんとか誤魔化せるかなといった感じ pic.twitter.com/9DzENHP4sV
GeForce RTX 5090搭載ワークステーションを使えば、生成AIによる映像表現の幅が広がる
——今回は、生成AIを使ったハイエンドのコンテンツ制作にも適したパソコン工房のワークステーション「SOLUTION∞ Workstation SOLUTION-W1B6-LCR99W-XKX-NV」を試していただきました。どのような作業に使われてみたのでしょうか?
フコウエ:
個人的に注目している「Postshot」という、NeRFとGaussian Splattingを使って、画像や動画から3Dシーンを生成できるソフトウェアのパフォーマンスを試しました。リアルタイムプレビュー機能があるので、見た目の変化もわかりやすいと思ったので。
まだベータ版ですが、生成されたラディアンスフィールドを直接After Effectsにインポートできたりと、映像クリエイター向きだと思います。
NVIDIA Studio 認定 PC「SOLUTION-W1B6-LCR99W-XKX-NV」(今回の検証機)

www.pc-koubou.jp/pc/nvstudio_pc.php
- モデル名
SOLUTION-W1B6-LCR99W-XKX-NV
- OS
Windows 11 Pro
- CPU
AMD Ryzen 9 9950X
- GPU
GeForce RTX 5090 ※NVIDIA STUDIOドライバー
- メモリ
128 GB(64GBからカスタマイズ)
——Postshotによる3D Gaussian Splattingを試された所感を教えてください。
フコウエ:
GeForce RTX 5090を搭載しているだけあって、とても快適でした。普段はRTX 4090を使っていますが、感覚として1.3倍ぐらいパフォーマンスが上がったと思います。
——RTX 4090のビデオメモリは24GB、RTX 5090は32GBなので1.3倍というのはリアルな数値だと思いました。それに、GeForce RTX 5090は、Blackwellアーキテクチャを採用しているので、従来よりもさらに高効率なレイトレーシング処理と、生成AI処理に特化したTensorコアが強化されていますしね。
フコウエ:生成AIやリアルタイムプレビューを多用する映像制作において、レンダリングスピードやワークフロー全体の効率を劇的に改善してくれる点が魅力に感じます。サクサクと動くし、Postshotを使っているときも静かでした。
フコウエ:
ビデオメモリが増えたことを実感しようと、Gaussian Splattingで生成した3Dオブジェクトを何個も複製して並べたシーンも動かしてみました。下の動画がその様子ですが、すごく滑らかに動きました。
——生成AIの進化に応じて、ハードウェアも進化していることが伝わってきました。ひとつの作品に仕上げる上で、AIで生成した素材を用いる際に心がけていることを教えてください。
フコウエ:
先ほどAIテクノロジーの進化が早いと話しましたが、いつも最新情報を追いかけています。Postshot以外だと、Googleの「Veo 2」にも注目しています。生成される映像クオリティが競合よりも頭ひとつ抜けている印象です。GoogleはYouTubeサービスがあるので、教師データが豊富にあることが大きいんじゃないかと。
ただ、そのまま作品として成立するかは別の話です。複数カットで構成されたムービーの場合は、カットのテンポや構成が不自然だったり、映像としても綺麗すぎるというか、多少、料理をしてあげる必要があります。
——料理の具体例を教えてください。
フコウエ:
生成された画にAfter Effectsを使ってノイズを入れたり、カラーコレクションして印象を整えるといったことは必ずします。そういったエフェクティブな作業だけでなく、実写素材の場合はバレ消し作業も必要です。
——たとえ生成AIを利用したとしても、映像クリエイターにとって不可欠な画づくりのセンスとか、そのための作業は変わらないということですね。
フコウエ:
そうですね。その意味では、先ほど生成AIにはビデオメモリなどのGPUパワーが重要になると話しましたが、良いものをつくるためには編集や合成などの作業も行うわけなので、そうなるとCPUパワーも大切です。エンコードなどは、パフォーマンスがCPUに依存するものもあるので。
僕の場合は、静止画を連番素材としてムービーに仕上げることもあるので、そのときにはPhotoshopで同時に100ファイルぐらい開くこともあります。After EffectsやPhotoshopは大量のメモリを消費するのでメモリ容量も重要になります。

——フコウエさんのような創作スタイルだと、総合的なマシンパワーが必要になるわけですね。
フコウエ:
どうしてもハードへの出費がかかってしまいますね(苦笑)
総合力という意味では、今回試させてもらった「SOLUTION∞ WORKSTATION」は全体的にハイパフォーマンスだと思いました。
GPUだけでなく、CPU(評価機は、AMD Ryzen 9 9950X)やメモリ(同128GB)などもハイスペックなもので構成されていることを実感しました。
——NVIDIA Studioプラットフォームにも正式対応しているので、ソフトウェアとドライバーの最適化により、商業レベルのCG制作から、実験的なAI生成コンテンツまで幅広く対応できるのは安心ですね。最後に、CGWORLD読者に向けてマシン選びのコツとかアドバイスをいただけますか?
フコウエ:
良いものをつくるにはマシンパワーが必要になると言いましたが、最初からハイスペックなPCを選ぶ必要はないと思います。
僕も最初に使ったマシンは3〜4万円のものでした。当時はニコニコ動画に投稿していましたが、映画館で流すわけじゃないので解像度は二の次というか、見た人が驚くようなアイデアや演出を考えることを大事にしていました。そうした意識が、今の活動にもつながっているかもしれません。
ハードについて勉強したいと思っている人は、BTOを利用すると効率良く学べるかもしれません。製品と一緒に内部を構成するパーツの空箱が同梱されていたりするので、どういうパーツが使われているのか知ることで、ハードに関する知識も増えると思います。
クリエイティブシーンにおけるNVIDIA Studio
GeForce RTX GPUの強力な性能をベースに、映像・3DCG・デザインといったクリエイティブ分野での制作効率をさらに高めるために設計されたのが「NVIDIA Studio」だ。ゲーム向けとされがちなGeForceシリーズだが、NVIDIA Studioではその力をプロフェッショナルな制作ワークフローに最大限活かすため、ドライバーや専用ツール、AI機能を組み合わせた統合ソリューションとして提供されている。
https://www.nvidia.com/ja-jp/studio/

https://www.nvidia.com/ja-jp/studio/
Studioドライバーは、AdobeやBlender、DaVinci Resolve、Autodesk Maya、Unreal Engineなど、プロフェッショナル向けクリエイティブアプリケーションの動作安定性とパフォーマンス最適化を追求しており、定期的なアップデートによって新機能や最適化内容が即座に反映される。これにより、制作中の予期せぬクラッシュや不具合を回避し、安心して高負荷な作業に没頭することができる。
また、NVIDIA StudioはGPUハードウェアの性能を活かした専用ツールも提供しており、「RTX Video」ではAIによるビデオ超解像・ノイズ低減を実現し、ウェブ上の映像体験を強化。「NVIDIA Broadcast」では、配信やオンライン会議を想定し、ノイズ除去や背景ぼかしなどの機能をワンクリックで提供する。さらに「RTX Remix」は、ゲームのグラフィックスをAIとRTXの力で自動リマスターできるなど、単なる高速描画にとどまらず、コンテンツそのものの質を高めるアプローチが展開されている。
特に3DCG分野では、RTコアによる高速レイトレーシングに加え、DLSS 3によるAI補完機能が効果を発揮。たとえばBlender CyclesやArnold、Omniverse USD Composerなど、リアルタイムプレビューが求められるワークフローにおいて、待ち時間の短縮とビジュアルの向上を同時に実現できる。
制作現場における「NVIDIA Studio」導入のメリットは明確だ。単にGPUを変えるだけでは得られない、ワークフロー全体の高速化・安定化・自動化による恩恵は、プロフェッショナルだけでなく、これからクリエイティブを志す若い世代にとっても大きな武器となるだろう。高性能なGeForce RTXを核に、Studio環境で創造力を最大限に引き出す。それが、次世代の表現を支えるNVIDIA Studioの本質なのである。
お問い合わせ
株式会社ユニットコム
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電話:0570-550-760
(受付時間:10:00~18:00 年中無休)
ナビダイヤルがご利用いただけないお客様は、下記の番号へご連絡下さい。
電話:03-4334-9034
(受付時間:10:00~18:00 / 年中無休)
FAX:06-6647-6014
www.pc-koubou.jp/shop_guide/information.php
INTERVIEW & TEXT_NUMAKURA Arihito
PHOTO_竹下朋宏