>   >  6年ぶりに日本開催となるSIGGRAPH Asia。開催を前に、前回(深圳)をふり返る!
6年ぶりに日本開催となるSIGGRAPH Asia。開催を前に、前回(深圳)をふり返る!

6年ぶりに日本開催となるSIGGRAPH Asia。開催を前に、前回(深圳)をふり返る!

<2>展示会場で体感する技術トレンド

展示ではこれといって目新しいものはなかった。
モーションキャプチャや3Dスキャニング、3Dディスプレイなど見慣れたものが並ぶ。

NVIDIA社がTech Talkスペースを大きく取っており、最近の技術トレンドをセミナー形式で紹介して盛況だった。

NVIDIA社のTech Talkスペース

入り口近くに大きなブースを構えたDigimania社
Unreal Engineを使ったレンダリングソフトウェア「Render Digimania」を大々的にアピールしていた。

しかし、デモの時間を決めている訳でもなく、人が集まったらやりますというノリなのでなかなか人が集まらないようだった。せっかくのデモなのだから、もっとやり方を考えた方が良いと感じた。

デモでは簡単なモデリングからレンダリングまでのワークフローを説明。使用用途としてこのソフトが中心になることはないと思われるので、Mayaなどのソフトウェアとどう連携できるかというところが重要だろう。

ゲームエンジンを使ったレンダリングソフトは今後利用される事も多くなると予想されるので、今後の展開には注目したい。

Digimania社ブースでRender Digimaniaデモ

Noitom Technology社がリリースしたモーションキャプチャツール「PERCEPTION」

Xsens社のMVNに似たシステムであり、体に各種センサーを装着する事により、人物の動きを収録する。各センサーのデータはワイヤレスでPCで受信される。

ワイヤレスの距離は屋内だと50m、屋外では100mだそうだ。日本で使う場合には電波法に觝触しないか心配。

MVNと同等の性能が得られるかはデモからはわからなかったが、操作性はかなり似ている。価格はMVNの1/3。どう展開されるか、今後の動向には注目である。

Noitom Technology社ブースでのPERCEPTIONデモ

奥に「EMERGING TECHNOLOGIES」と題し、大学で研究されている技術の紹介を行なっていた。

アジアでどのような研究が進められているのか興味を持って入ってみたが、ほとんどが日本の大学で驚いた。
画像処理をうまく使った技術であり、エンターテインメントに使えそうなもの、福祉等に使えそうなものなど様々だった。

もっとアジア各国での研究されている内容を見たかったが、それでも日本の大学の若者たちががんばっている姿は誇らしく思えた。

EMERGING TECHNOLOGIES会場

アジアの CG技術を見るために最も注目していたのが「コンピュータ・アニメーション・フェスティバル」である。

これは多くの作品を上映するアニメーション・シアターとその中から優れた作品を選び特別上映する「エレクトロニック・シアター」、作品制作に関わる「プロダクション・セッション」で構成されている。

エレクトロニック・シアター会場

アニメーションシアターにはできるだけ時間を取って見てみたが、これからのCG業界を担っていく学生作品が多く、非常に興味深いものだった。

米国SIGGRAPHでは学会的要素があるので、アニメーションシアターにもシミュレーションなどの研究成果が見られるが、SIGGRAPH Asiaではそういうものは全くと言って良いほど見られなかった。

エンターテインメント性が高く、ストーリーのしっかりしたアニメーション作品が大半を占めている。

中国というお国柄なのか、自国でなにか技術開発して作り上げるというよりは、既存技術を巧みに使い、ビジネスへ昇華していくという点を重視しているからなのかもしれない。

アジア諸国の作品では中国、韓国、台湾など多くのオリジナル作品、学生作品が上映された。内容的には多少残念さが残るものもあるが、全体としては非常にクオリティが高い。

日本の作品が非常に少なかったのが本当に残念。それを埋め合わせるかのように、メディア芸術祭の作品が別途紹介されていたが、それはちょっと反則のように感じた。やはり同じ土俵で勝負すべきだろう。

エレクトロニック・シアターにも参加。こちらはアニメーションシアター以上にエンターテインメント色が強く、学術的な内容は皆無だった。残念ながらアジアで選ばれていたのは日本と韓国がそれぞれ2作品だけ。

多くは欧米で中東とニュージーランドがそれに加わる。日本はアニメとゲームのムービーなので商業作品だが、韓国は2作品ともオリジナル作品だった事が素晴らしい。

プロダクション・セッションでは「Over the Moon」(審査員特別賞)という作品を制作したMedia Design School(ニュージーランド)の教育方法、「Little Yeyos」という作品を制作したLight Chaser Animation社(中国)によるメイキング、「ライフ・オブ・パイ」などのVFXを担当したBUF社によるインハウスツールの解説が行われた。

「Little Yeyos」
北京に拠点を置くLight Chaser Animation社が制作した作品

どのセッションも非常に興味深い内容だったが、これらを企画したスタッフが考えていたのはこれからのアジア(中国)のCG業界をどう進めていくかということだったのではないだろうか。どう教育するのか、今現状のワークフローはどうなのか、欧米がどういうスタンスなのか、それを強く感じた。それは日本でも同じだろう。

2008年の第1回から回を重ねてきたSIGGRAPH Asia。近年はその規模もだんだんと大きくなり、盛り上がってきたという話を聞いていた。

しかしながら、前回のSIGGRAPH Asiaは期待を遥かに下回る内容だった。アジアはハリウッドでも大きな市場として注目されている。この数年で技術力も向上した。それなのにこんな内容にしかならないのかと落胆した。

今年11月、第8回SIGGRAPH Asiaは6年ぶりに日本で開催される。2009年の第2回SIGGRAPH Asiaは横浜で開催されたが、今年の開催地は神戸だ。やはり、アジアを牽引できるのは日本しかないだろう。私も微力ながら貢献出来ればと考えている。どんな内容になるのか、今から楽しみだ。

SIGGRAPH ASIA2015 KOBEを紹介するブース

TEXT & PHOTO_山口 聡(ACW-DEEP


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