>   >  Houdiniアーティストの視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜
Houdiniアーティストの視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜

Houdiniアーティストの視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜

<3>そのほかのトランジスタ・スタジオが注目したDCCツール

ここからはExhibitionの展示から、筆者たちが注目したDCCツールをいくつかご紹介したい。まずはSideFXだ。同社のブースは連日盛況で、常に人があふれていた。ここだけを切り取っても、Houdiniの人気ぶりを大いに感じることができた。

Houdiniアーティスト視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜"

ユーザー事例やチュートリアルなども毎日開催されており、日本勢からは十十がリードVFXを務めた、きゃりーぱみゅぱみゅ『最&高』MVがCrowdの事例として紹介されていた

続いては、レンダラ。CG・VFX制作においてレンダリングは必須の工程といっても過言ではないが、それゆえにコストの増大に直結するレンダリング時間を、いかに削減していくか。そんな希望を叶えてくれそうな2つのレンダラを紹介したい。

ひとつ目は、Redshift『オーバーウォッチ』のシネマティクスやYouTubeで公開されている短編シリーズの制作に導入されたことでも知られる、GPUレンダリングに特化したレンダラだ。超高速なプレビューが可能で、美しいレンダリング結果を得られるという。

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  • Redshift公式サイト。SIGGRAPH 2016におけるRedshiftに関する情報は同社のブログ記事にまとめられている


・Photon Mapping GI Engine
・Brute Force GI Engine
・Irradiance Cache GI Engine
・ Irradiance Point Cloud GI Engine


......上記のように、V-Rayなど業界標準のレンダラと遜色の無いエンジンを搭載しており、十分にプロダクションクオリティを実現できる。
また1ライセンスあたりの年間利用料が500〜600米ドルと、比較的安価というのも魅力的だ。多くのDCCツールに対応予定であり、もちろんHoudiniにも対応予定である。GPUベースのレンダリングインフラの整備に初期投資は大きくなってしまう印象だが、単純に10倍速いレンダリング演算結果が得られるのであれば、その価値はあるのではないだろうか。特に日本ではレンダリングかける時間も予算も少ないのが実情だ。小規模プロダクションには要注目必見のレンダラだと思う。

2つ目は、Octane Render。OTOYが開発する、CUDAを利用したGPU特化のレンダラだ。比較的歴史あり、さらにここ最近注目のレンダラだ。OTOYのブースにはLightStageが設置されており、非常に目立っていた(同社の勢いを感じた)。

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Octane Renderは、先述のRedshiftよりもさらに安価(シングルライセンスで399米ドル)であり、すでに多くの実績もつことも魅力だ。今回は大きなトピックはなかったが、サポート面での安心感があり、導入しやすいと感じた

上記2つのレンダラはどちらもGPUを使用すると言う共通点がある。これまでの時間をかければ綺麗になる、という常識を覆す画期的なものだが、勿論これまでもそういったレンダラ存在した。上記2つは従来のリアルタイムレンダラっぽさがない、フィジカルで美しい結果を得ることができるように感じた。

そのほかにもClarisse(クラリス)やKeyShotなどの高速かつ美麗なレンダリング機能に定評あるツールのブースもにぎわっており、これからは高速レンダラに非常に期待がかかる。

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ClarisseのベンダーであるIsotropixのブース

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KeyShotのブース

さらにレンダリング処理を補佐するツールでも興味深いものを見つけた。InnoBright Technologiesの「Altus」で、これはレンダリング画像のデノイザーだ。
レンダリング結果で最も難儀なのがノイズの除去だ。このツールはその悩みを高品質に解決してくれるという。レンダラを問わず利用できるというのも魅力だろう。

Altus_1_500_Video_GUI from Raghu Kopalle on Vimeo.

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InnoBright Technologiesのブース。デノイザーのAtlusは、まだ筆者も試せていないツールなので、使用感が不明だが、フィジカルレンダリングにはノイズが付き物で、消すまでには長時間の演算が必要となる。それを画像に対して後処理できるのであれば、大いに期待したい

今回のSIGGRAPH滞在を通して感じたことは、新しいCG新時代の幕開けだ。VRビレッジなどに見られるリアルタイムやインタラクティブなどを見てもそうだが、RedshiftやOctane Renderなどみ見られる高速プレビューやGPUアクセラレーションのレンダラ。これらはどれもリアルタイム性を秘めている。

また、HoudiniやFabric Engineに見られるプロシージャルなワークフローも大きな存在感を示していた。数年前までは大規模なインフラを有するプロダクションのセッションに圧巻されて、日本ではあまりに遠い世界に思えていたが、ここに来てようやく海外のプロダクションでも低コスト重視のワークフローが重要視されるようになっていることがわかった。これは日本にとっても非常に参考になるものだ。改めて高速(短納期)&高品質、そしてさらなる低コスト化が、CG・VFX制作の現場でも求められる時代なのだと痛感した。言い換えれば、今まで以上に最新技術や海外の事例に関する情報収集、そしてそこから得た知見を実制作に反映することが重要になってきているわけだが、SIGGRAPHへの参加はその有効手段の最たるものと言えるだろう。

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