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3ds Max+After Effectsでつくるセル調エフェクトで、陥りがちなポイントとその解決方法

3ds Max+After Effectsでつくるセル調エフェクトで、陥りがちなポイントとその解決方法

Point 02
細いシルエットの煙エヘクト

ここまでSuperSprayとそれにインスタンスするオブジェクトの加工、陰影の入り方を調整するなどしてつくる「形のはっきりしたモコモコした煙」について記述してきましたが、経験の浅いCGアニメーターの陥りやすい罠として「なかなかセルに馴染むようなねらった形のエヘクトにしにくい」、「プラグインを使いこなせない」等、「教わったつくり方以外の方法になかなか昇華していけない」傾向がありました。

煙の形は一様ではなく、量感のあるものから、ほとんど実体のない霞のようなものまで際限なく姿を変えていきます。だからそれに合わせてねらった効果を得るために効果的な方法をその都度採るべきなのです。


例えば次の連番画像を見てください。これは「タバコの先から漂うような細いシルエットの煙」を想定してつくったものです。「煙の送り」といったものもキチンと見て取れてそれらしい煙になっているはずです。これを前述のSuperSprayを使った方法でつくろうものなら困難を極めるでしょうし、はたまた流体エフェクトプラグインを使ったとしてもそこにかかるトライ&エラーは大きな手間となります

結果これは、何の変哲もない平面オブジェクトにノイズモディファイヤで送りをつくり、シェルモディファイヤでわずかに厚みをつけてFFDで変形、パス変形をかけて数十分程度で作り上げた簡単なものです。これでも十分に「それらしく」見えるのがわかると思います

Point 03
火・炎のエヘクト

「エヘクト読本」で紹介している火・炎のつくり方では、こちらも基本的にはSuperSpray(これに限らず他のパーティクルエミッタを使用してもOK)に炎の「火の粉」のシルエットとなるオブジェクトをインスタンスしてボンボンと火を起こすながれで作成しています。


平面オブジェクトにBendモディファイヤを2つ、2方向に折り曲げたものをインスタンスしています。なぜこの形か、と言われると答えに困りますが、下手にディテールのあるテクスチャを貼り込んでしまうと、パーティクルで発生させたときにキメが細かくなりすぎる印象があるからです。大量に発生させるのだから、思いきりシンプルにこのくらいスッキリしたシルエットのものの方がちょうど良いと考えます。曲げるのは、どの角度からでも何かしら形が見える形状になるからです



  • 変形させた平面オブジェクトをパーティクルにインスタンスします



  • レンダリングしたもの。質感はデフォルトのまま。むしろ質感はあまり関係なく、気にするべきはシルエットです。セル調の画というのは(私的解釈ですが)描線やシルエットの方に重きを置くことが多いので、正確な質感等は二の次という気がします。だからといって簡単かというとそういうことはありませんが......


[C]の素材をAfter Effectsに取り込んでポスト処理を施したもの。ここまでおおむねセルアニメに見た目が馴染むつくり方ですが、作品によってはもう少し炎の表現に質感を足したほうがいい場合もあります。一度削った情報量をまた改めて整理して足し込むという普通CGではやらないプロセスだと思うのですが、ねらった表現にできるなら手間は惜しみません


通常、炎のシルエット内にディテールを足すとなると、撮影処理の段階でノイズを貼り込んでいく方法もありますが、これはそれを3Dの作業工程でつくってしまおうというもの。[F][G]は、パーティクルエイジマップを使って、発生から消滅まで温度変化に相当するテクスチャアニメーションの作成過程です


[E]の画のコントラストを上げるとこんな感じになります。白→黄色になっているところまでは燃焼していて、赤くなっているあたりはAfter Effectsでキーイングして削除します


[E]の画と[H]の画を合成。[D]の画と比較して一番燃焼して見える付近がより明るく発光し、さらに[E]の画のノイズのテクスチャ部分も加味されてディテールがほどよく入った炎になっていると思います。今回はCGにAfter Effectsによるポスト処理を経てセル調に落とし込むやり方をベースに説明しましたが、実写映像や流体プラグインのレンダリング画像に同様の処理を施すやり方でも何ら問題はないと思います。セルアニメ作品を観ていても炎の動画にグロー処理を加えただけのものもあれば、テクスチャを貼り込んでいるもの、実写映像をはめ込んだものなど、表現は多様です。火・炎のCGをカットでつくる必要がある=3DCGで作成というながれに無理矢理はめ込むのではなく、カット内容に応じた最もやりやすい方法を採るのがベストだと思います

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Point 04
細いシルエットの煙エヘクト

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