Point 04
水エヘクト
前述の煙、火・炎と比較して難易度が高めな水エヘクト。おそらく前2つが気体であるのに対して、水関連は液体を扱うゆえに、難しく敬遠されがちなのではと思います。ただ、それだけに動きを意図通りに制御できたときの達成感はひとしおのはず。仕事で求められる頻度はそれほど多くはないかもしれませんが、筆者のやり方は「エヘクト読本ver2.0」で記載しているので詳しくはそちらも参照してください。
水エヘクトのつくり方の基本は、「水=流体プラグインが必須」といった考えからいったん離れて、水の流れの要素をいくつかに分けてつくった後、それぞれを最終的に合成させることです。いたって単純なようですが、これは高度な合成を必要とするCGであってもおそらく同じようなつくり方をするはず。要は出来上がった画が「それらしく見えれば問題ない」のです
これは水の弾けた滴のシルエットをパーティクルインスタンスを使って作成しているのですが、水のスケール感を出すためにキメを細かくすればするほどメッシュの数が輪をかけて増えてしまうため、シーンが重たくなってしまいます。ここで水のスケール感を出そうとする場合は、よりキメの細かい飛沫を飛ばす必要があるのですが、それをやる場合「よりサイズの小さい飛沫をパーティクルでつくる」のは得策ではないと思います。例として巨大な滝壷の動画などを見て観察してみると、滝の落差やスケールが大きいほど水の飛沫は霧状→ほぼ煙状になり、粒としての実体を留めなくなります
なので、大きさを出す場合はとてもキメの細かい粒もしくはガス状のもので問題ないわけです。ここでパーティクルインスタンスオブジェクトではなく、はじけ(splat)を合成して作成した「タタキ」マップ[D]をパーティクルタイプの四辺形(Facing)にアサインして飛ばします
レンダリング結果。ここでは少し色味を足しています
[E]の素材を合成。別途ぼかした素材等も足して雰囲気を出します。もちろん見た目だけでなく、動きも併せてスケール感を出すことも忘れずに
こちらは「エヘクト読本」に掲載している「船の波の掻き分けエヘクト」を表現したもの
これらの素材をそれぞれ組み合わせることで作成します
[H]の方法で作成しても問題ないと思いますが、ちょっと重くなりがちな方法のため、カット内に同様のエヘクトが多数存在(艦船が多数あるなど)すると制御が大変になってしまうので、連番テクスチャとしてコンバートしてしまうか[D]で作成したタタキマップを足すだけでも十分見映えがすると思います
合成結果。この感じの質感だと多分潜水艦の潜航などのガボガボする表現等にも十分使えます
総括
今回セル調エヘクトに関連することを、とお題をいただいて正直悩んだのですが、結果、別にセル調に限ったことではなくおそらく他のCG映像をつくる際にも留意すべきことを書いてみました。基本的にはできる限り簡単に、それでいて上手く組み合わせてそれらしく見せるポイントを押さえることです。
また、セルアニメの動きは元をたどれば実写の動きを記号的に落とし込んで表現しているものなので、セル画の見え方だけに囚われすぎると出来上がった画が単調で物足りないものになりがちです。そこはCGの利点である情報量の多い素材を活かすのもまたひとつの手だと思います。あとは他の人が作ったシーンファイルを(可能であれば)覗いて解析してみるのも効果的です。普段使っていないモディファイヤやマテリアル等を改めてひとつひとつ試してみると、「これはあの表現に使えそうだ」といった発見にもつながります。要は、馴染んで見えれば方法は何でもいいのです。そのくらいのスタンスでエヘクトづくりに向き合うのがコツかもしれません。