フォトグラメトリースタジオというビジネス
AVATTAの業務は基本的にBtoBがメインとなる。要望があれば個人からの依頼にも対応するが、主に業者からの受注のもと、TVやCM、ゲーム向けの人物の3Dデータ化等に活用されているという。全身やフェイシャルのフォトグラメトリー以外にも、空撮用ドローンを使った建物、レーザースキャナを使った内装など、小さなものから大きなものまで様々な撮影も取り扱っている。また、生成した3Dモデルのリトポロジーやリギングにも対応し、最近はモーションキャプチャ収録も手がけはじめたそうだ。「ここまでできるスタジオはおそらく世界中でもうちしかないと思います。現在はうちとしてもVRをプッシュしていて、業者に向けてVRコンテンツのヘルプなども行なっています」(桐島氏)。
なおAVATTAでは、今春に全身スキャナのスタジオをアップグレードし、夏頃にはスペキュラが作れるスキャナも新たに増設することで、よりハイクオリティなフォトグラメトリー撮影が可能になるという。
フォトグラメトリーの可能性
フォトグラメトリーの可能性は無限にあると桐島氏は語る。今までは実存する人間をリアルにつくることはハードルが高かったが、フォトグラメトリーによってそれが可能となった。実写のスタントシーンなど生身の人間が行うには難しいシーンの撮影で、フォトグラメトリーによって役者の3Dモデルを作成してデジタルダブルとして活かすこともできる。フォトグラメトリーの活用方法はこれからど んどん増えていくことだろう。
また桐島氏は、今後個人としても作品をつくっていきたいと話す。「僕がフォトグラファーとして30年近くやってきた中では、例えば日本の街中で撮る場合に本当はいらない電信柱やガードレールなどの背景が映り込んでも仕方なく妥協していた部分があります。しかしCGはある意味全て自分で作れる、妥協しなくてもよい世界なので、自分の思うようにクリエイションができる楽しさがあります。最近やっと自分の作品をつくる時間をもてるようになってきたので、CGアートやVRアートみたいなものをつくってみたいですね。ZBrushなど専門分野はその道のプロに任せて、ライティングなど自分のフォトグラファーとしての経験を活かすことに注力して面白い作品をつくりたいと思います」(桐島氏)。
2016年はVRやARなどひと昔前までは夢だった先端技術が、ゲームなどを通してわれわれ一般人の身近なものとなった印象的な年だった。今後それらの技術との組み合わせがさらに進めば、フォトグラメトリーの可能性は大きく広がりをみせていくにちがいない。
Topic 高精細な3Dデータの生成
フェイシャルの例。
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フォトグラメトリーによって撮影された写真から生成された桐島氏の3Dモデル。ZBrushに読み込みブラッシュアップしていく
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完成した3DモデルをCGシーンの中に置いた状態。かなりハイクオリティな出来上がりだ
ポリゴン表示した目のアップ。かなりのハイメッシュだとわかる
Topic 作品事例
NHK大河ドラマ『真田丸』用にAVATTAで撮影した写真から生成された3Dモデル。大量のエキストラが必要な場面等で3Dモデルがあると、群衆シミュレーションなどに用いることができるため有用だ
NHK大河ドラマ『真田丸』 ©NHK
Noah's"Flaw"MVの例。100台以上のカメラでの同時撮影により、被写体がポージングした状態での撮影も行える。被写体の独特なポーズが活かされた事例だ
Noah's" Flaw" by Takcom・NOWNESS
©2015 flau・TAKCOM・P.I.C.S・McRAY
Topic フォトグラメトリーによる3Dデータの活用
『月刊ドロンジョ doronjo by 御伽ねこむ』の例。
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Aポーズで撮影した御伽ねこむ氏の写真に衣装のオブジェクトを加え、ボーンとリグをセッティングしたもの。この3Dモデルをポージングさせる
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3Dモデルにポーズを付けた段階。衣装はMarvelousDesignerで作成された
『月刊ドロンジョ doronjo by 御伽ねこむ』 ©タツノコプロ
オリジナルのフォトグラメトリースタジオを構築するには?
フォトグラメトリーは撮影するカメラの台数が多ければ多いほど、綺麗な3Dデータが作りやすくなる。AVATTAでは現在、120台のカメラを使って撮影を行なっているが、桐島氏が会社設立時にどのくらいのカメラの台数がベストか試してみたところ、40台くらいだと3Dデータのクオリティ面で厳しさがあり、60台でもデータに穴が開く部分が出てきたという。もちろんカメラ台数が少ないほど設備投資費用はかからないが、事業としてはじめるにはクオリティの高い3Dデータが求められるため多くのカメラが必要となり、高額な初期費用がかかったそうだ。しかし撮影のしくみ自体は比較的シンプルで、個人でもチャレンジすることができる。そこで、低コストでフォトグラメトリー撮影をする方法を桐島氏に聞いてみた。
ここで紹介するのは、ターンテーブル式という方法である。おおまかに説明すると、まずエントリー レベルの一眼レフカメラを6~7台用意し、それを重さに耐えられるようなスタンドへ縦一列に取り付ける。そして市販されているモーター付きのターンテーブルに人やモチーフとなる被写体を動かないように立たせ、ターンテーブルを回転させながら1秒おきに同期したカメラで写真を撮る方法だ。シャッターを同期させる方法はいくつかあり、ケーブルの種類などカメラメーカーによって方法は異なるが、自作をしたりWi-Fiを使ったりする方法がネット上にあるので調べてみてもらいたい。
データはメモリカードを使うと1台1台取り出してデータを読み込まないといけないため、USBケーブルを用いるのが良いとのこと。ライティングは方向性のない光が好ましいため、強いLEDライトと、できればソフトボックスのような物を付けて使用すると理想のライティングに近付ける。ソフト面ではカメラの同時制御にKuvacodeのSmartShooterが、3Dデータ生成にAgisoftのPhotoScanがオススメとのこと。また、PCは当然ハイスペックなほど現像スピードが速くなるので予算が許す範囲で選択したい。
このように6~7台のカメラ、ライト、ターンテーブル、ケーブルなどの備品、ハイスペックなPC、Smart Shooter、PhotoScan等があれば50~100万円の予算でハイクオリティな3Dデータが作れるという。ここで紹介したような環境を整えることができる方がいれば、一度試してみるのも面白いかもしれない。
INFORMATION
AVATTA
所在地:東京都港区芝公園 2-11-20 Tel:03-5425-6556
avatta.net
『月刊ドロンジョ doronjo by 御伽ねこむ』
提供:Mファクトリー、制作・アタリ/AVATTA
©タツノコプロ
NHK大河ドラマ『真田丸』
制作:NHKエンタープライズ
©NHK
Noah's" Flaw"by Takcom・NOWNESS
ディレクター:TAKCOM、制作:P.I.C.S.
©2015 flau・TAKCOM・P.I.C.S・McRAY