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キャラクター制作から運用まで! リアルタイム向けキャラクターモデリング&Unreal Engine 4への実装

キャラクター制作から運用まで! リアルタイム向けキャラクターモデリング&Unreal Engine 4への実装

3 キャラクターのモデリング

01 ゲームモデリングのワークフロー

ゲームモデリングの一番の特徴は、実際に使用する「ローポリゴンモデル」と、実際には使用しないディテール転写用の「ハイポリゴンモデル」の2種類のモデルをつくり、ローポリのUVにハイポリの形状をベイクする手順が一般的であるということです。用途に応じてローポリゴンに頂点法線のみを設定してモデルを運用する場合や、ハイポリモデルを用意せずにディテールのみを手作業で追加する方法もありますが、いずれの場合もポリゴンを過度に節約したモデルに対して厳密な法線設定をするのがゲームモデリングの醍醐味です。以下の図にゲームエンジンに向けたモデリングの一連のながれをまとめました。本記事ではリアルタイムで運用するものを「ローポリ」、運用しない前提のものを「ハイポリ」と呼称しています。


02 ポリゴンモデリングでこそ力を発揮する「ZBrush」

ZBrushはハイポリとローポリの状態を互いに維持したままモデリングができるマルチサブディビジョンメッシュ編集機能があるため、テクスチャベイクに必要なハイポリとローポリが同時に作成できます。また、頂点ペイントでアルベドを塗装したり、モーフ差分形状をレイヤーに登録してMayaのブレンドシェイプに書き出すことができるため、アニメーション制作にも欠かすことができません。

特にZModelerという強力なポリゴンモデリングに特化した機能を使うことでハードサーフェスやサブディビジョンサーフェスモデリング、ローポリモデリングをすることが容易になりました。今回のSotaiChanや背景オブジェクトの数々は全てZModelerでローポリを構築した後、分割を増やしハイポリをつくり込んでいます。特に注意した点は、各要素の断面ごとにエッジループを構築したことです。断面形状をシンプルにすることで、形状の制御がしやすくなります。

SotaiChanの最終総ポリゴン数は約6万ポリゴンに抑えました。著者はリアルタイムで運用するキャラクターはモバイルコンテンツで1,000~1万ポリゴン、PCやコンシューマ向けなら1~15万ポリゴン程度に抑えるように注意しています。

ハイポリからローポリを作成



表情差分(モーフ)を作成


03 和製モデリング特化ソフト「xismo」①~面張りモデリング~

ZBrushの唯一苦手なことが、何もないところから頂点を配置して面を張る"面張り"モデリングやトポロジー構造の変更です。そこを完全にカバーできるDCCツールのひとつが「xismo」です。そして驚くことにこの高機能なソフトは作者のmqdl氏によりひとりで開発されていて、完全に無料で公開されています。活用しない理由が見当たらない大変優れたソフトです。


04 和製モデリング特化ソフト「xismo」②~モディファイアで髪を作成~

「xismo」のヘアモディファイアはわずか3クリックから美しい曲線のポリゴンヘアーを生成できます。線ポリゴンという独特の概念を使用しますが、ナーブス曲線を点で制御してヘアーを生成するのと同じアプローチです。板ポリ、チューブ、キャップの有無、断面の指定、UVも自動生成されます。長い間、手間に感じていたアーモデリングが「xismo」の登場で一気に楽しいものへと変わりました。分割密度さえ気をつけていれば、ヘアーの結合も容易でGeoMayaHairやOrnatrixなどと組み合わせることでリアルなスプラインヘアー、ゲーム用のベイクドヘアーにも変換可能です。ヘアーモデリングを苦手と感じている方はぜひ一度試してみて下さい。

3Dモデリングソフトウェア「xismo」
mqdl.jpn.org

05 Marvelous Designerで服飾モデリング

クロスシミュレーションを利用した服飾モデリングは昔から行われていましたが、複雑な手順が要求される敷居の高いものでした。しかし、Marvelous Designerの登場でその常識は覆りました。UV上で型紙からポリゴンを生成した後、3Dビュー上でクロスシミュレーションをかけながら素体に服を着せていくという、通常のモデリングとはまったく逆の、現実世界の服飾デザインと同じ方法で衣装をデザインすることが可能です。近年、縫い目やボタンなどを作成する機能も追加され、外部ソフトとの連携が必要なくなりました。3DCGのモデリング技術ではなく、実際の服飾スキルで勝負できる時代に原点回帰したのだと実感しています。

06 UV展開

UV展開を面倒に感じている方は多いと思います。今回はプロシージャルテクスチャで髪を運用するため、矩形(マス目状に)開く必要があり、苦労の末MODOにたどり着きました。UV展開ができるそれぞれのツールに特徴がありますので、オススメのUV展開ツールを3つ紹介したいと思います。

UVMaster


ひとつ目は、ZBrushの「UVMaster」です。ワンタッチでUVを開いてくれて、Polygroupを分けたり、ZModelerと併用することでUVレイアウトも可能です。手早くUVを開きたいときに便利ですが、細かい調整は全て手作業になってしまい、時間がかかりがちです

3D-Coat


「3D-Coat」は複数枚のテクスチャ、複数のオブジェクトをまたいだUV管理が得意で、今回比較検証した中では最も思い通りにUV展開が可能でした。しかし、マス目状に展開することが苦手なためハードサーフェスのUV展開には不向きかもしれません。矩形のUV展開を必要としない場合は最速のUV展開ツールだと思います

MODO


MODOは最新のアップデートでUV機能が非常に強化され、UV構造を破壊せずにモデリングとUV管理を同時に行えるなどの強みがあります。また、矩形ツールがあり、正確なエッジループで作成したモデルであれば綺麗な矩形展開が可能です。他のツールにはできない部分に手が届くので非常にオススメです

07 スムージンググループの設定

ゲームモデルにはスムージンググループの設定が必要です。モデルを構成する各ポリゴンの頂点はそれぞれに描画向き(頂点法線情報)があり、共有する頂点の方向が一致しているか否かでローポリモデルの見た目が大きく変わります。エッジに対して設定することをソフトエッジ/ハードエッジ、フェース単位で設定することを一般的にスムージンググループと呼称します。ノーマルマップを使用せずに法線を制御する方法なので、ノーマルベイクが難しいポリゴンヘアーのエッジを立てる際などに有効なアプローチのひとつです。著者が比較検証した中ではMODOが一番簡単で、自由度の高い設定が可能です。

08 テクスチャベイク

ハイポリのディテールを焼き込むためにベイカーを使用し、各種ライトマップや形状の差分マップをベイクします。ベイクの工程でオススメしたいのはベイク領域を可視化し、調整できるKnald、Toolbag、3D-Coatです。重なった領域が干渉しないように名前の一致したメッシュ同士でベイクすることが基本ですが、SotaiChanのリボンのような複数のパーツが重なり合った"ぶっ刺し"でつくられたメッシュは、UV展開後にベイク用のオブジェクトを分け、シェルをバラバラに離すエクスプロードと呼ばれる処理をする必要があります。また、このときに必ずスムージンググループを設定するのを忘れないでください。


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4 テクスチャとマテリアル

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