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1,000万色以上を表現する最新UV硬化インクジェット3Dプリンタで挑戦! ゲーム用モデルでフルカラーフィギュアをつくる

1,000万色以上を表現する最新UV硬化インクジェット3Dプリンタで挑戦! ゲーム用モデルでフルカラーフィギュアをつくる

Topic 2 フルカラーデジタル原型の制作手順

型による複製を前提としないフルカラー3Dプリントはこれまでの原型制作と異なり、ほとんどの形状を一体化して出力することになります。また、テクスチャを維持したままのトポロジー編集が必要になり、完全に新しい視点で原型データを作成する必要があります。

ゲームモデルをフィギュアにつくり変えるロジック

CADにはソリッドとサーフェスという概念があるのはご存じでしょうか。現実の世界にデータを出力するためには、サーフェスのように質量のないただの板ではなく、中身の詰まっているソリッドと同じ状態にする必要があります。今回はテクスチャを使用するためCADではなくUV展開情報をもったポリゴンメッシュを使用しますが、ゲーム・映像向けモデルは中身を詰める必要がないのでサーフェス状のメッシュで構成されていることが多いです。そのため、ソリッド同様に中身が詰まっていると認識させるためにサーフェス状のポリゴンメッシュに厚みを付けたり、蓋をして閉じたトポロジー構造を形成する必要があります。また、テクスチャを維持させるためにUVを破壊せずに編集することが大切です。

出力できるように厚みを付ける

ZBrushのモーフを使用し、UVを維持したまま厚み付け

トラブルから学ぶ最適解への逆説的アプローチ ~①ゲームモデルをそのまま出力した場合~

出力時の写真をよく見ると黄味がかったサポート材とは別に、真っ白な柱状の樹脂が形成されているのが確認できると思います。これを私たちは「角」や「ホワイトファング(白い牙)」と呼称しています。閉じていないエッジ「バッドエッジ」があると質量のないサーフェスと認識され、エラー形状としてこの「角」が生じてしまいます

トラブルから学ぶ最適解への逆説的アプローチ ~②厚みを付けた後に起きたトラブル~

裸の上に服を着ているような重ね合わせ箇所では厚みを付けて埋め込む必要がありますが、肌と服が近く下地の色が透けてしまう場合や、下記の画像【A】の帯部分のように厚みを付けてもきっちり埋まっておらず、分離した半透明の薄い被膜になってしまうことがあります。また、【B】はゼロ距離の「合わせ目」が二重線として濃い線で出力されてしまったトラブルの例です。さらに、【C】は厚みを付ける際に裏のメッシュが表を突き抜けてしまったもので、これは形状が薄く脆くなるだけではなく「角」を誘発してしまいます

ゲーム用のモデルを活用した原型制作のおおまかなながれ

3Dプリントに用いる拡張子

通常、3Dプリントに用いるデータの拡張子は「stl」形式が一般的です。しかし、「3DUJ-553」はフルカラー対応のため、色情報をもたせる必要があります。ZBrushなどで頂点カラーをもたせる場合は石膏プリンタと同様に「ply」や「wrl」で出力するのが最も安定しています。

しかし、「3DUJ-553」の真骨頂は「obj」形式で"UV展開"情報をもっている場合、「jpeg」や「png」などのテクスチャが使えるということです。複数テクスチャがある場合はマテリアルを分け、それぞれに対応するテクスチャを割り当て、紐付けする必要があります。各種ソフトでテクスチャを割り当てると「mtl」というファイルが生成され、それが紐付けをするためのマテリアル情報のファイルとなります。

「obj」で入稿する際は、右記のようにテクスチャごとにパーツを分けておくと管理修正が楽になります。複数のテクスチャをひとつのobjファイルとmtlファイルに紐付けするのは、修正の手間やトラブルの原因になります。また、パーツを分けておくことで3Dプリント時のレイアウトがしやすくなります。

データの拡張子とレイアウト

今回の「SotaiChan」のデータ

レイアウト

フィギュアの出力

出力時は右記のように水溶性のサポート材に埋まるようなかたちで出力され、その後、積層跡の処理をしたら完成です。本企画でフルカラー3Dプリントに興味をもった方がいましたら、企業であればデータ制作や運用に関しては筆者に、グッズやフルカラーフィギュア出力のご依頼でしたらホタルコーポレーションにぜひご相談ください。また、個人で「3DUJ-553」を使いたいという方は「3Dayプリンター」もしくは「ロイスエンタテインメント」の3Dstudioの出力サービスから依頼して、発注の際にホタルコーポレーションを指名していただくという方法もあります。ぜひフルカラーフィギュア制作にトライしてみてください。

出力したフィギュアと各プリントサービス

出力されたフィギュア

積層跡をきれいに仕上げる

既存のどの3DプリンタやCNCにも共通することですが、層を積み重ねる(もしくは削る)ように造形をするため、ピッチを上げてもよく見ると積層跡が残ってしまいます。そのため、ヤスリをかける仕上げ作業が出力後の処理の定番となっています。「3DUJ-553」の出力物も既存のものと同様に積層跡がわずかに残ります。そのためヤスリがけをすることで表面が滑らかになり、仕上がりが良くなります。しかし、「表面には色の付いた薄い層がある」ためスリをかけすぎると色が剥げて地のレジンが出てきてしまいます。ヤスリがけには気を遣い、最終的には用途に応じて「つや消しクリア」「光沢クリア」などの「トップコート」を吹きかけ、細かい凹凸を埋めることで綺麗な曲面で綺麗な発色のフィギュアに仕上がります。最後の一手間を加えることで積層が消え、一段とクオリティが高くなるので、ぜひお試しください。

コート剤を吹くことで積層跡が完全に消失します

色見本で比較。手前が未処理で、奥がコート処理したもの

協賛・全面協力

本企画では「3DUJ-553」を開発したミマキエンジニアリングに材料などを支援していただき、実際の出力や検証をホタルコーポレーションの福永本部長にご支援いただきました。ホタルコーポレーションは螢印刷グループの中でもUVプリントやレーザー加工などの最新印刷技術に特化した企業で、本企画で取り上げた「3DUJ-553」をいち早く導入した先進的なファクトリーです。"フルカラーUV3Dプリンタ"という新しい分野において多くのノウハウがあり、今回の企画でも何度も助けていただきました。このたびはありがとうございました。

株式会社ミマキエンジニアリング/japan.mimaki.com

株式会社ホタルコーポレーション/htc.hotaru-printing.com



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