Topic 3
「オリジナル短篇アニメ『The Lamp Man』について」
by Live2D Creative Studio
『The Lamp Man』
www.live2dcs.jp
社内制作スタジオ初のオリジナル短篇メイキング
Live 2D社内で技術支援・作品制作を担当するクリエイティブ部門「Live2D Creative Studio」。同スタジオ初のオリジナルIP作品として制作された短篇アニメ『The Lamp Man』の上映とメイキングに関するセッションが、サブホールで行われた。『The Lamp Man』は、Live2Dの一番の魅力である手描きイラストのもち味をそのままにキャラクターを動かすことができるという特色を活かして「絵本のようなビジュアルとストーリー」をテーマに制作された作品だ。
監督を担当した雲井聖司氏は過去に手描きアニメーターとしての実務経験があり、従来の手描きアニメーション制作とLive2Dを使用したアニメーション制作のワークフローを比較して説明。Live2Dで制作するアニメは絵の素材を早い段階で用意する必要があるため、最終的な画面の雰囲気を早くからスタッフ間で共有できる利点がある。また、リテイク時の手戻りが少なく効率的に対応できる点もLive2Dならではの強みと言える。手描きではコンポジット段階から動きを修正しようとした場合原画から修正する必要があり、動画・仕上げの工程全てを再度行う必要がある。しかしLive2Dの場合は1工程戻ってアニメーションを付け直したり、元のイラストを差し替えたりするだけで修正が完了するため、無駄な工数を省いてより動きにこだわったアニメーション制作が可能となる。
続いて同作のポイントとして、アートディレクターを担当した川上遼太氏よりモデルに関する解説が行われた。メインキャラクターは様々なカットで使い回せるよう汎用性の高い基本モデルを制作し流用された。まずは各パーツがX軸方向に360度回転できるモデルを設計し、Y軸方向への起き上がりに対しては、基本モデルを流用して差分モデルを作成・追加して組み合わせた。これらモデル同士を繋ぎ合わせて切り替えることで様々なパターンの拡張を可能にし、より広い可動域を実現させている。また、Cubism 3.0の新機能「パーツ移植機能」が実装されたことでパラメータごとパーツの移植が可能になり、作業効率が飛躍的に上がった。その他、Cubism 3.1のβ機能として予定されている「スキニング」が試験的に使用されており、キャラクターによりいっそう愛らしさを与えていた。この機能は、1つのアートメッシュに複数の回転デフォーマを設定できる仕様で、10段以上の多段振り子の設定を一瞬で行えるというもので、本作では主にランプシェードのひもの揺れに使用されており、非常に滑らかで豊かなキャラクター性を与えることに成功している。これらの新機能とテクニックを駆使した『The Lamp Man』は、「Live2Dっぽさ」を良い意味で感じさせない新たなステージへの挑戦でもあったようだ。
「ランプマン」のキャラクターデザイン
-
Live2D Creative Studioによる短編アニメ『The Lamp Man』
-
モデル制作前のデザイン画。主人公の「ランプマン」は、ランプシェードの中に顔のシルエットが浮かんでいるのが特徴だ
-
ランプシェードの表面と同じ形状の影の色をしたパーツを作成し、ランプシェードが重なる部分(頭と体と腕のパーツ)にクリッピング
-
【左画像】をランプシェードの表面と同じデフォーマに入れると、ランプシェードを動かしてもランプマン本体と重なった部分だけ影になる。ランプシェードが立体的に大きく動くように設定すれば完成
手描きアニメーションとの制作フローの比較
-
作画アニメではコンポジットの段階までキャラクターと背景色の付いた素材が揃わないが、Live2Dで制作する場合ではイラスト段階で素材が揃うため、かなり早い段階で完成イメージをスタッフと共有できる
-
可動域の問題を気にせず描かれた画コンテ
-
画コンテを基にしたレイアウト。映像の構図やキャラクターの位置、カメラワークを決定
-
レイアウトを基に原画となるイラストを制作。パーツ分けはこの段階で行われる。主人公のランプマンは基本モデルを用意しているのでここでは描かない
Live2Dの機能を余すところなく駆使
ランプマンが棚から落ちて起き上がる一連のシーンでは、モデルを切り替えることで表現を拡張。電気が消えている状態のモデルAから、床に落ちて電気が点灯した瞬間にモデルBに、そのままフレームアウトしてカメラがパンしている間に起き上がりモーション専用のモデルCに切り替えている。完全に立ち上がったところで基本モデルに戻す