>   >  歴戦のシェーダ強者が集った「リアルタイムトゥーンシェーダー徹底トーク」~Unite Tokyo 2018レポート(4)~
歴戦のシェーダ強者が集った「リアルタイムトゥーンシェーダー徹底トーク」~Unite Tokyo 2018レポート(4)~

歴戦のシェーダ強者が集った「リアルタイムトゥーンシェーダー徹底トーク」~Unite Tokyo 2018レポート(4)~

<3>モデラーとシェーダの関係

続いては「モデリングチームとの連携の上で、なにか興味深いエピソードはありますか?」という質問。岡本氏は「インゲーム開発の場合はプログラマーがシェーダを書くので、アーティストはモデリング、UV調整、テクスチャの作成になります。ただ、PS2時代に車に反射が再現できなかった際は、プログラマーに法線編集ツールをDCCツール上に実装してもらって、疑似環境マップとして法線を直線にした車を走らせたりしていました」とコメント。

また、自身もモデラーだった本村氏は「モデルとシェーダは一対の設計をしないといけない。『GUILTY GEAR Xrd』のときはモデラーが4名程度と小さいチームでしたが、そのおかげでマンツーマン指導ができていました。勉強会などの甲斐もあって、社内のモデラーは半分くらい自前でシェーダが書けるようになっています」と、モデラー自身がシェーダを書くことの重要性を説明。

また、「外部のプログラマー、GOTETZ氏に頼んで作ってもらったツール」としてSoftimage用法線編集ツールセット「User Normal Translator」の例を挙げた際には、京野氏はGOTETZ氏と本村氏の協業に驚いた様子で、小林氏も「UnityのNormalPainterをつくったのはそれ(User Normal Translator)を見たから」だと補足していた。

「User Normal Translator」に着想を得て開発された、Unity上でポリゴンモデルの法線編集を可能にするツール「NormalPainter」

<4>「影(シャドウ)」と「陰(シェード)」をどう扱う?

「影(シャドウ)」と「陰(シェード)」の取り扱いについての質問に対しては、まずは小林氏が「セルフシャドウはアニメにおいては演出的な意図があるときのみで、"手を振ったらその影が顔の前でフラフラしている"ということはない」と説明。岡本氏も、レンダリングをすれば影が勝手に落ちるということはなく、きちんと影を用意してあげる必要があると語った。

一方、本村氏は実際の2Dアニメを参考にして、「シャドウとシェードの他にアンビエントオクルージョンも認識する必要があります。アニメだと、空を飛んでそのまま消えていく、といった表現をする際、キャラクターが上昇するにつれ影が小さくなって、最後は消えます。これはアンビエントオクルージョンだと思います。セルフシャドウも、物と物が接触していることを表す際には必要です」とコメント。また『GUILTY GEAR Xrd』ではモデルに複数の情報を仕込んでおり、素材感を出すために影色も調整することもあると語った。

「血色の良い人間を表現するなら赤色の影を落とすべきだし、青い空の下にいるなら青っぽい影を落とすべきで、本来は両方が合わさって紫の影が落ちるのが本当はベストかも知れません」と、素材感などは色で指定できることを示した。また、同じくアークシステムワークスから発売されている『BLAZBLUE CENTRALFICTION』のゲーム内の手描きアニメパートを確認しながら、「(アニメの場合は)カメラの方向を問わずキャラクターのシルエットがちゃんとわかれば良い」と説明した。

京野氏も本村氏の"影を機能として考える"という意見に賛成し、「複雑な光源処理ができなかった時代はテクスチャの色で表現するしかなかったのですが、奥まっているところはただ濃くするかと言われたらそれはダメで、影色とセットで考えていました。2号影に明るい色を入れると照り返しの表現になる、ということもある」とコメント。また、小林氏も「『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)の頃は2号影が流行っていましたが、その後はしばらく影が出てこないアニメが増えました。その時々で流行の見せ方がある気がします」と述べた。

<5>レンダリングはフォワードか? ディファードか?

5つめの質問は、レンダリング手法の2本柱、フォワード・レンダリングとディファード・レンダリングのちがいをどう捉え、トゥーンシェーダ開発にあたってどちらを選択するか、というもの。これには、岡本氏、本村氏ともにフォワードレンダリングを選択。岡本氏は「Mayaがフォワードレンダリング」としながら、GDC 2018で発表された「Clustered forward Rendering」などを引用してフォワードレンダリングがまだ現役かつ新規性があることを強調した。

本村氏は「ディファードレンダリングは光源をたくさん使えるなどの利点はありますが、現段階ではフォワードレンダリングです。Gバッファなどが細かく、かつ手軽にいじれるようになると変わるかも知れません」と回答した。

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<6>輪郭線表現のあれこれ

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