>   >  歴戦のシェーダ強者が集った「リアルタイムトゥーンシェーダー徹底トーク」~Unite Tokyo 2018レポート(4)~
歴戦のシェーダ強者が集った「リアルタイムトゥーンシェーダー徹底トーク」~Unite Tokyo 2018レポート(4)~

歴戦のシェーダ強者が集った「リアルタイムトゥーンシェーダー徹底トーク」~Unite Tokyo 2018レポート(4)~

<6>輪郭線表現のあれこれ

質問:その6はトゥーン表現の重要なポイントである輪郭線(ライン)について。これに対し、岡本氏は「XSI Toonでも線は鋭角、超鋭角処理をどう補間するのかわからなかった。DirectX 11でジオメトリシェーダでのアウトラインにチャレンジしたが、これもなかなか難しかった。研究中です」と回答。アウトラインの話題を受け、本村氏は「弊社では押し出し型アウトラインです。太さは頂点カラーの設定で調整しているので、DCCツール上でリアルタイムに確認できるという利点があります。頂点単位でしか押し出しをしていないので、頂点ベースで管理するのが最適。頂点カラーはテクスチャと異なり256段階ではなくfloatなので、陰影は綺麗になります」とコメントした。

本村氏は苦労した点として、ハードエッジによる頂点を共有していない部分の割れについて言及。『GUILTY GEAR Xrd』ではこれを解決するため、UE3側でメッシュをインポートする際、自動計算法線を新たに作成してタンジェントに格納し、これを参照してアウトラインを押し出していたという。また、新聞の見出しでアウトラインを太めにして文字を強調するのと同様、アウトラインを強調することで目に入りやすい見た目にしていると説明した。

<7>海外での評価と将来の展望

質問:その7に対しては、「アニメの絵柄はボーダーレス。アニメ表現はもう日本特有ではなく、海外の子どもたちも皆これを見て育っているんだなという印象を受けています。日本人より上手いアニメ調の絵を描く人もいますし、結果的に"表現としてトゥーンシェーダがなかっただけ"という感覚で、本来は日本人も海外の人も同じような感性をもっているんじゃないか。燃えるところも萌えるところも同じ」(本村氏)という言葉を受け、岡本氏も「いわゆるハリウッド映画はコミック原作のものも多いですが、原作がリアルじゃないのに映画だと超リアルなのが流行るじゃないですか。逆に日本は原作がアニメだったら、それをそのままやりたいという意識がある。また、海外においても、日本アニメを観て育った人たちが今CGスタジオをつくったりしていることも考えると、日本アニメ風の表現をフランスやアメリカがつくることは自然で、抵抗感はないです」と回答した。

質問:その8ではトゥーンシェーダの技術的な展望が語られた。本村氏は「リアルタイムのレイトレーシングは、今抱えているアンビエントオクルージョンなどの問題の特効薬になると期待しています。個人的に期待しているのは背景の方で、キャラクターだけが発展するのではなくマッチする背景が出てきてほしい。本物の写真を絵画調に変換する技術が研究されていて、今は処理に時間はかかるものの、そのうちリアルタイムでできるようになるんじゃないかと思っています。リアルなゲームグラフィックスを変換してトゥーンにする、というポストエフェクトが出てくると面白いかも知れません」と語った。

また、岡本氏も「まずはDirectX 12に期待をしています。あとは、やはりリアルタイムレイトレーシング。影の中の影や、画面外からの影が実装できたら、VRなどで臨場感が増すはずです」と述べた。

<8>トゥーンシェーダをつくる上で何が大切か

最後の質問は、トゥーンシェーダの開発にあたって一番大切なものについて。司会の小林氏は「まずはマシンスペックでしょうね」というコメントで会場を沸かせ、その後展望についてそれぞれにコメントを求めた。本村氏は、「まずはリアルタイムで反映結果が見られるような環境が重要です。海外では写実的な表現については論文が数多くありますが、トゥーンシェーダは研究が進んでいない。知見が少ないぶん発展の余地があると思っています。あとは昔、私が子どもの頃はゲームのグラフィックは日進月歩で、そこにワクワク感を感じていました。PS3とPS4などは、一般の方から見たらその差は少なく、進化スピードが鈍化しているような感覚があります。トゥーンシェーダの発展は、子どもの頃のワクワクを取り戻せるのではないかと期待しています」とコメント。

また、岡本氏は「フェチズムが重要。また、キャラクターは画像や設定を触れば触るほど良くなっていくので、どこかに区切りは必要です。トゥーンシェーダはまだ未知な部分が多いですが、自分の求めている画にどんな機能が必要か、そもそもどんな画を出したいのか?というところをフォーカスしていくと良いと思います」と述べている。京野氏は、「アーティスト側は頂点をいじりたいのではなく、画をいじりたいんです。グリースペンシルのようなツールを使って、エンジン側が逆算して光源の方をいじってくれるような、様々な機能が連動したツールがあればと思います」と語った。

その他にも、講演者同士が互いにそれぞれの技法について質問し合うなど、講演者同士のコ ミュニケーションが非常に活発だった本トークセッション。内容は高度だったが、要所で会場から笑いが上がるなど、Unite参加者のレベルの高さも窺い知れた講演となった。

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