>   >  業界のトゥーンシェーダ好きが大集合ー「僕らがトゥーンシェーダが好きなワケ」~Unite Tokyo 2018レポート(5)~
業界のトゥーンシェーダ好きが大集合ー「僕らがトゥーンシェーダが好きなワケ」~Unite Tokyo 2018レポート(5)~

業界のトゥーンシェーダ好きが大集合ー「僕らがトゥーンシェーダが好きなワケ」~Unite Tokyo 2018レポート(5)~

<4>キャラクターのルックと輪郭線

質問:その4は、キャラクターのルックをいかにして決めているのかという話題。松村氏は、「最初期の段階では世界観に合わせていろいろなカラーを試していきます。色がちがうな、と思ったときにPhotoshopまで戻るのは時間ロスがあるので、Unity上で色相などをFilterで変えています」と回答。また、カマクラシェーダではマテリアルごとにローカルライトで光の方向や強さなどをコントロール可能との説明もあった。

カマクラシェーダでのローカルライトによる光のコントロール例

Jack氏は「私たちはまずアーティストのデザインコンセプトを全員でチェックし、全員の同意を得るというプロセスを採っています。その後、どういった手法で表現するのか技術的な検証を行いますが、ここではアーティストとしての感覚とテクニカルとしての技術的知識が必要になります。ベースとなるプロトタイプでシェーディングのファンクションを確認し、マテリアルのパフォーマンスやパラメータの数による使いやすさなどを考えながら、最終的にどの手段を使うのかを決めていきます」と回答。

その後のトゥーンラインの話題では、本村氏は「イラストレーターの方が明確に『ここに線を引く』と決めて描いたものを再現しようと思うと、どうしても現在の技術では完璧にはできない。そういうAIをつくるとか、もしかするとそういったレベルが必要かも知れないが、それでも既存のシェーダの工夫で近づいて来てはいる」と語った。

Jack氏によるトゥーンラインの解説スライド

<5>トゥーン表現を用いたコンテンツの海外での人気は?

質問:その6では、リアルタイムトゥーンシェーダを使ったソリューションやコンテンツの海外人気について語られた。現在はフィリピンにもオフィスをもつGugenkaだが、三上氏は「NetflixやAmazon Primeなどの世界的な普及によって、日本と同じくほぼリアルタイムでアニメを観ることが可能となっています。海外でも日本アニメは人気です。ただ、海外の方がつくる作品は、文化的背景に差があるため仕上がりには差がある感覚があります」と回答、同社キャラクター東雲めぐを題材にデザインの比較も行われた。また、カヤックもベトナムに支社があり、VTuber向けアセットの画づくりをカマクラシェーダーズで行なっているという。

Jack氏は中国でのトゥーンシェーダコンテンツについて、「トゥーンシェーダを使ったゲームの数が非常に増えており、アニメ好きの間だけで人気があるだけでなく一般人気も非常に高まっています。こういったゲームは中国国内にとどまらず日本や北米などに海外展開もされています」と回答。グローバル展開の話題では、近藤氏から「シェーダにロケール情報を乗せてカルチャライズができないかと思っています。これも今思いついたものですが、言語だけでなくシェーダレベルでローカライズができたら面白いなと。日本とアメリカで"萌え"はちがうと思うし、1つモデルをつくっておいて、シェーダで国ごとの好みに合わせていけるのでは」というコメントも飛び出した。

<6>PBRとNPRの特性と使い分け

質問:その7はNPRとPBRについて。多様な画づくりが可能なUnityにおいて、企画の初期段階でどちらを使うかを選択するのは重要だが、PBRでなければリアリスティックな画づくりができないというわけではないと小林氏が説明する。また、エクシヴィがDCEXPO2017にて展示した『VR✕HEARTalk』の事例をもとにトゥーンシェーダでも「工夫することで存在感を出せる」と語る小林氏だが、近藤氏も「VRにおいては自分をどう表現するかが難しく、鏡を置いて自分がそのキャラクターだと脳に認知させるか、存在自体を消すか、もしくはこの事例のように自分の影だけを出すという解決策がありますが、ここではユニティちゃんに影が落ちることで実在感が増しています」とコメントした。

『VR✕HEARTalk』のプレイ画面

松村氏は「PBRは西洋美術的で、NPRは日本古来の美意識が影響していると考えています。浮世絵なども線がメインですし、キャラクターを際立たせるというのは昔からやっていました」と語り、マンガ文化に近い表現の場合はNPRを選択すると説明した。

KeyShotによるPBRとカマクラシェーダーズによるNPRの比較

Jack氏は「我々はNPR、PBR両方に興味があります。今の市場にはセルシェーディング、AAAタイトルに使われるPBR、ディズニーやPixarが好んで使う西洋的なNPRがありますが、私は新しい東洋型のアニメスタイルをPBRでつくっていきたいと思っています。サーフェスマテリアルの表現力が豊かで、使いやすいというPBRの特徴と、NPRのもつアーティスト的な、感情的に面白い表現ができるというポイントを組み合わせていきたい」と展望を語った。

登壇者数が非常に多いため、トークのながれで様々な話題が出るなど終始止まるところのない印象だった本講演。記事内にまとめた情報はあくまで一部ではあるが、本記事を見てトゥーンシェーダに興味をもたれた方は、まずはぜひ無償で使用可能なユニティちゃんトゥーンシェーダ2.0やカマクラシェーダーズを試してみてほしい。

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