Too
型紙データからクロースシミュレーションを行い、キャラクターの衣装がつくれるMarvelous Designer。Tooブースでは2018年10月にリリースされたばかりの「Marvelous Designer 8」のデモが行われていた。
「8」では従来の「型紙ベース」によるワークフローが、より3DCGアーティストむけに修正された。中でも大きな修正は、型紙データからクロースシミュレーションを行なった後に、ブラシを使用して衣装をスカルプトしたり、3Dビューポート上で直感的にパターンを縫い合わせたりできるようになった点だ。
その一方で3Dオブジェクトのインポート時に、UVマップから自動的に3Dパターンを抽出できるようにもなった。また、アバターのメッシュの長さや幅に合わせて自動で配置点と配置仮想円柱を生成する機能もサポート。ベータ版ながら、布地メッシュのトポロジを四角形メッシュに更新する機能も備えている。ほとんどのCGツールが欧米産という中で、数少ない韓国産のツールという点もユニークで、さらに注目を集めそうだ。
エルザ ジャパン/アスク
次世代V-rayことV-ray Nextと、新たにレイトレーシング専用ユニットを搭載したNVIDIA QUADRO RTXシリーズ。いずれも2018年のCG業界における主要トピックだ。エルザ ジャパン/アスクブースでは両製品に加えて、水平視野角210度を誇る次世代VR HMD「StarVR One」と、VRのためにつくられたレンダリング技術「NOZON PresenZ」の4製品がデモされていた。
レイトレーシングはカメラから空中を移動する光子(Ray)の動きを逆追跡することで、レイの方向に見える像をシミュレートする手法だ。現実の世界に近い3DCGを生成できるが、レンダリングコストが非常に高く、現実的ではなかった。NVIDIAでは8月に開催されたSIGGRAPH2018で、RTコアを搭載した新GPUアーキテクチャ「Turing GPU Architecture」と、Quadro RTX 8000など3製品を発表。エルザ ジャパン/アスクブースでは、このうちQuadro RTX 6000が2枚差しされたワークステーションで、レイトレーシングによるレンダリングのデモが行われた。
レンダリングをCPUベースで行った場合【画像上】とGPUベースで行った場合【画像下】の比較。処理速度の差は圧倒的で、CPUの負荷も軽微に抑えられるなど、Quadro RTX 6000の威力が示された。なお、レンダラはArnoldが使用されている。
同じくSIGGRAPH2018で発表されたStarVR One。2017年に開発者版がリリースされて以来、注目を集めてきたVR HMDで、水平視野角210度の超広視野角を誇る。Oculus RiftやHTC Viveの水平視野角は110度程度で、「世界を覗き込む」印象が残るのに対して、StarVR Oneはまさに「世界が周囲に広がる」感覚だ。アイトラッキング機能を搭載し、視線が合った場所で高品質のレンダリングを集中して行う「ダイナミックフォービエイテッドレンダリング」技術や、IPD(瞳孔間距離)を自動的に最適化する機能なども備えており、ゲームセンターやテーマパークなどでの用途が想定されている。
デモはNozon社が開発したCGツール「PresenZ」上で制作された「ボリューメトリックムービー」で行われた。ロボットが働く建築現場で惨殺事件が発生し、作業用のロボットが立ち向かうという内容で、激しいアクションが文字通り目の前で展開され、息を呑んだ。「PresenZ」ではボリュームレンダリングの技法が活用されており、360度全天球映像と異なり、リアルタイムCGのようにVR空間内で動き回ることもできる。レンダラにはV-rayとArnoldが使用可能で、Mayaと3ds Maxむけのインターフェイスがあり、他のツールにも対応予定だという。
StarVR Oneの液晶パネルは2560×1440の2.5K解像度のパネルを左右に搭載し、5K解像度を実現している。これだけの超高解像度映像を90フレーム以上でリアルタイムレンダリングするのは、さすがに現状のGPUでも困難で、PresenZのようなツールが有効というわけだ。ゲームエンジンを使用せずに、プリレンダーでリアルタイムレンダリングに近いコンテンツ体験が生み出せる点に、興味深く感じられた。
NHKアート
NHK番組の映像美術分野における総合プロデュースから、イベント企画・演出・運営、番組のタイトル映像やWebサイトのデザインにいたるまで、幅広い業務をこなすNHKアート。ブースでは8Kによるインタラクティブ映像作品『The Universe』が出展された。鑑賞者を囲むように8本のマイクとスピーカーが設置され、マイクに向かって鈴を鳴らすと、その位置に応じたエフェクトが画面上にリアルタイムで描画されるしくみだ。
映像はノードベースのビジュアルプログラミングツール「TouchDesigner」で制作され、GPUにはNVIDIA RTX 6000が使用されている。担当者いわく「8K映像を使用したインタラクティブ作品は世界的に見ても、他に例がないのでは」とのこと。シンプルながら、今後に大きな可能性を抱かせる内容だった。